【完結】公爵令嬢は聖女になって身を引いたのに、殿下の愛は止まらない。

(6)

　王都の中心部にあるアマンテール公爵家の邸宅は、かつて華やかで誇らしい佇まいを誇っていた。

　しかし今は暗く閉ざされ、周囲には憂鬱な雰囲気がただよっている。

     アマンテール宰相の不正取引の噂が立ち、公爵家もその影響を受け、バッシングの標的となっていたのだ。

　邸宅の前には大勢の群衆が集まり、怒りと非難の声が辺りに響き渡っていた。

　人々は激昂し、公爵家を非難し、糾弾する横断幕を掲げながら悪態をついていた。

　石や泥が邸宅に向けて投げられ、不穏な空気がただよう。

　家の中では、セラフィーは窓からその光景を見つめていた。

　群衆の怒りに対する理不尽さに心が痛み、怯えと絶望が心を支配していた。

　セラフィーの父親が汚職の罪で攻撃され、家族もその影響を受けていることに対する無力感が襲う。

　セラフィーは、ア―マンドが派遣した騎士たちにより家族と共に保護されていたが、それでも外の怒号や非難の声が耳に入り、心を揺さぶる。

　彼女は窓辺で震えながら、父親の無実を訴えることができず、自分たちの名誉が汚されるのをただ見つめるしかない。

　ガシャーン！

　突然、家の窓ガラスに石が投げつけられ、音を立てて割れた。

　セラフィーは恐怖に震えながらも、自分たちの身を案じる。

　家族と共に閉じ込められ、外の非難と攻撃から身を守るしかない。

（わたしは王都にはいられないわ……。ここにいるだけで、アーマンド様にまで非難の的になりかねない……）

　セラフィーの脳裏に浮かぶ、アーマンドの苦痛な表情。彼は父親の皇帝に、アマンテール宰相は冤罪だと直訴したという。

「馬車を出してちょうだい」　

　危険だという家族の制止を振り切り、護衛の騎士に守られながら、セラフィーは屋敷を出たのだった。