[完結]仮面の令嬢は、赤い思い出を抱いて眠る

愛情と実験

12

「…簡単に手放さないっていう意味さ」

「ふうん。絶対私をおいて、事故とかや病気になっちゃダメよ。絶対死んだらダメ」

「わかった。君より先に死んだりしない」

「本当？どうして？約束できるの？」

　意地悪そうに、シーツに頬杖をついて覗き込む。

「うーん」
　登は両手を頭に載せてしばらく考え込む。

「やっぱり俺が先に死にたいな」

「どうして？」

「だって、君がいない世界なんて生きていたくないもの」

「嫌だ。意地悪！」

「だったら、一緒に死んじゃおうか」

「そうね。心中ね。でも、もうちょっと生きてからにしてよ。まだ未練がある」

「いいや。最高の状態で死んじゃう」

「もう！いじわる」

　光子は彼の肌を親指で弾いた。

　登はちょっと真剣な目つきになる。
「ねえ、何で僕らは生きてきたと思う？」

「あなたにめぐり逢うため。登は？」

「わかってるだろ？」
　そして光子のピンク色の頬にキスをした。

「みつ、人ってさ、生まれた時は自分の親を選ぶことなんて出来ない。
　お金持ちかもしれないし、貧乏人かもしれない。望んで生まれてきたわけでもない。気がついたら息をしていただけ。
　その中で、ずっと生まれた理由を探っていく。人生が、一体何を僕に期待しているんだろうって。親や社会から無理難題を押し付けられながら」

「わたしも振り回されているわ。会社や親せきに…」

「そう。だから必死に生きていさえすれば、その答えを教えてもらえる気がしていたんだ。運命が、生きる道を照らしてくれると信じてた」

「それで、私たちは出会った。でもね、見つかったら終わりじゃないの」

そして、彼の額に口づけする。

「これから２人の人生がはじめるの」