【完結】うらめし村のまりも

朝日みらい

文字の大きさ
上 下
1 / 4

(1)

しおりを挟む
 遠く、海のきらめきが見えるこだかい丘の上に、小さな村が広がっていました。

 この村に住むのはおばけたちで、その村は『うらめし村』と呼ばれていました。

 うらめし村のおばけたちは、人々をびっくりさせたり怖がらせたりするのが得意で、おばけの子供たちは一人前のおばけになれるように、毎日、ひとをこわがらせる勉強をしていました。

 朝、太陽がのぼると、子供たちはおばけ学校に通い、おばけの技術を学びました。顔をゆがめ、声を変え、不思議な音を立てて人々をこわがらせる方法を熱心に練習しました。

 その生徒の中で、特に小さなおばけの女の子、まりもがいました。まりもは他のおばけたちと比べて背が小さく、すこし引っ込み思案で、心がとてもおだやかな子でした。

 まりもはおばけなので、その姿はふつうの人々にとっておそろしいもので、口はさけていて、かたほうの目はとびだしていました。そのため、まりもは鏡で自分の顔を見るたびに目をそむけてしまうこともしばしばでした。

 ですから、まりもは夜出歩くだけで周りの人間たちを驚かせてしまいました。

 しかし、そのおどろきは実際のところ、まりもの強みでもありました。まりもはおばけ学校での成績がトップで、そのことから同級生たちからうらやまれました。

 しかし、まりも自身はうれしさよりも、自分の外見でしか見られずに、本当の自分を知ってもらえないことが悲しかったのです。

 ある日の夕暮れ、まりもは丘に立つ墓地で夕日をながめていました。そこはまりもの一番好きな場所でした。夕陽が海に沈む美しい瞬間に、心がおだやかになります。

 しかし、その日、何かが違っていました。突然、中学生の制服を着た一人の男の子が墓地に現れました。まりもよりも背が高く、きりっとした顔立ちをしていました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ドラゴンの愛

かわの みくた
児童書・童話
一話完結の短編集です。 おやすみなさいのその前に、一話ずつ読んで夢の中。目を閉じて、幸せな続きを空想しましょ。 たとえ種族は違っても、大切に思う気持ちは変わらない。そんなドラゴンたちの愛や恋の物語です。

仙人のドングリ

morituna
児童書・童話
 全国各地に伝承されているサル婿入り民話は、労力に対した代価により、サルが農夫の娘を嫁にもらう。 しかし、どれも、サルの嫁になった娘の計略にはまって、サルが川に落ちて死んでしまう結末である。  これでは、サルが苦労したのに努力が報われず、サルが浮かばれない。  そこで、仙人のドングリを使って、サルを支援することにした。

シャルル・ド・ラングとピエールのおはなし

ねこうさぎしゃ
児童書・童話
ノルウェジアン・フォレスト・キャットのシャルル・ド・ラングはちょっと変わった猫です。人間のように二本足で歩き、タキシードを着てシルクハットを被り、猫目石のついたステッキまで持っています。 以前シャルル・ド・ラングが住んでいた世界では、動物たちはみな、二本足で立ち歩くのが普通なのでしたが……。 不思議な力で出会った者を助ける謎の猫、シャルル・ド・ラングのお話です。

【挿し絵つき】赤ドレスちゃんの神隠し事件

けろり
児童書・童話
幸せに暮らすエルフの女の子、赤ドレスちゃんの身にある日起こった不思議な出来事。 それはこれまでの人生の真実をひっくり返すものでした。

[完結]ドロボウにスカウト!

朝日みらい
児童書・童話
ぼくは、登校途中にヘンなおじさんに、ドロボウにスカウトされてしまって・・・。予想外の展開をぜひお楽しみください。

サッカーの神さま

八神真哉
児童書・童話
ぼくのへまで試合に負けた。サッカーをやめようと決心したぼくの前に現れたのは……

あわてんぼう パパ

hanahui2021.6.1
児童書・童話
あたしは、パパと2人ぐらし。 だから、【あたしが しっかりしなくちゃ!】って頑張ってるんだけど…。

老犬ジョンと子猫のルナ

菊池まりな
児童書・童話
小さな町の片隅で、野良猫が子猫を生み、暖かく、安全な場所へと移動を繰り返しているうちに、一匹の子猫がはぐれてしまう。疲れきって倒れていたところを少年が助けてくれた。その家には老犬のジョンがいた。

処理中です...