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第9話 森での出会い
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翌日も走り続けた。
ベゼルは魔素濃度の高いところを目指せと言ったが、あえてこれに反対して、川沿い進んでいくことにした。
川の魔素濃度は低い。強いモンスターはいないらしい。
ならば、逆に云えば、何かしらの種族がこの川を飲用水として利用している可能性があると思った。
ベゼルは集落に行くのは嫌なのかもしれないが、個人的に誰かと会話をしたいという思いが強くなっていた。だから、その旨をベゼルに伝えて、それから川に沿って移動することにした。
ベゼルはそれほど反対することもなかった。どちらにしてもどこかで情報収集をする必要はあると言っていた。
ひたすら、川沿いに進んでいく。
モンスターは現れない。午前中はあっという間に過ぎ去ってしまった。
昼休みとばかりに、川沿いで休んでいるとベゼルが話しかけてきた。
『流石に移動するだけでは駄目だ。何かと闘え。夜間眠る意味がなくなってしまう』
「それもそうですね。じゃあ、少し川から離れてあの森に入ってみましょうか?」
そう言って、森の方向を見た。
休憩を終えて、森に向かって走っていく。
森の中に入ってしばらく経った時だった。
「誰か助けて下さい!! 誰かー!!」
また女性の悲鳴が聞こえてきた。
……。
「どうします?」
『一応行ってみろ。ただ、気配を消して近づけ。相手を見つけても、すぐに助けないで様子を見ろ』
妥当な判断だと思った。今回はいきなり助けるのではなくて、様子を見てからにすべきだろう。
気配を消して、音をあまり立てないように声のする方へ近づいて行った。
何か大きなものが動いているのが分かった。
というか、あれは昨日見たモンスタープラントじゃないだろうか。
そして、そのモンスタープラントの触手に捕まっている女性が一人いた。
しかも、背中には羽が生えている。天使のような羽だった。服は古代ローマの人達が来ていたような白い布を体に巻き付けたような感じで、髪はサラサラで長く、薄いピンク色だった。
見た感じ、女性の両手はモンスタープラントに捕まっており、そのまま縛られている感じだ。女性は風魔法を羽に使って、飛ぼうとしているようだが、羽にもモンスタープラントの触手が絡みついており、逃げられなくなってしまっていた。
「どう思います?」
ベゼルはこれに即答した。
『助けろ。あの捕まっている種族は草食種だ。肉食ではない。あの種は使えるかもしれない』
正直、助ける気があまり無かったので、びっくりしてしまった。
また、罠にハマるのかと思って警戒していたが、それどころではないらしい。
急いで助けねば。
その場でウインドスラッシュを一発放って、横から回り込んでいくことにした。
モンスタープラントはこちらに気づいたようで、こちらに触手を伸ばしてくる。
ただ、代わりに捕まっている人の方の触手の動きが止まるのが確認できる。
このモンスタープラントを倒すことは出来そうだが、ただ、今回は、救助を優先することにした。
走って距離を詰めながら、モンスタープラントの幹を狙って、ダッシュ斬りをした。
グチャっという感触がある。
防御力は低いと思った。
一発当てたが、幹が太すぎて致命傷にはなっていない。
また、こちらへ向かって触手が伸びてくる。
ただ、遅い。簡単に避けられる。避けると同時に、女性を捕まえている触手にウインドスラッシュを使う。
女性を捕まえている触手の半分以上を切断できたが、全部はカットできなかった。
またこちらへ向かって別の触手が伸びてくる。
それを避けて、ジャンプした。
そして、空中でもう一度ウインドウスラッシュを使って、女性を捕まえている触手を全て切り落とす。
空中で刀を鞘に納めて、それと同時に女性の方へ風魔法で移動して、落ちて来る女性を抱きかかえた。
