【完結】うらめし村のまりも

朝日みらい

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 遠く、海のきらめきが見えるこだかい丘の上に、小さな村が広がっていました。

 この村に住むのはおばけたちで、その村は『うらめし村』と呼ばれていました。

 うらめし村のおばけたちは、人々をびっくりさせたり怖がらせたりするのが得意で、おばけの子供たちは一人前のおばけになれるように、毎日、ひとをこわがらせる勉強をしていました。

 朝、太陽がのぼると、子供たちはおばけ学校に通い、おばけの技術を学びました。顔をゆがめ、声を変え、不思議な音を立てて人々をこわがらせる方法を熱心に練習しました。

 その生徒の中で、特に小さなおばけの女の子、まりもがいました。まりもは他のおばけたちと比べて背が小さく、すこし引っ込み思案で、心がとてもおだやかな子でした。

 まりもはおばけなので、その姿はふつうの人々にとっておそろしいもので、口はさけていて、かたほうの目はとびだしていました。そのため、まりもは鏡で自分の顔を見るたびに目をそむけてしまうこともしばしばでした。

 ですから、まりもは夜出歩くだけで周りの人間たちを驚かせてしまいました。

 しかし、そのおどろきは実際のところ、まりもの強みでもありました。まりもはおばけ学校での成績がトップで、そのことから同級生たちからうらやまれました。

 しかし、まりも自身はうれしさよりも、自分の外見でしか見られずに、本当の自分を知ってもらえないことが悲しかったのです。

 ある日の夕暮れ、まりもは丘に立つ墓地で夕日をながめていました。そこはまりもの一番好きな場所でした。夕陽が海に沈む美しい瞬間に、心がおだやかになります。

 しかし、その日、何かが違っていました。突然、中学生の制服を着た一人の男の子が墓地に現れました。まりもよりも背が高く、きりっとした顔立ちをしていました。
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