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再び青年に向かって厳しい言葉をかけると、彼は剣を振り上げて青年に向かっていく。
青年は果敢にその剣を受け止めるが、尻もちをついた。
「お前は何度言ったらわかる! 腰が入っていないといったはずだ」
騎士団長は、地面に倒れこんでいる青年に向かってなおも追い打ちをかける。
周りで訓練をしていた騎士たちも思わず手を止めて、二人のやりとりを見ている。
「隊長、申し訳ありません!」
青年が必死に謝ると、騎士団長はさらに厳しい言葉をかけた。
「戦場に、君のような軟弱な騎士などいらない」
その言葉に青年の顔は真っ青になる。
「いいか、戦いとはそんな生易しいものではない。目の前で大切な仲間の命を守れないことが、どれほど辛いものか、分からないだろう……」
騎士団長はそう言って、青年に木剣を渡し、
「鍛練を続けろ」
と訓練場を出て行った。
青年が呆然としていると、周りの騎士たちは同情するかのように彼の肩を叩くのだった。
☆☆☆☆☆
(やっぱり素敵よね……!)
エドナは、近くの茂みから若い騎士団長の姿をうっとりとした目で追っていた。
彼の名前はウィリアム・オルスタイン公爵。
噂では年齢は25歳だそうだ。
普段は冷静沈着で、冷酷な印象すら与えるが、熱い情熱も持ち合わせている。
部下たちにも非常に慕われているようだ。
それに美しい金色の髪とアクアマリンのような瞳を持っていて、容姿も整っている。女性たちからの人気も高いのは頷ける。
婚約者を選びたいエドナにとっては、彼は理想の男性だ。
(ああ……わたしの運命の人かもね……)
ウィリアムは、たくさんの令嬢たちから求婚されているらしい。
けれども軍人の彼は貴族の社交の場には滅多に来ないし、婚約した話も聞かない。
エドナはその事実にますます彼に憧れを抱く。
(わたしにとってはウィリアム様のような、気品があって、使命感があるストイックな方が理想なのよね)
そんなことを思いながら、木陰から見ていると、ふと、ウィリアムと目が合ったように感じた。
でも一瞬のことで彼はそのまま違う方向を向いてしまったので、気のせいだったかもしれないと思い直す。
しかし、次の瞬間。
彼は自分のいる方を突然振り返った。
彼の視線は明らかにエドナを向いている。
(え……? 嘘……)
エドナは心臓が跳ね上がるのを感じた。
彼は鋭い目をこちらに向けたまま、こちらに近づいてくる。
「誰だ。隠れていないで出てこい」
(見つかってしまったわ……!)
青年は果敢にその剣を受け止めるが、尻もちをついた。
「お前は何度言ったらわかる! 腰が入っていないといったはずだ」
騎士団長は、地面に倒れこんでいる青年に向かってなおも追い打ちをかける。
周りで訓練をしていた騎士たちも思わず手を止めて、二人のやりとりを見ている。
「隊長、申し訳ありません!」
青年が必死に謝ると、騎士団長はさらに厳しい言葉をかけた。
「戦場に、君のような軟弱な騎士などいらない」
その言葉に青年の顔は真っ青になる。
「いいか、戦いとはそんな生易しいものではない。目の前で大切な仲間の命を守れないことが、どれほど辛いものか、分からないだろう……」
騎士団長はそう言って、青年に木剣を渡し、
「鍛練を続けろ」
と訓練場を出て行った。
青年が呆然としていると、周りの騎士たちは同情するかのように彼の肩を叩くのだった。
☆☆☆☆☆
(やっぱり素敵よね……!)
エドナは、近くの茂みから若い騎士団長の姿をうっとりとした目で追っていた。
彼の名前はウィリアム・オルスタイン公爵。
噂では年齢は25歳だそうだ。
普段は冷静沈着で、冷酷な印象すら与えるが、熱い情熱も持ち合わせている。
部下たちにも非常に慕われているようだ。
それに美しい金色の髪とアクアマリンのような瞳を持っていて、容姿も整っている。女性たちからの人気も高いのは頷ける。
婚約者を選びたいエドナにとっては、彼は理想の男性だ。
(ああ……わたしの運命の人かもね……)
ウィリアムは、たくさんの令嬢たちから求婚されているらしい。
けれども軍人の彼は貴族の社交の場には滅多に来ないし、婚約した話も聞かない。
エドナはその事実にますます彼に憧れを抱く。
(わたしにとってはウィリアム様のような、気品があって、使命感があるストイックな方が理想なのよね)
そんなことを思いながら、木陰から見ていると、ふと、ウィリアムと目が合ったように感じた。
でも一瞬のことで彼はそのまま違う方向を向いてしまったので、気のせいだったかもしれないと思い直す。
しかし、次の瞬間。
彼は自分のいる方を突然振り返った。
彼の視線は明らかにエドナを向いている。
(え……? 嘘……)
エドナは心臓が跳ね上がるのを感じた。
彼は鋭い目をこちらに向けたまま、こちらに近づいてくる。
「誰だ。隠れていないで出てこい」
(見つかってしまったわ……!)
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