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第38話 戦いの果てに
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魔族の上位種をベゼルが殺した。
そして、その隙に僕たちはあの空域を抜けることになったはずだ。
意識は少し前に覚醒していたが、ただ、体が動かない。
目を開くことができず、耳からも何の音も聞こえない。
ベゼルが話しかけてきた。
『時間経過から推測すると、どうやら、あの縄張りを抜けれたようだ』
「ベゼルさんには他の五人がどうなっているか分かりますか?」
『さあな。ただ、カルディ達の性質から、あの五人のうち誰かが死んだとしてもお前だけは護ろうとするだろう。俺はそれで十分だ』
「どういうことですか? あれほど力を出せるなら、何故最初に僕にそれを説明しなかったんですか?」
『あれは、おそらく一度限りの方法だ。お前が極限の状況で死を理解した時だけ、俺が表に出られる。お前に事前にそれを話せば、甘えが出て入れ替わることが出来ない』
カルディさん達が死ぬと何度も言っていたのはそれか。要は僕により危機感を与えるための方便だったわけだ。
「カルディさん達は無事ですか?」
『だから、分からないと言っているだろう。俺とお前は感覚を共有している。お前が分からないことは俺も分からない。ただ、これほど反動があるとは思わなかった。この体は弱すぎる』
「……」
カルディさん達は無事だろうか?
***********
僕の体の感覚が一気に戻った。
すぐに起き上がった。
が、何かに頭をぶつけた。
結界の中にいた。しかも随分と小さい結界だ。
周りを見る。五人ともいる。無事だ。
どこかの森の中の様だ。
結界の中の異変に気付く。結界の中の魔素濃度が異様に高い。
と、同時に空腹感を感じて直ぐに結界内の魔素を全て吸った。
それと同時にカルディさんが結界を解いた。
リーシャが僕に抱きついてきた。
リーシャは泣いていた。
しばらくリーシャの頭を撫でてやってから、カルディさんに話を聞くことにした。
「あの後どうなったんですか?」
「ああ、うまくあの縄張りを抜けられた。六時間ほど飛び続けたが、特に何も問題がなかった。その後、すぐに近くの森に下りて君の様子を見たが、既に意識が無かった。それと同時に君の体から魔力が漏れ出ていた。どうしたらいいか分からなかったが、おそらく魔力を逃がさない方がいいと判断して、君を結界内に封印した。そして、君が眠りについてから、今日で十日目だ」
「ああ、そういうことですか。良かった」
「それより、こっちが聞きたい。あの縄張りにいた魔族をどうした? 君はあの魔族と戦ったんじゃないのか?」
少し悩むが、こう返答することにした。
「ええ、闘いました。まぁ、その奥の手がありまして、それを使って勝つことが出来たんですが、ただ、その後意識を失う手でした。かなり危ない方法だったので、カルディさん達に見つけてもらって助かりました。ありがとうございます」
カルディさんは少し怒った表情をした。
「そこまで危険な方法なら、どうして最初に言ってくれなかったんだ? 皆心配していたんだぞ?」
そりゃ、僕もそれを言いたい……。
「いや、僕にも色々あったんですよ。まさか、最初の時点ではこんなことになるとは思ってもいませんでした。ただ、まぁ、結果的にあの空域を抜けられたし、皆無事だったし、勘弁してもらえませんか?」
「ああ……そうか、君はまだ疲れているのか。済まない。とりあえず休もう。いや、どこか近くの街を探そう。その方が良さそうだ」
カルディさんは僕の言葉で納得したようだ。
その後、僕はファードスさんに抱えられて次の街へまで運ばれた。
****************
僕は宿の一室に寝かされた。
体中が痛い。
ただ、この感覚が何なのかは分かる。
〝筋肉痛〟だ
体の筋肉は、もちろん元の僕の状態に戻っていた。
ベゼルが表に出て、筋肉が膨れ上がっていたが、その反動で今は体がおかしくなっているのだろう。特に下半身の痛みがヒドイ。少し動かすだけでも痛みが走る。上半身も痛いが、動かせない程ではない。
