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異世界
8 協力
しおりを挟む「だって、そうだろ。何度もおれの命を救ってくれたんだから」
コミュニケーション下手な上に、異性コミュニケーションもゼロのケンにとって、相手の空気を察するセンサーはさびついている。
少女は不快そうに、鼻先に皺を寄せながら、
「誤解よ。私があなたの体の傷に治癒魔法をかけたのも、目覚めるまで待っていたも、全部が全部、わたしがあなたがいい釣り餌になりそうだなって思ったからで」
「俺が、釣り餌?」
「聞いてなかった、さっきも言った気がするけど」
そんな俺の返答に対し、少女は厳しい顔つきのままで首を横に振って、
「あなた、ほんとは召喚されたんでしょ」
「そう。あ、俺、ひきこもりだった!」
「こっちの意図を無視しないでよ。質問の答えは?」
「えーっと、それでしたらあの……はい、知らない人に騙されて、お手製の落とし穴に落ちました」
俺みたいな召喚者を捕まえると、何か得点が得られるのか? 俺は人畜無害の、何の能力もない、ただの無能な人間なんだけど。
「やっぱりね。あなたを召喚したひとに心当たりがある? 穴を掘って、落としたひとのことよ?」
「えーっと、なんか、フードみたいなものかぶってて、よく顔は見えなかったけど。でも、なんか、嗅いだことがない、なんともいえない匂いがしてたっけな」
ケンの適当な返答。しかし、少女はそんなケンの答えに対して落胆した様子もなく、何度も頷き、
「そう。なんか役立ちそうね。ちゃんとケガを治した対価は払ってもらえそう。
じゃあ、行きましょう。悪いけど急いでるの。ケガは一通り治ってるはずだし、こんな時間に人気のない危険なスラム街の路地に、ベビーちゃんひとりでいるなんて、自殺志願者と一緒だしね」
早口でメチャクチャ言いまくしたてて、押し黙るケンの沈黙を肯定と受け止めたのか、少女は「よしよし」と満足そうに呟いて身をひるがえす。
長い銀髪が彼女の仕草に合わせて揺れ動き、薄暗い路地の中ですら幻想的にきらめいた。
ふいに体重を預けていた感触が消失し、ケンは慌てて落ちかける身を立て直して、砂埃で汚れた己のジャージを叩く。
愛用のジャージは汚れこそ目立つものの、ほつれたりのダメージはほとんどない。それに何より、あれだけ蹴られ打たれた体の痛みが完全に消えている。
肩を回し、足腰を動かして健在ぶりを確認し、改めて魔法の桁違いの威力を実感した。
「――あのさ!」
路地の入口、大通りへ繋がる場所で首をめぐらす少女のその背中に、ケンは声をかける。
長い銀髪を手で撫でて、彼女は振り返り、
「おう。なに?」
「なんで俺は赤ん坊なんだよ。なんで、俺が召喚されたってわかったんだ?」
「それ聞いて何か意味あるかしら?」
両手を広げて彼女の進路を阻み、
「知りたいんだよ。俺、よくわかんねえんだよ。俺、このあたり初めてだし。無一文だし。少し、状況をしりたいっつうか、しらねえと、不安だしよ。それに、魔女狩りさん、いいひとっぽいし、助けてあげたいし、役に立ちたいっというかな。この世界では無能じゃないって証明したいっていうか、ってそのあの。何言いたいのかな、俺は」
てんぱると早口でテンション上がってしまうのがケンの悪い癖だ。
今回もその癖が存分に発揮されて、はっきり言って自分で自分の発言にドン引きである。
冷や汗で背中ぐしょぐしょ。脇汗と手汗で腕まわりがヤバい。
そのセルフ絶体絶命状態からケンを救ったのは、
「―戦闘力0だから」の一言。
口元に手を当てて、珍獣でも見るように小首を傾けながらの少女の言葉だった。
彼女はケンを値踏みするように見据えて、
「無一文で戦闘能力0人間。だから産まれたての赤ちゃんと同じかなって。そんな人、この世界では召喚された人だけだから」
「俺のレベルゲージ0……」
「ステータスは相手にしか見えないし。だから、あんな雑魚の狼なんかに襲われたんじゃない」
ケンは苦笑して、「そうか」と前置きし、
「それで俺を、魔女がくる釣り餌って、魔女を誘い出したら、営業成績が上がるっていう寸法なのか」
言い切った顔のケンに少女は思案顔。それから少女の眉尻が上がる。
「――あなたの言う通り。犯罪者を捕らえ、武器を回収するのが、国王直属魔女狩り部隊の仕事だもの。ここみたいな治安が悪いところなら、魔女も潜伏しやすいしね。
でも、魔女狩りとしてのほんとの目的は違う。無責任に異世界から召喚して、戦闘力を増している魔女をやっつけたいだけなの」
「魔女? 武器?」
「あなたを召喚したのは魔女。召喚した人間を材料に武器を作り、強大な力を得ようとしてる。その力は、戦闘力を数倍にもなるの」
「数倍って……1000とか2000とか」
「武器次第では、10000だって増幅するそうよ。だから、魔女はぜったいあなたを狙ってくる。
奴らは絶対人前で素顔を明かさない。あんな狼たちに襲われてなければ、魔女はすきを見て、あなたをねぐらに連れて行っていたでしょうね」
「それで、俺がねぐらを探す釣り餌ってわけか」
「ごめん。でも、協力してほしい。あなたのことは私が守るから安心して」
