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「ただいま」
買い物袋をかかえたお母さんが、帰ってきた。
「おじゃましています」
サエコはおじぎをした。お母さんは、ゆり子とサエコの顔を見比べながら、
「明日算数の小テストなんでしょう? 満点取れたら、サエコちゃんと映画に行ってもいいわよ」
「わあー。それはたのしみです」
サエコはにこっとほほえんでから、時計を見た。
「あ、もう五時だ。じゃあ、ミルキーまたね。ゆりちゃんは塾で」
見送りながら、お母さんが、
「サエコちゃんって、いい子ね」
と、ちょっとうらやましそうに言った。それから、
「お父さんは、機械にしか目がないんだから」
と、苦々しくコピー機を指先でこすった。お父さんは肩をしぼめながら、ほうきとちり取りで掃除を始めた。
「でも、お父さんすごいよ。ボールペンがコピーできるんだよ。大発明じゃん」
「そんなこと、どうでもいいわ。これより塾でしょう? 宿題はちゃんとした?」
「うん。したよ」
「復習は? 先生、うるさく言ってるんでしょう?」
ゆり子は肩をすぼめた。
「サエコちゃんを見習いなさい」
お母さんはぴしゃりと言った。
買い物袋をかかえたお母さんが、帰ってきた。
「おじゃましています」
サエコはおじぎをした。お母さんは、ゆり子とサエコの顔を見比べながら、
「明日算数の小テストなんでしょう? 満点取れたら、サエコちゃんと映画に行ってもいいわよ」
「わあー。それはたのしみです」
サエコはにこっとほほえんでから、時計を見た。
「あ、もう五時だ。じゃあ、ミルキーまたね。ゆりちゃんは塾で」
見送りながら、お母さんが、
「サエコちゃんって、いい子ね」
と、ちょっとうらやましそうに言った。それから、
「お父さんは、機械にしか目がないんだから」
と、苦々しくコピー機を指先でこすった。お父さんは肩をしぼめながら、ほうきとちり取りで掃除を始めた。
「でも、お父さんすごいよ。ボールペンがコピーできるんだよ。大発明じゃん」
「そんなこと、どうでもいいわ。これより塾でしょう? 宿題はちゃんとした?」
「うん。したよ」
「復習は? 先生、うるさく言ってるんでしょう?」
ゆり子は肩をすぼめた。
「サエコちゃんを見習いなさい」
お母さんはぴしゃりと言った。
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