ただ、しばらくは寝ているしかないだろう。
ベゼルから〝魔石を食え〟と言われた。今の自分なら魔石を食べられるという話だった。
カルディさん達に魔石を食べたいと言うと、驚かれたが、カルディさん達は持っていたお金で買えるだけの魔石を買ってきてくれた。
魔石に関しては口に近づけるだけでは吸収できなかった。バリバリと噛み砕いて食べてみると、魔石の種類によって味が違った。緑色をした風の魔石が一番、個人的には美味しかった。しかし、魔石をかなり食べたが、正直、いくらも腹が膨れない。空腹感が続く。魔族が縄張りを持つ意味が分かる。
結局、魔力含有量の少ない魔核や魔石をいくら食べたところで腹など膨れる物じゃない。魔素濃度の高い地域へ行って、魔素を吸う以外には腹は膨れない。だから、魔族は縄張りを巡って生存競争をするのだろう。
僕とリーシャ、セリサ、ビルド、そして、その護衛としてカルディさんが宿に残り、ファードスさんが毎日、街の外へ出てモンスターの魔核を持ってきてくれた。
ただ、やはりこの魔核を食べてもいくらも腹が膨れない。それでも無いよりはマシだし、ファードスさんには感謝しないといけない。
**********
それから、また十日ほどして、やっと立てるようになった。
歩いてみるとまぁ、足の痛みはあるが動けないほどではない。
今はとにかく魔石か魔核がいる。寝ている時にベゼルからアドバイスを貰ったが、今の僕はおそらく中位種の上位近くだろうという事だった。
上位種を倒して魔核を食べれば上位種になれるはずだが、今回はそうではないとのことだった。進化する際の魔核の変化に、大量の魔力を消費するのを考慮しても、僕の体は普通と違うとベゼルは説明してきた。ただ、ベゼルはこれについて思い当たる節があるようだが、詳しく説明してくれなかった。ベゼルはこの体について僕に何か隠している気がする。
まぁ、それでも中位種の上位なら今後の旅はかなり楽になるはずだ。
僕の魔石のために、皆が持っていた金の大半を使ってしまっていた。
どうするべきか、という話になったが、僕とファードスさんでギルドの依頼を受けて、ダンジョンへ潜ることになった。残りのメンバーには待機してもらった。
今の自分とファードスさんならそれだけで相当の戦力だからだ。同時に僕は少しでも魔核等を食べて腹を張らせないとマズイ。今も空腹感が続いている。
毎日、ひたすらダンジョンに潜って、僕達はモンスターを倒していった。ダンジョンの核を食べれば、空腹感を満たせる可能性はあったが、それをするとダンジョンが死ぬ。地域の人のためにもダンジョンそのものを破壊するわけにはいかない。
ただ、あっという間にモンスターを狩ってしまうし、全部のモンスターを殺すと、ダンジョンの生態系が壊れるからやってはダメだとファードスさんに言われた。ギルドで仕事の依頼を受けて、地域で困っている人の手助けや、周辺にいる困ったモンスターの退治等も引き受けた。
皆で、三か所の街を移動していった。
しかし結局、僕のお腹が膨れることはなかった。一方、金はそれなりに溜まった。
そうして、六週間が過ぎていった。
***********
街を移動する間、リーシャ、セリサ、ビルド、カルディさん達とはあまり会話をしていなかった。
今の僕は睡眠時間がほとんど必要ない。寝る時間があるなら、少しでも動いて魔核や魔石を探したかった。何より、飢餓感が強いと、僕がどうなるか分からない面もあった。この世界に来て最初の一日目に腹を空かせた時、自分をうまく保てないような感覚があった。
もし、あのような感覚に襲われて、その場でリーシャ達を襲ってしまったら大変なことになる。ファードスさんにだけはこの話をしてあった。最悪、僕から逃げろ、と。
ただ、ここ最近、それなりに食べ続けた結果、空腹感は減っていた。満腹ではないが、当面問題を起こすことはないと思って、リーシャ達の下へ戻って会話することにした。
純粋羽翼種と夕食を食べながら会話する。
リーシャは心配そうに首を傾げながら、話しかけてきた。
「もう体は大丈夫なんですか?」
僕の体の心配をしてくれたようだ。ええ娘じゃ!
