【完結】べつに平凡な令嬢……のはずなのに、なにかと殿下に可愛がれているんです

(23)

　そして、ある日のこと。

「明日は隣国の国王夫妻が来られるから準備を頼むよ」

とフィリップ殿下に言われたのだ。

　いよいよ本番がやってくるのだ。

　アシェリーは緊張しながらも、覚悟を決めることにした。

　そして隣国の国王夫妻がやってきた。

　歓迎の挨拶を交わし、夜会の会場へと向かう。

　そこでアシェリーは緊張しながらもフィリップ殿下の隣に立ち、挨拶をすることになった。

（大丈夫かしら……）
　　
　不安は残るものの、やるしかないのだと思い直す。

　するとフィリップ殿下が耳打ちしてきた。

「大丈夫だよ」

と言ってくれたのだ。

　それだけで心が軽くなったような気がする。

　そして深呼吸をして心を落ち着けた。

　それから先はよく覚えていないが、どうにか無事に終わったことでホッとした。


☆■☆■


　数日後、隣国の国王夫妻が帰国する日がやってきた。アシェリーはフィリップ殿下と一緒に見送りに行った。

　その時、フィリップ殿下から声をかけられたのだ。

「アシェリー、きみはぼくの想像以上に素敵な女性だよ」

「そ、そんな……私なんて」

「いや、本当にそう感じたんだ。きみは謙虚だね。そういうところがもっと好きだよ」

　アシェリーは顔が真っ赤になってしまった。

　心臓の鼓動が速くなるのを感じた。

　そしてフィリップ殿下の顔を見ると彼も少し照れている様子だった。その顔を見てアシェリーも緊張してしまう。

　だが、勇気を出して言ったのだ。

「ありがとうございます！ 私も殿下のことが好きです！」

　すると彼は笑顔になった。

「嬉しいよ。ありがとう」

　そして、そっと抱きしめてくれた。

　アシェリーの心臓の鼓動はますます速くなっていった。

　顔が真っ赤になり、頭の中が真っ白になる。しかし不思議と心地よかった。

（ああ……わたしったら何を言っているのかしら）

　でも後悔はなかった。むしろ幸せな気分だ。このままずっとこうしていたいとさえ思ったほどだ。

（この人になら何をされてもいい……）

　アシェリーは心の底からそう思った。