【完結】公爵令嬢は聖女になって身を引いたのに、殿下の愛は止まらない。

朝日みらい

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「ア―マンド……!」

 セラフィーは、教会の信徒の長椅子にうずくまり、むせび泣いた。

 確かに、将軍の娘が見せたのは、正式な公文書に違いないことは、宰相の娘なら容易に分かることだ。

「アーマンドは噓をついたのだわ。どうしてこんなこと……」

 セラフィーは、アーマンドにのぼせて身体を委ねてしまった。そして、飽きられたら捨てられる定めだったのだ。今の私は、エカテリーナの言うとおり、犯罪者の娘で、ただの貧村の聖女に過ぎない。

 彼女は、ふらふらと階段をあがり、2階の自分の部屋に逃げ込み、ベッドの端に顔をうずめて泣きだした。

☆☆☆

 翌朝、アーマンドが滞在している宿から、白馬にまたがり訪ねてきた。

「セラフィー? セラフィー!」

 いつもはアーマンドの白馬の蹄の足音を聞きつけて、すぐに彼女は走りよって抱きついてくるのだが、一向に現れない。

 彼は怪訝に思いながら、2階の彼女の部屋をノックしたが返事は無い。扉を開けると、セラフィーはベッドの布団に顔を押しつけて、突っ伏している。

「セラフィー? どうした!」

 アーマンドが駆け寄りセラフィーの肩を抱くと、彼女は顔を上げて、ムッとして眉をしかめた。

 泣きはらした真っ赤な瞳を向け、アーマンドに対して突き放すような態度をとる。

「あなたの言葉を信じていた私が愚かでした! 早くおかえりになって。二度と私の前から姿を現さないでください!」

 セラフィーの声には怒りが滲み、アーマンドは彼女の言葉の裏に隠された深い悲しみを感じた。

「セラフィー、一体どういうことだ」

 アーマンドの訴えにもかかわらず、セラフィーは彼を拒絶するような態度を崩さない。

「あなたの言葉はもう信じませんわ。どうかお帰りになってくださいませ。今すぐに!」

「なんだよ、急に?」

 アーマンドは彼女の冷たい言葉に心が折れそうになりながらも、立ち去ることはできなかった。むしろ、違う疑いが生まれていた。

「もしかして君は別の男性と関係を持っているのか?」

「まさか…この期に及んで、な、何を言ってらして。それは私のセリフです……!」

「………説明はしない。もうどうでもいい。君が私を裏切るつもりなら、もうこうするしか……。すまない!」

 ア―マンドは強引にセラフィーの手を後ろで抑えつけ、彼女の背後から強引に唇を奪った。

「んっ……ちょっと……! お願い、おやめ……ああんっ!」
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