【完結】医師で子爵の彼にお世話になりすぎです。

朝日みらい

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 修道院の門をくぐると、彼女はまず院長に出会った。

 院長は優しい眼差しでアネットを迎え、彼女の手を取り、修道院での生活について説明を始めた。

「アネットさん、ここは神に仕え、内省と献身の場所です。私たちはあなたを心から歓迎します」

 アネットは頷き、自分の決断について院長に話した。

「私は新しい人生を歩みたいと思います。ここで学び、成長したいのです」

 院長はアネットの肩を軽く叩き、修道院での規則や日々のスケジュール、祈りの時間、そして共同生活の大切さについて説明した。

 アネットはそれらを真摯に聞き入れ、自分の部屋へと案内された。

 部屋は質素で、必要最低限の家具しかなく、壁には十字架が掛けられていた。

 アネットはそこに荷物を置き、これから始まる修道生活への準備を始めた。

 その夜、アネットは他の修道女たちと共に食事をし、初めての祈りの時間を経験した。

 教会の外観は、古典的なゴシック様式で、高くそびえる尖塔が空に向かって伸びていた。

 白い石造りの壁面には、細かい装飾が施され、大きなステンドグラスの窓が色とりどりの光を外に漏らしている。

 長い通路の両側には、燭台が並び、柔らかな光を放ちながら参列者を祭壇へと導いている。

 祭壇は金色と白色で飾られ、その中央には大きな十字架が掲げられていた。

 ベンチは木製で、静かに祈りを捧げる人々のために整然と並べられている。

 アネットは静かに祈りを捧げていた。

 すると、誰かがアネットの側に近づいた。彼女の手を取り、優しい声で囁やく。

「アネット、ここは君の居場所ではないだろう。私と一緒に来てほしい」

 フェリックスはウールのマフラーにジャケットを着ていた。

 彼女は一瞬躊躇したが、フェリックスの確かな眼差しを見て決心した。

 アネットは彼と共に教会の扉を抜けた。

 教会の外では、二人を待つ馬車が静かに佇んでいた。

「アネットはもう患者ではないよ。君は...」

 フェリックスは自分の心に正直になり、続けた。

「私にとって大切な人だ」

「フェリックス、あなたが私にとってどれほど大切な存在かわかっている?」

 フェリックスは彼女に近づき、優しく答えた。

「君は私の患者を超えた、特別な人だよ」

 フェリックスはアネットの前に立ち、彼女の目を見つめた。

「アネット、私も君から離れたくない。一種の精神疾患だが、それは、あなたへの想いだ」
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