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長い付き合いのセーリーヌから見ても、エリザベータと見つめ合って微笑む殿下はとても幸せそうにみえた。
優しい殿下は皆の王子様で、セーリーヌの大切な友人。
さあ、友の幸福を祝ないと!
そう思うのに、心からお祝い出来ない自分がいた。
──わたくしは明日から、どうすればいいのかしら?
この期に及んで、そんなことが脳裏をよぎる。
もしかしたら、殿下は自分のこんなふうに醜い部分に気付いていたのかもしれない。そんなふうに思った。
セーリーヌは殿下を騙そうとした。自分可愛さに、養父であるアーマンド伯爵に言われるがままに、彼を虜にしようと画策した。
景色は歌劇のように移り変わる。
主役を演じるのは殿下とエリザベータだ。
セーリーヌはただそれを眺めるだけの観客にしかなれなかった。
本当は、こんな結末になることにずっと前から気付いていた。
けれど、セーリーヌはそれに気付かないふりをして、ア―マンド伯爵にいい顔をし続けた。そうするしかなかったのだ。
──ねえ、わたくしはこれからどうすればいいのかしら?
またもやそんなことが脳裏を過る。
ぼんやりと眺めるセーリーヌの視界の端に、キラリと光るものが映った。
その男が飛び出してきて主役の二人に近づいたとき、セーリーヌは反射的に体を前方に滑り込ませた。
肩から背中の中央部に感じたのは鋭い痛みと燃えるような熱さ。
笑顔だった人々の顔が恐怖に染まる。
更なる激痛が背中を襲い、ヌメッとしたものが滴り落ちるのを感じた。
「誰か、賊だ! 捕らえろ!!」
「衛兵! 衛兵!」
あたりに怒声が響き渡る。すぐに近衛騎士や衛兵達がなだれ込み、鬼のような形相の男が囚われるのをぼんやりと見つめた。
──痛い。寒い……。
優しい殿下は皆の王子様で、セーリーヌの大切な友人。
さあ、友の幸福を祝ないと!
そう思うのに、心からお祝い出来ない自分がいた。
──わたくしは明日から、どうすればいいのかしら?
この期に及んで、そんなことが脳裏をよぎる。
もしかしたら、殿下は自分のこんなふうに醜い部分に気付いていたのかもしれない。そんなふうに思った。
セーリーヌは殿下を騙そうとした。自分可愛さに、養父であるアーマンド伯爵に言われるがままに、彼を虜にしようと画策した。
景色は歌劇のように移り変わる。
主役を演じるのは殿下とエリザベータだ。
セーリーヌはただそれを眺めるだけの観客にしかなれなかった。
本当は、こんな結末になることにずっと前から気付いていた。
けれど、セーリーヌはそれに気付かないふりをして、ア―マンド伯爵にいい顔をし続けた。そうするしかなかったのだ。
──ねえ、わたくしはこれからどうすればいいのかしら?
またもやそんなことが脳裏を過る。
ぼんやりと眺めるセーリーヌの視界の端に、キラリと光るものが映った。
その男が飛び出してきて主役の二人に近づいたとき、セーリーヌは反射的に体を前方に滑り込ませた。
肩から背中の中央部に感じたのは鋭い痛みと燃えるような熱さ。
笑顔だった人々の顔が恐怖に染まる。
更なる激痛が背中を襲い、ヌメッとしたものが滴り落ちるのを感じた。
「誰か、賊だ! 捕らえろ!!」
「衛兵! 衛兵!」
あたりに怒声が響き渡る。すぐに近衛騎士や衛兵達がなだれ込み、鬼のような形相の男が囚われるのをぼんやりと見つめた。
──痛い。寒い……。
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