【完結】べつに平凡な令嬢……のはずなのに、なにかと殿下に可愛がれているんです

(26)

　別邸では、アシェリーは侍女に身の回りの世話を断り、フィリップ殿下のために手料理をふるまった。

「おいしいよ、ありがとう」

と褒めてくれる彼の笑顔が何よりも嬉しかった。

　そして夜になると……二人は激しく愛し合った。

　フィリップ殿下はアシェリーの髪を撫で、彼女の乳房を愛撫した。

「愛しているよ、アシェリー」

「私もです……」

　アシェリーはフィリップ殿下の胸板に頬を摺り寄せて、何度も口づけをした。

　彼はアシェリーを抱きしめる。

「きみと出会えて幸せだ」

　アシェリーは微笑むと、フィリップ殿下の耳元に囁きかける。

「私も幸せです」

　それから二人はお互いの愛を確かめ合うように何度も愛し合った……。


☆■☆■


　星の輝く夜、フィリップ殿下はアシェリーに目隠しをして馬車に乗せた。

「殿下、どこへ連れて行ってくださるんですか？」

　アシェリーはわくわくした様子で尋ねた。すると、フィリップ殿下は答える。

「秘密だよ」

　そう言って微笑むと、彼はアシェリーの手を引いて歩き出した。

　やがて目的地に着いたらしく、扉の前で立ち止まる。そこには「王国劇場」と書かれた看板があった。

「さあ、入って」

　言われるままに中に入ると、中はとてもきらびやかな空間が広がっていた。着飾った貴族たちが談笑している。

アシェリーは目を丸くした。

「すごい……」

「気に入ったかい？」

「はい！ でも、どうしてこんなところに私を連れてきてくださったのですか？」

「君のために特別な席を用意したからね」