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彼の体温を感じることができるなんて……幸せだ。
エドナはウィリアムと触れ合うことで得られる安心感に身を委ねる。
「ダンスを教えてくれないか。国王主催の夜会でパートナーの君と踊る前に」
「ええ、喜んで」
こうして、エドナは彼とダンスを踊ることになった。
「では、ワルツを教えますね。わたしの腰に手をまわしてください。それから、ゆっくり足をうごかして……」
エドナが手ほどきをすると、彼は素直に従ってくれた。そのことが何よりも嬉しかった。
(ああ……ウィリアム様……)
「できましたね。上手です」
エドナは褒めると、彼ははにかんだように微笑み返してくれた。
そして、彼と目が合うたびに鼓動が高鳴るのを感じた。
(ああ……もっと一緒にいたいわ)
そう強く思ったときだった。
「エドナ、今度は俺にリードさせてくれ。うまくできるか自信はないが」
「ええ……」
(ああ……どうしよう!)
エドナは平静を装うとしながら答えた。
しかし、内心は嬉しくて仕方がなかった。
ウィリアムが自分を求めてくれるなんて、夢のようだ。
「では、お願いしますね」
ウィリアムが手を差し出してきた。
エドナはそれを握り返すと、ゆっくりと足を踏み出した。
最初はぎこちなかった動きも徐々にスムーズになっていくのがわかる。
ウィリアムは一度教えたステップやターンをあっという間にマスターして、エドナをリードするようになっていた。
(ああ……わたし、幸せだわ)
ずっとこのまま時間が止まればいいのにと思った。
木陰で、ウィリアムは立ち止まった。あたりに篝火も無く、暗闇で遠くからは誰も見えない。
「エドナ」
名前を呼ばれると心臓が跳ねる気がした。
彼の声で自分の名前を呼ばれることが、こんなにも幸せなことなのだと初めて知ったのだ。
もっと呼んでほしいと思った。
もっともっと一緒にいたいと思ってしまう。
「エドナ……君にキスしたい」
エドナはウィリアムと触れ合うことで得られる安心感に身を委ねる。
「ダンスを教えてくれないか。国王主催の夜会でパートナーの君と踊る前に」
「ええ、喜んで」
こうして、エドナは彼とダンスを踊ることになった。
「では、ワルツを教えますね。わたしの腰に手をまわしてください。それから、ゆっくり足をうごかして……」
エドナが手ほどきをすると、彼は素直に従ってくれた。そのことが何よりも嬉しかった。
(ああ……ウィリアム様……)
「できましたね。上手です」
エドナは褒めると、彼ははにかんだように微笑み返してくれた。
そして、彼と目が合うたびに鼓動が高鳴るのを感じた。
(ああ……もっと一緒にいたいわ)
そう強く思ったときだった。
「エドナ、今度は俺にリードさせてくれ。うまくできるか自信はないが」
「ええ……」
(ああ……どうしよう!)
エドナは平静を装うとしながら答えた。
しかし、内心は嬉しくて仕方がなかった。
ウィリアムが自分を求めてくれるなんて、夢のようだ。
「では、お願いしますね」
ウィリアムが手を差し出してきた。
エドナはそれを握り返すと、ゆっくりと足を踏み出した。
最初はぎこちなかった動きも徐々にスムーズになっていくのがわかる。
ウィリアムは一度教えたステップやターンをあっという間にマスターして、エドナをリードするようになっていた。
(ああ……わたし、幸せだわ)
ずっとこのまま時間が止まればいいのにと思った。
木陰で、ウィリアムは立ち止まった。あたりに篝火も無く、暗闇で遠くからは誰も見えない。
「エドナ」
名前を呼ばれると心臓が跳ねる気がした。
彼の声で自分の名前を呼ばれることが、こんなにも幸せなことなのだと初めて知ったのだ。
もっと呼んでほしいと思った。
もっともっと一緒にいたいと思ってしまう。
「エドナ……君にキスしたい」
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