【完結】リゾット同盟、始めました

朝日みらい

文字の大きさ
上 下
10 / 27
第3章 美帆と見た夢の果て

第10話

しおりを挟む
 こうして二ヶ月あまりが過ぎようとしていた。

 公園では、美しい赤色や黄色のもみじが鮮やかに色づいて水面に浮かんでいる。

「どんな仕事をしているの」

 未知子は訊いてみた。

「ビルの設備管理だよ。毎日二十四時間体制で寝泊まりしながら」

「そうなんだ」

「建物って生き物みたいなものでさ。ちゃんと機械をメンテナンスしてないと簡単に壊れる。異常を見つけたら修理しなきゃいけないし。午前中は空調機のベルトの調整をしてたから。ほら、手がこんなにグリスがついて真っ黒だ。危ない事だってあるしさ。ベルトに指が絡まって。引きちぎれることだってあるらしい」

「大変なんだね」

「ところでどうなんだい。そろそろネックレスの店長さんの事を教えてくれないかな?」

 未知子は一瞬まぶたを 閉じた。

「同盟の繋がり、信じていいかな?」

 彼は頷いた。

 未知子はゆっくりと息を吐いた 。
 それから、ゆっくりとした口調で語り始めた……。



 美帆と出会ったのは、入社式の時だった。

 朗らかでおっとりした、丸い目をしていた。
 二人は同じ百貨店内にある店舗に配属された。
 実際に働きながら、仕事を覚えた。

 まずは宝石の知識や接客を学ぶ。
 販売は立ち仕事である。
 姿勢正しく、ダークグレーのスーツは清潔でさっばりと。
 髪の毛一本でも、乱れは許されない。
 しっかりファンデーションをし、口紅をさす。
 そして、口元には笑みを絶やさない。

 けれども、目はしっかりとお客を観察する。
 客層も、お金に余裕のある女性が中心。
 ショーケースに注がれるお客の視線から情報を汲み取る。
 些細な雑談を交わしながら、手に入れたい衝動を掻きたてる。

 しかし、未知子はどうしても お客に物を売ることが 下手だった。
 一方の美帆の手からは 飛ぶように宝石が売れていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

皇帝陛下の愛娘は今日も無邪気に笑う

下菊みこと
恋愛
愛娘にしか興味ない冷血の皇帝のお話。 小説家になろう様でも掲載しております。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。 既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。 未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。 後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。 欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。 * 作り話です * そんなに長くしない予定です

獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない

たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。 何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

処理中です...