「うん。大丈夫な感じだね。心配してくれてありがとう」
そう言って笑うと、リーシャも笑い返してくれた。
「マサキさんの意識が戻らないから、どうしようかと思いました」
「ああ、ごめん、ごめん。まさか僕もあんなことになるとは思ってなかったんだよ」
いや、マジで。ベゼルの野郎、何しやがる。
すると、セリサも会話に入ってくる。
「私としても、マサキが居なくなったら、今後のパトロンはどうしようかと思って心配してたわ」
そう言って、真剣な表情で腕を組んでいる。
「おい! それ、冗談だよね!?」
思わず、ツッコむ。セリサなりの冗談だと思うが、セリサなら本気でそう思ってるんじゃないかと勘繰ってしてしまう。
ビルドが笑いながら話題を変えてきた。
「それより、おまえ、今は魔族の中位種になってんだよな?」
「うん。大体、それくらいの強さらしいんだよね」
「じゃあ、自分で空を飛べるのか? 俺達がお前を運ぶ必要はないのか?」
「いや、飛べることは飛べるけど、ビルド達みたいな速さで長時間飛ぶのはできないね。それに、僕が空を飛んで移動すると、魔力を消費することになる。万が一の場合に備えて、僕の魔力は温存して置いた方がいいだろう。パーティの安全面を考えると、今後の旅でも、僕はリーシャとセリサに運んでもらった方がいいだろうね」
この話は事実であるが、魔力を使い過ぎると、自我を保てなくなる可能性があることをビルド達には話さなかった。
話したくなかった。
自分が、皆から怖がられてしまうかもしれないと思うと、それを言う気にはなれなかった……。
ただ、カルディさんとファードスさんにはそれを伝えてある。最悪の事態は想定しておかねばいけない――。
ビルドがそれを聞いて、笑顔で話しかけてきた。
「まぁ、それなら、それでいいな。マサキが中位種になってるってことは、獣族の上位種並みだ。パーティの戦力が上がれば上がるほど、人族の国へ安全にたどり着ける可能性が高まる」
「うん。それはそうだ。以前に比べれば僕達の旅は安全になっているのは間違いないね。案外、簡単に人族の国へ辿り着けてしまうのかもしれない」
そんな感じで、皆との夕食を楽しんでいった。
そして、その隙に僕たちはあの空域を抜けることになったはずだ。
意識は少し前に覚醒していたが、ただ、体が動かない。
目を開くことができず、耳からも何の音も聞こえない。
ベゼルが話しかけてきた。
『時間経過から推測すると、どうやら、あの縄張りを抜けれたようだ』
「ベゼルさんには他の五人がどうなっているか分かりますか?」
『さあな。ただ、カルディ達の性質から、あの五人のうち誰かが死んだとしてもお前だけは護ろうとするだろう。俺はそれで十分だ』
「どういうことですか? あれほど力を出せるなら、何故最初に僕にそれを説明しなかったんですか?」
『あれは、おそらく一度限りの方法だ。お前が極限の状況で死を理解した時だけ、俺が表に出られる。お前に事前にそれを話せば、甘えが出て入れ替わることが出来ない』
カルディさん達が死ぬと何度も言っていたのはそれか。要は僕により危機感を与えるための方便だったわけだ。
「カルディさん達は無事ですか?」
『だから、分からないと言っているだろう。俺とお前は感覚を共有している。お前が分からないことは俺も分からない。ただ、これほど反動があるとは思わなかった。この体は弱すぎる』
「……」
カルディさん達は無事だろうか?
