【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

朝日みらい

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 そんなセーリーヌを見て、アドニス侯爵は慌てたように手を引いた。

「あなたの家まで送ろう」

 そう言うと彼は足早に部屋を出て行こうとした。

 セーリーヌも慌てて追いかけようとしたが、傷口が痛んで思わず呻いてしまう。すると、すぐに誰かに支えられた。振り返ると、そこにはアドニス侯爵の姿があった。

「大丈夫か?」

 セーリーヌは頷くだけで精いっぱいだった。

 顔が熱い。

 きっと真っ赤になっているだろうと思うとさらに恥ずかしくなる。

 しかし、そんなセーリーヌに構わずアドニス侯爵は侍女を呼ぶと、テキパキと彼女の支度を整えてくれたのだった。



☆■▽☆■▽



 その後、アドニス侯爵は以前もまして頻繁に実家に見舞いに来てくれるようになった。

 そのたびに彼はセーリーヌのことをまるで壊れ物のように優しく扱ってくれる。

 そして、そのたびに心がざわめくのだ。


──本当にわたくしったらどうしちゃったのかしら……?


  自分の反応に戸惑いながら日々を過ごしているうちに、あっという間に3か月が過ぎた。


 もうすぐ殿下とエリザベータとの結婚式が開かれるはず──。


(……わたしをもらってくれる殿方はいるかしら? こんなに大きな傷があったら……)


 セーリーヌは鏡で背中の傷を確認した。

 先日、やっと抜糸が終わったばかりだが、まだまだ目立つ傷跡が残っている。

 とてもではないが、人前で肌を晒せるような状態ではなかった。


(このまま、誰もわたくしをもらってくれなかったらどうしよう……)


 思わず泣きたくなった。

 その時、部屋の扉がノックされた。

 返事をすると、入ってきたのはアドニス侯爵だった。
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