その場で戦闘するのをこれ以上は避けて、女性を抱きかかえたまま森を抜けることにした。
人間では人を抱えたまま走ることは出来ないだろうが、今の体なら簡単だった。
森を抜ける。
森を抜けて、ここで女性を下ろそうかと思ったが、さっきまでいた川の方が、魔素濃度が低いことを思い出して、その場まで女性を運ぶことにした。
「川がこの近くにあります。そこまで移動します」
女性の返事を聞くこともなく、抱きかかえたまま川へ移動した。
川へ着いてから、女性を下ろしてやった。
女性は怪訝そうな顔をしている。
彼女の腕を見ると、モンスタープラントに掴まれていたせいで、手から出血していた。青く痣もできている。
それはそうだろう。
もしかすると羽にもダメージがあるのかもしれない。
彼女の服の一部もちぎれてしまっていた。
モンスタープラントが暴れたのだろう。
何故、女性がお礼を言わないのか不思議に思ったが、ここで気づいた。
そりゃそうだ。助けたのはいいが、半裸になりかかっている女性を抱きかかえて遠くまで運べば、そりゃ、不安にもなるか。
「大丈夫ですか? 僕はたまたま通りかかっただけで、別に何か変なことをするつもりはありません。僕はこの辺の地理に疎いのですが、ただ、この川は魔素濃度が低いという事で、モンスターは近寄らない可能性が高いそうです。ですが、あなたは僕に対して安心できない面もあるでしょうから、僕はすぐに退散しようと思います。ただ、その前に一つ教えてもらいたいことがあります。宜しいでしょうか?」
女性は不安そうな表情をしているが、縦に頷いた。
「僕は人族の国を目指しています。人族の国はここから遠いのでしょうか?」
「……人族の国ですか? それは随分と驚くことを仰いますね」
もう、この時点で嫌な予感がした。
「ここから人族の国ですと、世界のほぼ反対側になってしまいますが……」
『クソ、最悪だ』
ベゼルが頭の中で、そう吐き捨てた。
思わず、天を仰いでしまった。参ったなぁ。
自分が困った顔をしたからだろう、女性はこちらへ向かって話し始めた。
「助けていただいたのに、お礼も言わずに申し訳ありませんでした。あまりのことでしたので気が動転していました。命を救って頂いて、ありがとうございました」
そう言って、女性は頭を下げた。
「いえいえ、それはしょうがないでしょう。あんな場面は滅多にあるわけではないでしょうし。ここで、笑顔で対応できる方がおかしいと思います」
そう言って、女性のメンツを立ててやった。正直、助けたことより、これから先のことが憂鬱で、女性のことなどどうでも良くなってきていた。
さて、どうするか。しかし、もう少し女性から情報が欲しい。
「すみません。聞きたいことだけ聞いたら、すぐにこの場を離れるので、もう少し質問していいでしょうか?」
「あ、どうぞ……」
「人族の国へ行く移動手段はあるのでしょうか? また行くとしてどれくらいの日数がかかるのでしょうか?」
「人族の国へ行く移動手段、という表現の意味が分かりませんが、徒歩や風魔法で移動するとして、私たちの種族でも数年は掛かると思いますが……」
オワッタ。完全にオワッタ。
この女性を見る限り、羽が生えていて、おそらく飛行能力に長けているはずだ。にもかかわらず、それが数年とか、どうしたらええねん!!
正直、ここでベゼルと話をしたいが、ベゼルと話をしているところをこの女性に見られたくはないと思った。
どう考えても頭おかしい人としか思われないだろう。
腕組みをして、考え込んでしまった。
女性はどうしていいか、分からないような表情をしている。そして、女性から話しかけてきた。
「あなたはどういう種族の方なのでしょうか? そのぉ……見た感じ、まるで人族の様に見えるのですが……」
女性にそう聞かれたが意味が分からない。
「すみません。質問の意味が分かりません。その表現だと、大半の種族は見た目で判断できることになってしまいますよね? どういうことでしょうか?」
質問返しをしたが、女性は首を傾げている。あれ、僕はなんか変なことを言ったのか?