***********
僕の体の感覚が一気に戻った。
すぐに起き上がった。
が、何かに頭をぶつけた。
結界の中にいた。しかも随分と小さい結界だ。
周りを見る。五人ともいる。無事だ。
どこかの森の中の様だ。
結界の中の異変に気付く。結界の中の魔素濃度が異様に高い。
と、同時に空腹感を感じて直ぐに結界内の魔素を全て吸った。
それと同時にカルディさんが結界を解いた。
リーシャが僕に抱きついてきた。
リーシャは泣いていた。
しばらくリーシャの頭を撫でてやってから、カルディさんに話を聞くことにした。
「あの後どうなったんですか?」
「ああ、うまくあの縄張りを抜けられた。六時間ほど飛び続けたが、特に何も問題がなかった。その後、すぐに近くの森に下りて君の様子を見たが、既に意識が無かった。それと同時に君の体から魔力が漏れ出ていた。どうしたらいいか分からなかったが、おそらく魔力を逃がさない方がいいと判断して、君を結界内に封印した。そして、君が眠りについてから、今日で十日目だ」
「ああ、そういうことですか。良かった」
「それより、こっちが聞きたい。あの縄張りにいた魔族をどうした? 君はあの魔族と戦ったんじゃないのか?」
少し悩むが、こう返答することにした。
「ええ、闘いました。まぁ、その奥の手がありまして、それを使って勝つことが出来たんですが、ただ、その後意識を失う手でした。かなり危ない方法だったので、カルディさん達に見つけてもらって助かりました。ありがとうございます」
カルディさんは少し怒った表情をした。
「そこまで危険な方法なら、どうして最初に言ってくれなかったんだ? 皆心配していたんだぞ?」
そりゃ、僕もそれを言いたい……。
「いや、僕にも色々あったんですよ。まさか、最初の時点ではこんなことになるとは思ってもいませんでした。ただ、まぁ、結果的にあの空域を抜けられたし、皆無事だったし、勘弁してもらえませんか?」
「ああ……そうか、君はまだ疲れているのか。済まない。とりあえず休もう。いや、どこか近くの街を探そう。その方が良さそうだ」
カルディさんは僕の言葉で納得したようだ。
その後、僕はファードスさんに抱えられて次の街へまで運ばれた。
****************
僕は宿の一室に寝かされた。
体中が痛い。
ただ、この感覚が何なのかは分かる。
〝筋肉痛〟だ
体の筋肉は、もちろん元の僕の状態に戻っていた。
ベゼルが表に出て、筋肉が膨れ上がっていたが、その反動で今は体がおかしくなっているのだろう。特に下半身の痛みがヒドイ。少し動かすだけでも痛みが走る。上半身も痛いが、動かせない程ではない。
ただ、しばらくは寝ているしかないだろう。
ベゼルから〝魔石を食え〟と言われた。今の自分なら魔石を食べられるという話だった。
カルディさん達に魔石を食べたいと言うと、驚かれたが、カルディさん達は持っていたお金で買えるだけの魔石を買ってきてくれた。
魔石に関しては口に近づけるだけでは吸収できなかった。バリバリと噛み砕いて食べてみると、魔石の種類によって味が違った。緑色をした風の魔石が一番、個人的には美味しかった。しかし、魔石をかなり食べたが、正直、いくらも腹が膨れない。空腹感が続く。魔族が縄張りを持つ意味が分かる。
結局、魔力含有量の少ない魔核や魔石をいくら食べたところで腹など膨れる物じゃない。魔素濃度の高い地域へ行って、魔素を吸う以外には腹は膨れない。だから、魔族は縄張りを巡って生存競争をするのだろう。
僕とリーシャ、セリサ、ビルド、そして、その護衛としてカルディさんが宿に残り、ファードスさんが毎日、街の外へ出てモンスターの魔核を持ってきてくれた。
ただ、やはりこの魔核を食べてもいくらも腹が膨れない。それでも無いよりはマシだし、ファードスさんには感謝しないといけない。
**********
それから、また十日ほどして、やっと立てるようになった。
歩いてみるとまぁ、足の痛みはあるが動けないほどではない。
今はとにかく魔石か魔核がいる。寝ている時にベゼルからアドバイスを貰ったが、今の僕はおそらく中位種の上位近くだろうという事だった。
上位種を倒して魔核を食べれば上位種になれるはずだが、今回はそうではないとのことだった。進化する際の魔核の変化に、大量の魔力を消費するのを考慮しても、僕の体は普通と違うとベゼルは説明してきた。ただ、ベゼルはこれについて思い当たる節があるようだが、詳しく説明してくれなかった。ベゼルはこの体について僕に何か隠している気がする。
まぁ、それでも中位種の上位なら今後の旅はかなり楽になるはずだ。
