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奇妙な劇団

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 20歳代の小柄の女性で、茶髪。パーカーにジーンズを着て、丸い眼鏡を掛けている。

「えーとー。名前は森サチといいますうー。呼ぶのはサチだけでいいですようー。今回は舞台の小道具管理のお仕事、頑張りマウス…」

 妙に間延びしたふぬけの声に、一部から笑い声が漏れた。

 光子はサチという名前に心当たりがある。

 類子が一緒に暮らしている探偵の助手も同じみよじだった。

 でも、彼女が探偵社を離れて、どうして演劇に参加するのだろうか。

「ではこれから、チケット代の8万円を徴収致します。

 そのお金は、会場の設営費用や備品購入などにあてられます。

 お支払い出来ない方は、申し出てください。

 また住居がない方もおいでください。ご相談に応じます」

 経理担当の女性スタッフが告げると、列になって団員たちがお金を払いチケットを受け取っていく。

 各団員は公演チケットを全て売り切りさえすれば、負担金はない。

 それを達成するために、家族や友人に購入してもらうことは多い。

 しかし売れ残れば、自己負担となる。それが、いわゆるチケットノルマというものだ。

 光子は、チケットを売るつもりは、さらさらなかった。

 類子や叔父にでも渡せばよい。

 でも、一男だけには絶対にごめんだ。

 一方のサチは、まだスタッフと熱心に話し込んでいる。

 どうも住居の相談のようである。

 つまり、住む場所がなくてここにきたのかもしれない。

  登の「では、解散!」という号令と共に、団員は帰り支度を始めた。
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