【完結】伯爵令嬢はハンサム公爵の騎士団長に恋をする

朝日みらい

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 ウィリアムが褒められていることが嬉しい。

 自分のことよりも嬉しく感じられ、自然と笑みがこぼれてしまう。

「ふふふっ……」

 そんなエドナを見て、アガーネンは不思議そうな表情を浮かべた後、微笑んで言った。

「エドナ嬢のお話もお聞かせいただけますか?」

 そう聞かれたので、エドナは笑顔で浮かれ気味に答えた。

 ウィリアムとの出会いから恋に落ちるまでの話もまた、アガーネンには興味深かったようだ。

 真剣に耳を傾けて聞いてくれるのが嬉しい。
 
 その後も二人はたわいもない話で談笑を続けたのだが、ふとアガーネンが何かを思い出したかのように口を開いた。

「ところで、エドナ嬢はウィリアム卿とご婚約をなさるのですか?」

 突然の質問に戸惑ったものの、エドナは「はい、婚約しますの」と、正直に答えた。

 すると彼は微笑みながらこう答えるのだった。

「ご婚約を。そうですか……」

「……」とはどういうことなのだろう?

 疑問に思うことはあったものの、エドナはそれ以上聞くことはできずに言葉を待つ。

(やっぱりウィリアム様のことを気にかけていらっしゃるのかしら。わたしではつり合わないってこと……?)

 エドナが心の中でそんなことを考えていると、不意にアガーネンが近づいてきて耳元で囁いた。

「ウィリアム卿は若いながら立派な騎士です。ですがね……深傷を負ったリンドン隊長を助けずに置き去りにしたのは……」

「置き去りですって……」

「そのまま『見殺し』にしたとも解釈できますから」

 その言葉を聞き、エドナは驚いて目を丸くした。

「見殺し……?」

 なぜ急にそんなことを言うの?

 アガーネンはそんなエドナの様子を見て微笑むと、ゆっくりと口を開く。

「答えは簡単ですよ。ウィリアム卿は隊長になりたかったからです。あのリンドン隊長には誰にも敵いませんからね」

とさらに付け加えた。

 しかし、その声色からは、彼が本気なのか冗談で言っているのか判断できなかった。

 アガーネンはそれ以上のことは言わなかった。

(きっと彼の言葉はただの憶測に過ぎないのだわ。絶対、そうよ…)

 エドナはそう思いこもうとした。


 しばらくするとウィリアムが戻ってきた。

 王様や他の重臣も一緒である。

 彼らはエドナとアガーネンを見て微笑んでいた。

「おや、宰相殿と知り合いになったのか?」

と王様が尋ねてきた。

「はい、宰相様にお会いできて光栄です」

とエドナが答えると、王様も満足そうに頷いているが、ウィリアムはどことなく浮かない顔をしている。

(ウィリアム様はリンドン隊長を見殺しにしたって……一体どういうことなの?)

とエドナは思った……。
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