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アシェリーはふくれっ面になった。このクッションにはそれだけの価値があるのだが、侍女が理解してくれるとは思えない。
「それではお嬢様、お部屋の片付けを始めましょう」
「えー! まだいいじゃない!」
アシェリーは不満の声を上げた。
「なりません! お勉強の時間までまだ間がございます。少し早めに始めれば早く終わるでしょう? それとも、休憩時間にしますか?」
このクッションは実は価値のある魔法道具だ。『魔術書』に載っている魔法で、使うと一定範囲内に結界を張れるのだ。
アシェリーはこの魔法が使えれば、自分の部屋に結界を張れるのではないかと思ったのである。
それで自分の部屋にこのクッションを持ち込んで、実験を始めたのであるが……結果は失敗だった。
「そんな顔をなさらないでくださいまし」
侍女は困ったように微笑んだ。彼女はアシェリーより3つ年上の20歳だ。普段は主人であるアシェリーに対して敬語を使っているが、たまにボロが出ている。
「あなたの言う通りよ」
アシェリーは諦めて立ち上がった。
「早く始めないと、あなたのお小言が飛んできそうだものね」
「ご理解いただけて何よりでございます。それではまず……」
侍女は部屋の片付けを始めた。アシェリーはそれを手伝いながらため息をつくのだった。
☆■☆■☆
3日後、王都の王宮では王太子妃候補達の選考会が開催された。
面接とかではなく、候補者を連れてきて質問するだけで判断するという乱暴なものだった。
王太子は候補者一人一人と会い、話をする。候補者は5人。アシェリーもその1人である。話は雑談程度だった。
5人のうち4人はいずれも目を見張るような美人で血筋的にも問題がないし、魔法の素養も高かった。
待合室で候補者はアシェリーの容姿を見て悪口を言っていたが、アシェリーは別に気にしなかった。どうせ自分の容姿が目立つのは自覚しているし、そんな連中を気にしても仕方ないと思っている。
一番の候補者であるアリー・エッヘンホルト公爵令嬢だけは少し違った。
「皆さん素晴らしい方ばかりで驚いております」
アリーはそう言って微笑んだ。
彼女は5人の中で一番若い17歳だが、落ち着いた雰囲気と穏やかな物腰から他の候補者より大人っぽく見える。アシェリーをじろりと見て、
「アシェリー様?、あなた、宮廷教育をしっかり習ってらっしゃる? 宮廷では、最低限の礼儀作法は身につけておかなければ笑われましてよ」
「それではお嬢様、お部屋の片付けを始めましょう」
「えー! まだいいじゃない!」
アシェリーは不満の声を上げた。
「なりません! お勉強の時間までまだ間がございます。少し早めに始めれば早く終わるでしょう? それとも、休憩時間にしますか?」
このクッションは実は価値のある魔法道具だ。『魔術書』に載っている魔法で、使うと一定範囲内に結界を張れるのだ。
アシェリーはこの魔法が使えれば、自分の部屋に結界を張れるのではないかと思ったのである。
それで自分の部屋にこのクッションを持ち込んで、実験を始めたのであるが……結果は失敗だった。
「そんな顔をなさらないでくださいまし」
侍女は困ったように微笑んだ。彼女はアシェリーより3つ年上の20歳だ。普段は主人であるアシェリーに対して敬語を使っているが、たまにボロが出ている。
「あなたの言う通りよ」
アシェリーは諦めて立ち上がった。
「早く始めないと、あなたのお小言が飛んできそうだものね」
「ご理解いただけて何よりでございます。それではまず……」
侍女は部屋の片付けを始めた。アシェリーはそれを手伝いながらため息をつくのだった。
☆■☆■☆
3日後、王都の王宮では王太子妃候補達の選考会が開催された。
面接とかではなく、候補者を連れてきて質問するだけで判断するという乱暴なものだった。
王太子は候補者一人一人と会い、話をする。候補者は5人。アシェリーもその1人である。話は雑談程度だった。
5人のうち4人はいずれも目を見張るような美人で血筋的にも問題がないし、魔法の素養も高かった。
待合室で候補者はアシェリーの容姿を見て悪口を言っていたが、アシェリーは別に気にしなかった。どうせ自分の容姿が目立つのは自覚しているし、そんな連中を気にしても仕方ないと思っている。
一番の候補者であるアリー・エッヘンホルト公爵令嬢だけは少し違った。
「皆さん素晴らしい方ばかりで驚いております」
アリーはそう言って微笑んだ。
彼女は5人の中で一番若い17歳だが、落ち着いた雰囲気と穏やかな物腰から他の候補者より大人っぽく見える。アシェリーをじろりと見て、
「アシェリー様?、あなた、宮廷教育をしっかり習ってらっしゃる? 宮廷では、最低限の礼儀作法は身につけておかなければ笑われましてよ」
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