『この世界の獣族の大半は見た目に何かしらの特徴がある。お前が初めて会った猫っぽい奴や、こいつみたいに羽があるタイプもそうだ。お前には何の特徴もないからこの女は不思議に思っているのだろう』
ああ、そういうことか。
なるほど、だが、ここで悩みが生じる。人族と言うべきか、魔族と言うべきか。
……。
人族ってことにしよう。
「ああ、すみませんでした。僕が勘違いしていました。僕は人族です。それで故郷の場所を探しているのです」
女性はこちらを見ている。何を考えているのか分からない。
もうここから離れるべきか……。
「人族の国を探しているという事ですが、一応、私たちの国へ来れば簡単な地図がないわけではありません。ただ、あまりにも大まかすぎるのと、随分と昔に作られた世界地図なので今もその通りかは分かりませんが」
話を聞いていると、地図自体が当てにならない可能性も結構高いが、それでも無いよりはマシだろう。出来れば手に入れたい。
「すみません。実は僕はお金も持っていないのですが、その地図を入手することは可能でしょうか?」
「あ、大丈夫ですよ。命を助けて戴いたお礼に、私がその地図を差し上げます」
おお、助かるぞ!!
「是非、お願いします」
笑顔でそう返答してしまった。
ベゼルは魔素濃度の高いところを目指せと言ったが、あえてこれに反対して、川沿い進んでいくことにした。
川の魔素濃度は低い。強いモンスターはいないらしい。
ならば、逆に云えば、何かしらの種族がこの川を飲用水として利用している可能性があると思った。
ベゼルは集落に行くのは嫌なのかもしれないが、個人的に誰かと会話をしたいという思いが強くなっていた。だから、その旨をベゼルに伝えて、それから川に沿って移動することにした。
ベゼルはそれほど反対することもなかった。どちらにしてもどこかで情報収集をする必要はあると言っていた。
ひたすら、川沿いに進んでいく。
モンスターは現れない。午前中はあっという間に過ぎ去ってしまった。
昼休みとばかりに、川沿いで休んでいるとベゼルが話しかけてきた。
『流石に移動するだけでは駄目だ。何かと闘え。夜間眠る意味がなくなってしまう』
「それもそうですね。じゃあ、少し川から離れてあの森に入ってみましょうか?」
そう言って、森の方向を見た。
休憩を終えて、森に向かって走っていく。
森の中に入ってしばらく経った時だった。
「誰か助けて下さい!! 誰かー!!」
また女性の悲鳴が聞こえてきた。
……。
「どうします?」
『一応行ってみろ。ただ、気配を消して近づけ。相手を見つけても、すぐに助けないで様子を見ろ』
妥当な判断だと思った。今回はいきなり助けるのではなくて、様子を見てからにすべきだろう。
気配を消して、音をあまり立てないように声のする方へ近づいて行った。
何か大きなものが動いているのが分かった。
というか、あれは昨日見たモンスタープラントじゃないだろうか。
そして、そのモンスタープラントの触手に捕まっている女性が一人いた。
しかも、背中には羽が生えている。天使のような羽だった。服は古代ローマの人達が来ていたような白い布を体に巻き付けたような感じで、髪はサラサラで長く、薄いピンク色だった。
見た感じ、女性の両手はモンスタープラントに捕まっており、そのまま縛られている感じだ。女性は風魔法を羽に使って、飛ぼうとしているようだが、羽にもモンスタープラントの触手が絡みついており、逃げられなくなってしまっていた。
「どう思います?」
ベゼルはこれに即答した。
『助けろ。あの捕まっている種族は草食種だ。肉食ではない。あの種は使えるかもしれない』
正直、助ける気があまり無かったので、びっくりしてしまった。
また、罠にハマるのかと思って警戒していたが、それどころではないらしい。
急いで助けねば。
その場でウインドスラッシュを一発放って、横から回り込んでいくことにした。
モンスタープラントはこちらに気づいたようで、こちらに触手を伸ばしてくる。
ただ、代わりに捕まっている人の方の触手の動きが止まるのが確認できる。
このモンスタープラントを倒すことは出来そうだが、ただ、今回は、救助を優先することにした。
走って距離を詰めながら、モンスタープラントの幹を狙って、ダッシュ斬りをした。
