【完結】医師で子爵の彼にお世話になりすぎです。

(6)

　アネットは、フェリックスに心の内を打ち明けた。

「先生、私…ルーデン・ホールディングスとの婚約を破棄されたでしょう。両親は私にとても失望しているわね。もう、家族の中に私の居場所はないんだわ…」

　彼女の声は震えており、その青い瞳には涙が溜まっていた。

　フェリックスは彼女の隣に座り、優しく手を取った。

「アネット、実家のスプリング家がどれほど伝統を重んじる家であるか、私もよく知っています。だが、君は決して悪くない」

　フェリックスはアネットの肩に手を置いた。

「アネット、家族も時間が経てば理解してくれる。君は勇敢なんだ。そして、私はいつでも君の味方だからね」

　アネットはフェリックスの言葉に少し安堵の表情を見せ、二人はしばらく言葉を交わさずにいた。

　この瞬間、フェリックスはアネットのために何ができるかを考えていた。そして、アネットはフェリックスの支えがどれほど心強いかを感じていた。



　夕暮れ時の柔らかな光で満たされていた。

　彼女は窓辺に立ち、外を見つめながらフェリックスに向き直った。

「検査結果は異常は見られなかったよ。どうも、原因は精神的な問題みたいだね。ルーデン・ホールディングスに婚約を破棄されたのが、大きな要因だろう」


「フェリックス、私…ルーデンをどうしても忘れたいわ。治して…くださる？」

　フェリックスは深刻な面持ちでアネットを見つめ、ゆっくりと言った。

「アネット、君の苦しみを軽減するためにできることは何でもしますよ。だが、薬に頼る前に、他の方法を試してみてはどうかな？」

「先生、どんな処方ですの？」

　フェリックスはアネットの手を優しく握った。

「心の痛みを解決するには、精神的にも肉体的にも幸福感で満たされる必要がある。アネットなら、その幸せを見つけられるはずだ」

　アネットは彼の手の温もりを感じながら、彼の言葉の意味を理解した。

「先生なら、何だってしますわ」

　アネットは彼の目を見つめた。彼女の瞳には決意の光が宿っていた。

　フェリックスはアネットの手を取りながら微笑んだ。

「アネット、君は強い女性だ。きっと自分で幸せを見つけられる」

「ありがとう、先生」

　アネットは感謝を込めて言った。

「私も全力でサポートしますよ」

　フェリックスはそう言って優しく微笑んだ。