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「エドナは私の愛しい婚約者です」
「そうか、それは喜ばしいことだ。エドナ嬢、彼は偉大な男だ。隣国の反乱分子シリウス子爵の侵攻にさらされた時、ウィリアム卿は尊敬するリンドン隊長を失った。だが、副隊長として仲間をまとめあげて見事押し返した。私はウィリアム卿を誰よりも信頼しておる」
「いえ、国王陛下。私はただ自身の務めを果たしただけに過ぎません」
ウィリアムは謙遜しながら答えた。
王様は彼の功績を讃えるように拍手をしている。
エドナはその様子を静かに見守っていた。
ふたりが王様への挨拶を終えると、
「すまんが、エドナ嬢。ウィリアム卿に私の円卓会議の重臣たちを紹介しておきたい。いずれ、円卓の席に招くこともあるかもしれぬからな。少しばかり彼を借りても構わないか?」
と王様が言った。
「もちろんです、国王陛下」
エドナは快諾して答えた。
ウィリアムはすまなそうな顔で彼女に謝ってきたが、彼女は気にしていないというように微笑んで見せた。
そして彼は王様に連れられてどこかへ行ってしまった。
一人になったエドナは少し寂しく感じたものの、気持ちを切り替えて他の貴族たちを眺めることにした。
多くの人が集まっており、華やかな衣装に身を包んでいる女性たちが目に入る。
エドナは会場の壁際に移り喧騒から逃れ、ほっとしたような気持ちになった。
するとそこへ一人の男性が近づいてくるのが見えた。
年齢は三十代くらいだろうか?
紳士的な印象を受ける男性だった。
「こんにちは」
と声をかけられたので、エドナは小さく頭を下げた。
「私は宰相のニヒト公爵、アガーネンと申します。どうぞお見知りおきを」
「こちらこそよろしくお願いします」
エドナは笑顔で答えた。
すると彼も微笑んでくれる。
その表情からは優しさが感じられたので、悪い印象は抱かなかった。
(この人なら仲良くなれそうな気がするわ)と心の中で思ったくらいだ。
その後しばらく世間話をしたのだが、話は弾んだように思えた。
宰相という立場にあることもあり、彼は非常に博識な人物でもあった。
エドナは自分が知らないことをたくさん教えてもらうことができたのである。
その話術にも感心する。
「隣国のシリウス子爵の侵攻での活躍、その功績は偉大ですよ。王様もウィリアム卿には大きな信頼を置いている。宰相の私の意見より、ウィリアム卿の意見を尊重されるくらいなんですから」
とアガーネンは嬉しそうに話してくれた。
「そうか、それは喜ばしいことだ。エドナ嬢、彼は偉大な男だ。隣国の反乱分子シリウス子爵の侵攻にさらされた時、ウィリアム卿は尊敬するリンドン隊長を失った。だが、副隊長として仲間をまとめあげて見事押し返した。私はウィリアム卿を誰よりも信頼しておる」
「いえ、国王陛下。私はただ自身の務めを果たしただけに過ぎません」
ウィリアムは謙遜しながら答えた。
王様は彼の功績を讃えるように拍手をしている。
エドナはその様子を静かに見守っていた。
ふたりが王様への挨拶を終えると、
「すまんが、エドナ嬢。ウィリアム卿に私の円卓会議の重臣たちを紹介しておきたい。いずれ、円卓の席に招くこともあるかもしれぬからな。少しばかり彼を借りても構わないか?」
と王様が言った。
「もちろんです、国王陛下」
エドナは快諾して答えた。
ウィリアムはすまなそうな顔で彼女に謝ってきたが、彼女は気にしていないというように微笑んで見せた。
そして彼は王様に連れられてどこかへ行ってしまった。
一人になったエドナは少し寂しく感じたものの、気持ちを切り替えて他の貴族たちを眺めることにした。
多くの人が集まっており、華やかな衣装に身を包んでいる女性たちが目に入る。
エドナは会場の壁際に移り喧騒から逃れ、ほっとしたような気持ちになった。
するとそこへ一人の男性が近づいてくるのが見えた。
年齢は三十代くらいだろうか?
紳士的な印象を受ける男性だった。
「こんにちは」
と声をかけられたので、エドナは小さく頭を下げた。
「私は宰相のニヒト公爵、アガーネンと申します。どうぞお見知りおきを」
「こちらこそよろしくお願いします」
エドナは笑顔で答えた。
すると彼も微笑んでくれる。
その表情からは優しさが感じられたので、悪い印象は抱かなかった。
(この人なら仲良くなれそうな気がするわ)と心の中で思ったくらいだ。
その後しばらく世間話をしたのだが、話は弾んだように思えた。
宰相という立場にあることもあり、彼は非常に博識な人物でもあった。
エドナは自分が知らないことをたくさん教えてもらうことができたのである。
その話術にも感心する。
「隣国のシリウス子爵の侵攻での活躍、その功績は偉大ですよ。王様もウィリアム卿には大きな信頼を置いている。宰相の私の意見より、ウィリアム卿の意見を尊重されるくらいなんですから」
とアガーネンは嬉しそうに話してくれた。
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