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 フィリップ殿下はアシェリーの答えに満足げに微笑んだ。

 それから訓練所の隅に控えている侍従長を呼びつけた。

「彼女に魔術を教える家庭教師が必要だな」

と指示を出す。

「かしこまりました」

 侍従長は侍従長は頭を下げた。

「では、これから魔術を学ばれるアシュリー嬢に王宮付きの魔術師を一人つけましょう」

「ありがとうございます」

 アシェリーは礼を言った。

 フィリップ殿下は表情を緩めた。

「よかった。きみがそう言ってくれて」

「では、そのように手配いたします」

 侍従長は足早に退出していった。

 それから、アシュリーは王妃教育の傍ら、魔術師にも大好きな魔法を学んでいった。

 めきめき攻撃を防ぐシールドを張る力が付き、いつのまにか炎や水の属性を持つ相手と対等に戦えるようになっていた。

「あなたは筋がよいですわ」

 魔術の訓練をするたびに魔術師が褒めてくれるので、アシェリーは自分にも才能があったのだということを実感して、だんだんと自分に自信が持てるようになってきた。

 ずっと、身分が低い平凡な身分と思い込んでいたけれど、もしかしたら、自分は特別な人間なのかもしれない。そう思うと、王太子妃になれると思うようになった。

 しかし、フィリップ殿下がアシェリーの努力を評価しているのは魔術だけではなかった。

 彼女は魔法の訓練に加えて礼儀作法や語学も懸命に習得していた。


☆■☆■


 ある日、フィリップ殿下はアシュリーを湖畔の別荘に誘った。

「きみには感謝しているんだよ、アシュリー」

 馬車の車中で、フィリップ殿下が口を開いた。

「きみに出会ってからというもの、私はきみががんばる姿にいつも勇気づけられているよ」

 アシェリーは思わず顔を赤らめた。

 フィリップ殿下はそんな彼女を目を細めて見つめていた。
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