【完結】伯爵令嬢はハンサム公爵の騎士団長に恋をする

朝日みらい

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 目を凝らして見てみると、なんとエドナを連れている。

(あの男はシリウス公爵の手先か)とウィリアムは察した。

 そして、そのまま馬車の後を追って走り出す。

「エドナ!」

 彼は必死になって叫んだ。

 車内では灰色の襟付きの上着姿の紳士がハンカチを取り出して、エドナの鼻に押し当てる。

 するとエドナはたちまち強烈な睡魔に襲われて倒れ込んでしまった。

「んんっ……」

と言いながら必死にもがくのだが、ビクともしない。

 やがて麻酔効果が出てきたのか、彼女の身体がぐったりとし始めていく。

(このままでは危険だ……)

 そう思ったウィリアムは馬車にしがみつき、ドアをこじ開けてエドナを助け出そうと手を伸ばす。

「彼女を放せ! シリウス子爵!」

 シリウス子爵はウィリアムの手をはねのけると、不敵な笑みを浮かべている。

「ふふっ、それはこっちのセリフだな」

とシリウス公爵が言った。

 そしてニヤリと笑みを浮かべた。

 彼の手にはナイフが握られている。

「彼女を離せ!」

とウィリアムが叫ぶと同時に、シリウス公爵は腰のベルトからナイフを抜き取り、馬車の窓を開けた。

 そして、ウィリアムの心臓を目がけてナイフを投げた。

 それは真っ直ぐに飛んでいく。

 彼は間一髪のところで避けようとして、馬車から外に放り出された。

 シリウス公爵は余裕の笑みを浮かべていた。

「さあ、これで邪魔者がいなくなった……」

と呟いてニヤリと笑った。


☆☆☆☆☆☆


 エドナが目を覚ました時、周囲は暗かった。

 手や足は縛られていて自由に動けない状態だったが、幸い口は塞がれていなかったので話すことはできた。

(ここはどこ?)

とエドナは周りを見回そうとするが、目隠しをされているため何も見えない。

 すると男の声がした。

「目が覚めたか? お嬢さん」

 低く薄気味悪いその声は、シリウス子爵だった。

 彼はゆっくりと近づいてくると、彼女の顎に手を当てた。

 そして口元に笑みを浮かべると言った。

「今からお前はウィリアムのおびき出す餌だ」

 それを聞いた瞬間、エドナの顔が青ざめた。

(やめて…!)

と思うものの声に出すことができないまま震えていることしかできなかった。

(誰か助けて……!)

と心の中で叫んでいた時、突然扉が開き誰かが入ってきた。
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