異世界に落ちたオレは、キミの最強の武器になる

朝日みらい

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異世界

5 狩り

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 切羽詰まった声を上げて、誰かが路地裏に駆け込んできた。
 ギョッと顔を上げる男たちにならい、俺も動かない体で視線だけ持ち上げる。

 時が止まる、というのはこういうことだろうか。
 路地の入口、ひとりの少女が立っている。
 美しい少女だった。
 腰まで届く長い銀色の髪を、漆黒のリボンでひとつにまとめ、射抜くようにこちらを見据えている。
 柔らかな面差しの裏にある、殺気じみたものが、危険な魅力すら生み出していた。
 身長は百四十センチほど。白を基調とした服装は華美な装飾などなく、シンプルさが逆にその存在感を際立たせる。ゆいいつ目立つのは、羽織っているコートの「魔女殲滅」と入った文字をあしらった刺繍だった。

「あの、聞こえなかったの?」

 再び彼女の口から言葉が紡がれ、全身が震えるような感動が走った。
 
 ケンは自分の置かれた状況すら忘れて、ただひたすら彼女の存在感に打ちのめされた。
 とっさにレベルゲージを表示したら、彼女のステータスがなんと500ポイント。すげえ、めちゃ強いじゃねえかよ。

 そしてそれを感じとったのは、狼たちも同じだ。
 彼女の敵意を真っ向から向けられ、先ほどまで血気に逸っていた表情はどこへやら。

 短刀を持った狼男も顔を青ざめさせ、後ずさる。

「待て! 魔女狩りさまよ。待ってくれ! な、なんだかわからねえが、こいつは見逃すよ! だから俺たちのことは勘弁してくれ……」

「魔女を見かけた?」

「……へ? 魔女?」

「言いなさい。それとも、あなたたちをぶっ倒して、レベルゲージを奪われたい?」
 
 少女の視線は鋭く、差し伸べるように向けられた掌は何も掴んでいない。
 しかし、そこに言葉にし難い何かが集まり始めるのを、この場の誰もが感じ取る。

「ちょ、待って! ……魔女ってなんだよ」
 狼たちは、足蹴にしているケンを指差し、
「ええっと、この男を助けにきたわけじゃないんで?」

「はい? ただの変な格好した人でしょ。あなたの赤ちゃんレベルで、このステータスで三対一なんてずいぶん頑張ったとは思うけど」

 えっ。ベビーとか赤ちゃんとか、やけに呼ばれるけど、俺のステータスって何ポイントなんだよ?
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