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エルドラン皇帝は、ルドルフ将軍の提案に耳を傾けた。
しかし、深く考える前に決断を下すことには躊躇いがあった。
「しかしな、宰相の娘であるセラフィーも素晴らしい娘だった。身分も申し分ない。彼女と皇太子の関係を妨げることは、慎重に考えねばならんぞ?」
ルドルフ将軍は機を逸しまいそうだと感じ、口説き落とすために他の策略を練り始める。
「……ですが、陛下。セラフィーの父である宰相は、国家に対する裏切り行為を行いました。その娘との結びつきは、我が国を危険に晒す恐れがありますぞ。私の娘との結婚こそ、帝国のためになるでしょうがね?」
エルドラン皇帝は、将軍の言葉に心を動かされた。
そして政治的な安定を求める考えから、将軍の提案に賛同した。
早速、エカテリーナにアーマンドとの結婚を命じたのだ。
意気揚々、将軍の娘はさっそく、ア―マンドが教会にいない時間を見計らい、セラフィーのもとに現れた。
「あんたが、忌まわしいアマンテール公爵家のお嬢さんね。わたくし、ルドルフ将軍の娘、エカテリーナといいます」
そして勝ち誇ったように、
「ア―マンドはわたしと結婚するの」
と告げて、セラフィーに皇帝の正式な証書を見せる。
彼女は、将軍の娘に見せられた証書に目を疑った。
それは、アマンテール皇帝からア―マンドと将軍の娘の結婚を、正式に承認するものだったのだ。
「な、何を言っているのです? 殿下は私と結婚するとおっしゃっています」
セラフィーは、将軍の娘に憤りを感じた。
エカテリーナは、セラフィーに冷笑した。
「あら、まだ信じられない? 公爵家の令嬢だったあなたなら、分かるはず。この白薔薇の焼き印。証書は本物よ。ア―マンドは私と結婚するの。あなたはただの遊びだったのよ!」
「そんなもの………偽装ですわ。お父上を騙したあなたのお父様なら、どんな嘘でもつきますもの……」
「何ですって! 犯罪人の娘で、たかが田舎のボロ教会の聖女の分際で!」
将軍の娘は、思い切りセラフィーの頬を平手打ちにした。
「くうっ……!」
セラフィーは、痛みと悲しみに顔を歪めた。頬がヒリヒリ痛む。
「現実を見ることねえ! あなたは犯罪人の娘だっていうことを忘れないことだわ! 殿下は女性には困らないの。あなたみたいな見栄えのむすめは都にたくさんいる。ただ、いいように無理矢理来て、遊ばれただけ。飽きられて捨てられる、みじめな人よ」
エカテリーナはあざ笑いながら、悠然と豪奢な馬車に乗って去って行った。
しかし、深く考える前に決断を下すことには躊躇いがあった。
「しかしな、宰相の娘であるセラフィーも素晴らしい娘だった。身分も申し分ない。彼女と皇太子の関係を妨げることは、慎重に考えねばならんぞ?」
ルドルフ将軍は機を逸しまいそうだと感じ、口説き落とすために他の策略を練り始める。
「……ですが、陛下。セラフィーの父である宰相は、国家に対する裏切り行為を行いました。その娘との結びつきは、我が国を危険に晒す恐れがありますぞ。私の娘との結婚こそ、帝国のためになるでしょうがね?」
エルドラン皇帝は、将軍の言葉に心を動かされた。
そして政治的な安定を求める考えから、将軍の提案に賛同した。
早速、エカテリーナにアーマンドとの結婚を命じたのだ。
意気揚々、将軍の娘はさっそく、ア―マンドが教会にいない時間を見計らい、セラフィーのもとに現れた。
「あんたが、忌まわしいアマンテール公爵家のお嬢さんね。わたくし、ルドルフ将軍の娘、エカテリーナといいます」
そして勝ち誇ったように、
「ア―マンドはわたしと結婚するの」
と告げて、セラフィーに皇帝の正式な証書を見せる。
彼女は、将軍の娘に見せられた証書に目を疑った。
それは、アマンテール皇帝からア―マンドと将軍の娘の結婚を、正式に承認するものだったのだ。
「な、何を言っているのです? 殿下は私と結婚するとおっしゃっています」
セラフィーは、将軍の娘に憤りを感じた。
エカテリーナは、セラフィーに冷笑した。
「あら、まだ信じられない? 公爵家の令嬢だったあなたなら、分かるはず。この白薔薇の焼き印。証書は本物よ。ア―マンドは私と結婚するの。あなたはただの遊びだったのよ!」
「そんなもの………偽装ですわ。お父上を騙したあなたのお父様なら、どんな嘘でもつきますもの……」
「何ですって! 犯罪人の娘で、たかが田舎のボロ教会の聖女の分際で!」
将軍の娘は、思い切りセラフィーの頬を平手打ちにした。
「くうっ……!」
セラフィーは、痛みと悲しみに顔を歪めた。頬がヒリヒリ痛む。
「現実を見ることねえ! あなたは犯罪人の娘だっていうことを忘れないことだわ! 殿下は女性には困らないの。あなたみたいな見栄えのむすめは都にたくさんいる。ただ、いいように無理矢理来て、遊ばれただけ。飽きられて捨てられる、みじめな人よ」
エカテリーナはあざ笑いながら、悠然と豪奢な馬車に乗って去って行った。
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