【完結】医師で子爵の彼にお世話になりすぎです。

(11)

「いつもありがとう、ベン、オルガ。君たちがいてくれると、本当に心強いよ」

　アネットも微笑みながら二人に挨拶をした。

「お世話になります。お茶、喜んでいただきますわ」

　ベンとオルガは二人を別荘の中へと案内した。

　リビングにはすでに焼きたてのスコーンと香り高い紅茶が用意されていた。

　老夫婦はフェリックスが子供の頃からの世話をしており、彼の成長を見守ってきた。

「アネット、散歩でもしようか」

　フェリックスに誘われて、アネットは笑顔で頷いた。


　
　アネットは軽やかなシフォン素材のドレスを着ていた。

　風になびくとまるで花が舞うようだ。

　色は淡いピンクやラベンダーで、ウエストにはリボンベルトが巻かれていた。

「アネット、ここは私のお気に入りの場所なんだ。自然の中で、心も体もリフレッシュできるんですよ」

　フェリックスは温かい笑顔で言った

　アネットは湖の美しさに目を奪われながら答えた。

「ええ。ここは本当に素敵。フェリックス、こんなに美しい場所に連れてきてくれてありがとう」

　フェリックスは彼女の隣に座り、穏やかな声で話し始めた。

「ここでの時間が、心の平穏を取り戻す手助けになれば嬉しいよ」

「そうね、すでに心が軽くなった気がする」

　アネットは深呼吸をし、新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込んだ。

　湖畔には穏やかな波紋が広がり、フェリックスの別荘からほど近いその静かな水面は、まるで鏡のように周囲の景色を映し出していた。

　フェリックスは柔らかなコットンのシャツに、ロングパンツを合わせ、足元には革のブーツを履いていた。

　彼はアネットを小舟に誘い、二人はゆっくりと湖を周遊することにした。

　アネットは微笑みながら、フェリックスが櫂を漕ぐ様子を見つめていた。

「ここは本当に平和ね。水面に映る空と山々が、まるで別世界のよう」

　小舟は静かに湖面を滑るように進み、時折、水鳥が飛び交う様子が見られた。

　フェリックスは櫂を止め、アネットの目を見つめている。

　二人はしばらく言葉を交わさず、ただ湖の美しさと互いの存在を感じていた。

　湖畔の木々は風に揺れ、水面は夕日に照らされて金色に輝いている。

　フェリックスとアネットは、その美しい景色に心を奪われながら、小舟で湖を周遊する幸せなひとときを過ごした。