【完結】公爵令嬢は聖女になって身を引いたのに、殿下の愛は止まらない。

朝日みらい

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 夕暮れ時、静かな庭園にアーマンドとセラフィーが静かに立っていた。

 そこはかつて、二人がはじめて出会い、口づけを交わし、愛を誓い合った場所である。

 セラフィーは目を潤ませながら、アーマンドを見つめた。

「アーマンド、私…もうあなたを愛していないわ」

とセラフィーは声を震わせながら告げた。

 彼女の言葉には、辛い決意がにじみ出ていた。

 アーマンドの顔はゆがみ、驚きと痛みを隠せない。

 セラフィーの手を取り止めて、彼女の泣きはらした真っ赤な瞳を見つめる。

「何を言っている、セラフィー? 君が私を愛していないと? どうしてそんなことを言うんだ」

と彼は声を震わせながら問いかけた。

 セラフィーは深く息を吸い込み、その胸に秘めた悲しみを必死に隠そうとした。

「私たちの関係は、これ以上続けることができないの。私はお父様を冤罪にした皇帝を憎んでいるし、お父様を守り切れなかった、あなたも大嫌いなの! 本気よ、わたし!」

 アーマンドはまるで心を引き裂かれるような苦痛に顔を歪め、セラフィーの手を強く握りしめる。

「なんでそんな酷いことを言うんだよ? 君はぼくを愛しているはずだ。ぼくだって君のお父上が冤罪だと訴え続けるから。諦めないで、一緒に立ち向かおう」

と必死に訴える。

「無駄よ。私はもうここにはいられないの!」

とセラフィーは涙を堪えながら、彼の手を乱暴に振り払う。

「もう二度と戻ってこないわ。さようなら、アーマンド。私はあなたをもう愛していないの。だから、わたしを探したりしないで……わたしを忘れてね。そして立派な国王になってください……」

と最後に囁く。

「せめて、別れのキスだけでも」

 アーマンドがセラフィーの下顎に手をかけようとしたが、彼女は乱暴に振り払った。

「だめよ。さようなら」

 セラフィーはできるだけ冷淡に言い放つと、背を向けて歩き出した。

 口づけなどしたら、離れられなくなりそうだ。

 彼女の言葉にアーマンドは深い悲しみを抱え、叫び声を上げようとしても口を開くことはできなかった。

 ただ静かにその場に立ち尽くす。

 セラフィーは後ろを振り返ることなく、声を上げずに泣きながら歩みを進めた。

 アーマンドは彼女の姿が見えなくなるまで、その場に立ち続けていた。
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