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 アネットの声には、過去の重みがこもっていた。

 フェリックスは静かに彼女の手を握った。

「アネット、君は君自身だよ。他の誰と比べられる必要なんてない」

「でも、ルーデンとの婚約が破棄された時、私は両親の期待を裏切ってしまったわ。それで、生きる意味さえ失いかけたの…」

 彼女の目には涙が浮かんでいたが、フェリックスは優しく微笑んだ。

「アネット、君が立ち直り、強くなれたのは、君自身の力だ。私はただ、手助けをしたまでだよ」

「いいえ、フェリックス。あなたがいなければ、私はここにはいないわ。あなたの支えがあったから、私は自分を取り戻すことができたの。本当にありがとう」

 二人は互いの目を見つめ合った。

「アネット…」

 そのままフェリックスはアネットを引き寄せると、もう一度キスした。

「あんっ…」

 そのままお姫様だっこをされた。

「ひやっ!?」

 思わず変な声が出てしまう。

 寝室に連れられて、天蓋つきのベッドに寝かされる。

「んあ!」

「いい子だ。もっと気持ちよくする」

 いやいやとするようにアネットは首を振ると、フェリックスの嬉しそうに笑った声が降ってくる。

 そしてまるで赤ちゃんのように胸を吸い始めたので、なんだかアネットも母性が芽生えそうになってしまう。

「あん!」

 唇で挟んだまま、すっかり硬くなった乳首を舌で弾かれる。

 かと思えば優しく転がされて甘噛みをされた。

「はう……っ!」

 ちゅぱっとわざと音を立てて唇が離れると、今度は反対の乳首に吸い付かれる。

「や、あん!  は……あ」

 ちゅくちゅくとわざと音を立てて吸われて、そのいやらしさにまた濡れてしまう。

「は……っ、もう、びしょびしょだね」

 フェリックスは胸への愛撫だけですっかりと潤った秘所に長い指が触れると、それだけで腰が揺れてしまう。

 もうアネットのそこは彼のモノを欲しがっていた。

 しかしフェリックスはそのまま指を中に挿れるのではなく、入口を優しく刺激するだけだった。

「どうしてよ……?」

 アネットが早く挿れて欲しいと腰を揺らすのに、フェリックスは全然そこには触れてくれない。

「ここも綺麗にしておかないといけないよ?」

 そう言った瞬間、フェリックスのぬるりとした舌が中に入ってきて腰が浮いてしまう。

「だめっ!  そんなとこ……あん!」

 ダメって言ってるのにクリトリスまで吸われて…。もうおかしくなりそうだ。
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