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雨が降り続く。ついに、処刑が始まる朝を迎えた。
「殿下、教会から使者がまいりました。処刑前のお祈りの時間です」
看守が独房にいるアーマンド様に言うと、彼は粗末なベッドから起き上がった。
アーマンドが祈りのためにひざまずくと、部屋の扉がそっと開いた。
彼が顔を上げた時、使者の姿を見て驚きを隠せなかった。
「セラフィー? 君はなぜここに…?」
ア―マンドは、混乱したように問いかけた。
セラフィーは背筋を伸ばし、ア―マンドのもとへ歩み寄った。
「ア―マンド、私は無実を証明しに来たのです」
と彼女は堂々と告げた。
ア―マンドは驚きと感動で肩を震わせた。
「セラフィー、君はここに居てはいけない。ここは危険だ。ルドルフに捕らえられたらどうする。早く帰るんだ」
とア―マンドは心配そうに言った。
しかし、セラフィーは不動のまなざしでア―マンドを見つめた。
「私はエルドラン皇帝の許しを得て、聖女として処刑場所に祈りを捧げに来たのです。そしてわたしの持っているすべての聖なる力を尽くします。もう、聖なる力もいりません。命がけであなたの潔白を証明する覚悟です。信じてください」
と彼女は真剣な表情で言った。
ア―マンドは涙を抑えられず、深く息をついた。
「セラフィー、君の心意気は立派だよ。でもね、危険に巻き込まれるのは耐えられないんだ。ぼくのために生きてくれ」
と彼は優しく語りかけた。
セラフィーは決意を固め、アーマンドの手をそっと握った。
「大丈夫よ。私を信じてください!」
彼女は優しく微笑んだ。
「殿下、教会から使者がまいりました。処刑前のお祈りの時間です」
看守が独房にいるアーマンド様に言うと、彼は粗末なベッドから起き上がった。
アーマンドが祈りのためにひざまずくと、部屋の扉がそっと開いた。
彼が顔を上げた時、使者の姿を見て驚きを隠せなかった。
「セラフィー? 君はなぜここに…?」
ア―マンドは、混乱したように問いかけた。
セラフィーは背筋を伸ばし、ア―マンドのもとへ歩み寄った。
「ア―マンド、私は無実を証明しに来たのです」
と彼女は堂々と告げた。
ア―マンドは驚きと感動で肩を震わせた。
「セラフィー、君はここに居てはいけない。ここは危険だ。ルドルフに捕らえられたらどうする。早く帰るんだ」
とア―マンドは心配そうに言った。
しかし、セラフィーは不動のまなざしでア―マンドを見つめた。
「私はエルドラン皇帝の許しを得て、聖女として処刑場所に祈りを捧げに来たのです。そしてわたしの持っているすべての聖なる力を尽くします。もう、聖なる力もいりません。命がけであなたの潔白を証明する覚悟です。信じてください」
と彼女は真剣な表情で言った。
ア―マンドは涙を抑えられず、深く息をついた。
「セラフィー、君の心意気は立派だよ。でもね、危険に巻き込まれるのは耐えられないんだ。ぼくのために生きてくれ」
と彼は優しく語りかけた。
セラフィーは決意を固め、アーマンドの手をそっと握った。
「大丈夫よ。私を信じてください!」
彼女は優しく微笑んだ。
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