僕の魔石のために、皆が持っていた金の大半を使ってしまっていた。
どうするべきか、という話になったが、僕とファードスさんでギルドの依頼を受けて、ダンジョンへ潜ることになった。残りのメンバーには待機してもらった。
今の自分とファードスさんならそれだけで相当の戦力だからだ。同時に僕は少しでも魔核等を食べて腹を張らせないとマズイ。今も空腹感が続いている。
毎日、ひたすらダンジョンに潜って、僕達はモンスターを倒していった。ダンジョンの核を食べれば、空腹感を満たせる可能性はあったが、それをするとダンジョンが死ぬ。地域の人のためにもダンジョンそのものを破壊するわけにはいかない。
ただ、あっという間にモンスターを狩ってしまうし、全部のモンスターを殺すと、ダンジョンの生態系が壊れるからやってはダメだとファードスさんに言われた。ギルドで仕事の依頼を受けて、地域で困っている人の手助けや、周辺にいる困ったモンスターの退治等も引き受けた。
皆で、三か所の街を移動していった。
しかし結局、僕のお腹が膨れることはなかった。一方、金はそれなりに溜まった。
そうして、六週間が過ぎていった。
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街を移動する間、リーシャ、セリサ、ビルド、カルディさん達とはあまり会話をしていなかった。
今の僕は睡眠時間がほとんど必要ない。寝る時間があるなら、少しでも動いて魔核や魔石を探したかった。何より、飢餓感が強いと、僕がどうなるか分からない面もあった。この世界に来て最初の一日目に腹を空かせた時、自分をうまく保てないような感覚があった。
もし、あのような感覚に襲われて、その場でリーシャ達を襲ってしまったら大変なことになる。ファードスさんにだけはこの話をしてあった。最悪、僕から逃げろ、と。
ただ、ここ最近、それなりに食べ続けた結果、空腹感は減っていた。満腹ではないが、当面問題を起こすことはないと思って、リーシャ達の下へ戻って会話することにした。
純粋羽翼種と夕食を食べながら会話する。
リーシャは心配そうに首を傾げながら、話しかけてきた。
「もう体は大丈夫なんですか?」
僕の体の心配をしてくれたようだ。ええ娘じゃ!
「うん。大丈夫な感じだね。心配してくれてありがとう」
そう言って笑うと、リーシャも笑い返してくれた。
「マサキさんの意識が戻らないから、どうしようかと思いました」
「ああ、ごめん、ごめん。まさか僕もあんなことになるとは思ってなかったんだよ」
いや、マジで。ベゼルの野郎、何しやがる。
すると、セリサも会話に入ってくる。
「私としても、マサキが居なくなったら、今後のパトロンはどうしようかと思って心配してたわ」
そう言って、真剣な表情で腕を組んでいる。
「おい! それ、冗談だよね!?」
思わず、ツッコむ。セリサなりの冗談だと思うが、セリサなら本気でそう思ってるんじゃないかと勘繰ってしてしまう。
ビルドが笑いながら話題を変えてきた。
「それより、おまえ、今は魔族の中位種になってんだよな?」
「うん。大体、それくらいの強さらしいんだよね」
「じゃあ、自分で空を飛べるのか? 俺達がお前を運ぶ必要はないのか?」
「いや、飛べることは飛べるけど、ビルド達みたいな速さで長時間飛ぶのはできないね。それに、僕が空を飛んで移動すると、魔力を消費することになる。万が一の場合に備えて、僕の魔力は温存して置いた方がいいだろう。パーティの安全面を考えると、今後の旅でも、僕はリーシャとセリサに運んでもらった方がいいだろうね」
この話は事実であるが、魔力を使い過ぎると、自我を保てなくなる可能性があることをビルド達には話さなかった。
話したくなかった。
自分が、皆から怖がられてしまうかもしれないと思うと、それを言う気にはなれなかった……。
ただ、カルディさんとファードスさんにはそれを伝えてある。最悪の事態は想定しておかねばいけない――。
ビルドがそれを聞いて、笑顔で話しかけてきた。
「まぁ、それなら、それでいいな。マサキが中位種になってるってことは、獣族の上位種並みだ。パーティの戦力が上がれば上がるほど、人族の国へ安全にたどり着ける可能性が高まる」
「うん。それはそうだ。以前に比べれば僕達の旅は安全になっているのは間違いないね。案外、簡単に人族の国へ辿り着けてしまうのかもしれない」
そんな感じで、皆との夕食を楽しんでいった。
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