コミュニケーション下手な上に、異性コミュニケーションもゼロのケンにとって、相手の空気を察するセンサーはさびついている。
少女は不快そうに、鼻先に皺を寄せながら、
「誤解よ。私があなたの体の傷に治癒魔法をかけたのも、目覚めるまで待っていたも、全部が全部、わたしがあなたがいい釣り餌になりそうだなって思ったからで」
「俺が、釣り餌?」
「聞いてなかった、さっきも言った気がするけど」
そんな俺の返答に対し、少女は厳しい顔つきのままで首を横に振って、
「あなた、ほんとは召喚されたんでしょ」
「そう。あ、俺、ひきこもりだった!」
「こっちの意図を無視しないでよ。質問の答えは?」
「えーっと、それでしたらあの……はい、知らない人に騙されて、お手製の落とし穴に落ちました」
俺みたいな召喚者を捕まえると、何か得点が得られるのか? 俺は人畜無害の、何の能力もない、ただの無能な人間なんだけど。
「やっぱりね。あなたを召喚したひとに心当たりがある? 穴を掘って、落としたひとのことよ?」
「えーっと、なんか、フードみたいなものかぶってて、よく顔は見えなかったけど。でも、なんか、嗅いだことがない、なんともいえない匂いがしてたっけな」
ケンの適当な返答。しかし、少女はそんなケンの答えに対して落胆した様子もなく、何度も頷き、
「そう。なんか役立ちそうね。ちゃんとケガを治した対価は払ってもらえそう。
じゃあ、行きましょう。悪いけど急いでるの。ケガは一通り治ってるはずだし、こんな時間に人気のない危険なスラム街の路地に、ベビーちゃんひとりでいるなんて、自殺志願者と一緒だしね」
早口でメチャクチャ言いまくしたてて、押し黙るケンの沈黙を肯定と受け止めたのか、少女は「よしよし」と満足そうに呟いて身をひるがえす。
長い銀髪が彼女の仕草に合わせて揺れ動き、薄暗い路地の中ですら幻想的にきらめいた。
ふいに体重を預けていた感触が消失し、ケンは慌てて落ちかける身を立て直して、砂埃で汚れた己のジャージを叩く。
愛用のジャージは汚れこそ目立つものの、ほつれたりのダメージはほとんどない。それに何より、あれだけ蹴られ打たれた体の痛みが完全に消えている。
肩を回し、足腰を動かして健在ぶりを確認し、改めて魔法の桁違いの威力を実感した。
「――あのさ!」
路地の入口、大通りへ繋がる場所で首をめぐらす少女のその背中に、ケンは声をかける。
長い銀髪を手で撫でて、彼女は振り返り、
「おう。なに?」
「なんで俺は赤ん坊なんだよ。なんで、俺が召喚されたってわかったんだ?」
「それ聞いて何か意味あるかしら?」
両手を広げて彼女の進路を阻み、
「知りたいんだよ。俺、よくわかんねえんだよ。俺、このあたり初めてだし。無一文だし。少し、状況をしりたいっつうか、しらねえと、不安だしよ。それに、魔女狩りさん、いいひとっぽいし、助けてあげたいし、役に立ちたいっというかな。この世界では無能じゃないって証明したいっていうか、ってそのあの。何言いたいのかな、俺は」
てんぱると早口でテンション上がってしまうのがケンの悪い癖だ。
今回もその癖が存分に発揮されて、はっきり言って自分で自分の発言にドン引きである。
冷や汗で背中ぐしょぐしょ。脇汗と手汗で腕まわりがヤバい。
そのセルフ絶体絶命状態からケンを救ったのは、
「―戦闘力0だから」の一言。
口元に手を当てて、珍獣でも見るように小首を傾けながらの少女の言葉だった。
彼女はケンを値踏みするように見据えて、
「無一文で戦闘能力0人間。だから産まれたての赤ちゃんと同じかなって。そんな人、この世界では召喚された人だけだから」
「俺のレベルゲージ0……」
「ステータスは相手にしか見えないし。だから、あんな雑魚の狼なんかに襲われたんじゃない」
ケンは苦笑して、「そうか」と前置きし、
「それで俺を、魔女がくる釣り餌って、魔女を誘い出したら、営業成績が上がるっていう寸法なのか」
言い切った顔のケンに少女は思案顔。それから少女の眉尻が上がる。
「――あなたの言う通り。犯罪者を捕らえ、武器を回収するのが、国王直属魔女狩り部隊の仕事だもの。ここみたいな治安が悪いところなら、魔女も潜伏しやすいしね。
でも、魔女狩りとしてのほんとの目的は違う。無責任に異世界から召喚して、戦闘力を増している魔女をやっつけたいだけなの」
「魔女? 武器?」
「あなたを召喚したのは魔女。召喚した人間を材料に武器を作り、強大な力を得ようとしてる。その力は、戦闘力を数倍にもなるの」
「数倍って……1000とか2000とか」
「武器次第では、10000だって増幅するそうよ。だから、魔女はぜったいあなたを狙ってくる。
奴らは絶対人前で素顔を明かさない。あんな狼たちに襲われてなければ、魔女はすきを見て、あなたをねぐらに連れて行っていたでしょうね」
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「ごめん。でも、協力してほしい。あなたのことは私が守るから安心して」
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