グチャっという感触がある。
防御力は低いと思った。
一発当てたが、幹が太すぎて致命傷にはなっていない。
また、こちらへ向かって触手が伸びてくる。
ただ、遅い。簡単に避けられる。避けると同時に、女性を捕まえている触手にウインドスラッシュを使う。
女性を捕まえている触手の半分以上を切断できたが、全部はカットできなかった。
またこちらへ向かって別の触手が伸びてくる。
それを避けて、ジャンプした。
そして、空中でもう一度ウインドウスラッシュを使って、女性を捕まえている触手を全て切り落とす。
空中で刀を鞘に納めて、それと同時に女性の方へ風魔法で移動して、落ちて来る女性を抱きかかえた。
その場で戦闘するのをこれ以上は避けて、女性を抱きかかえたまま森を抜けることにした。
人間では人を抱えたまま走ることは出来ないだろうが、今の体なら簡単だった。
森を抜ける。
森を抜けて、ここで女性を下ろそうかと思ったが、さっきまでいた川の方が、魔素濃度が低いことを思い出して、その場まで女性を運ぶことにした。
「川がこの近くにあります。そこまで移動します」
女性の返事を聞くこともなく、抱きかかえたまま川へ移動した。
川へ着いてから、女性を下ろしてやった。
女性は怪訝そうな顔をしている。
彼女の腕を見ると、モンスタープラントに掴まれていたせいで、手から出血していた。青く痣もできている。
それはそうだろう。
もしかすると羽にもダメージがあるのかもしれない。
彼女の服の一部もちぎれてしまっていた。
モンスタープラントが暴れたのだろう。
何故、女性がお礼を言わないのか不思議に思ったが、ここで気づいた。
そりゃそうだ。助けたのはいいが、半裸になりかかっている女性を抱きかかえて遠くまで運べば、そりゃ、不安にもなるか。
「大丈夫ですか? 僕はたまたま通りかかっただけで、別に何か変なことをするつもりはありません。僕はこの辺の地理に疎いのですが、ただ、この川は魔素濃度が低いという事で、モンスターは近寄らない可能性が高いそうです。ですが、あなたは僕に対して安心できない面もあるでしょうから、僕はすぐに退散しようと思います。ただ、その前に一つ教えてもらいたいことがあります。宜しいでしょうか?」
女性は不安そうな表情をしているが、縦に頷いた。
「僕は人族の国を目指しています。人族の国はここから遠いのでしょうか?」
「……人族の国ですか? それは随分と驚くことを仰いますね」
もう、この時点で嫌な予感がした。
「ここから人族の国ですと、世界のほぼ反対側になってしまいますが……」
『クソ、最悪だ』
ベゼルが頭の中で、そう吐き捨てた。
思わず、天を仰いでしまった。参ったなぁ。
自分が困った顔をしたからだろう、女性はこちらへ向かって話し始めた。
「助けていただいたのに、お礼も言わずに申し訳ありませんでした。あまりのことでしたので気が動転していました。命を救って頂いて、ありがとうございました」
そう言って、女性は頭を下げた。
「いえいえ、それはしょうがないでしょう。あんな場面は滅多にあるわけではないでしょうし。ここで、笑顔で対応できる方がおかしいと思います」
そう言って、女性のメンツを立ててやった。正直、助けたことより、これから先のことが憂鬱で、女性のことなどどうでも良くなってきていた。
さて、どうするか。しかし、もう少し女性から情報が欲しい。
「すみません。聞きたいことだけ聞いたら、すぐにこの場を離れるので、もう少し質問していいでしょうか?」
「あ、どうぞ……」
「人族の国へ行く移動手段はあるのでしょうか? また行くとしてどれくらいの日数がかかるのでしょうか?」
「人族の国へ行く移動手段、という表現の意味が分かりませんが、徒歩や風魔法で移動するとして、私たちの種族でも数年は掛かると思いますが……」
オワッタ。完全にオワッタ。
この女性を見る限り、羽が生えていて、おそらく飛行能力に長けているはずだ。にもかかわらず、それが数年とか、どうしたらええねん!!
正直、ここでベゼルと話をしたいが、ベゼルと話をしているところをこの女性に見られたくはないと思った。
どう考えても頭おかしい人としか思われないだろう。
腕組みをして、考え込んでしまった。
女性はどうしていいか、分からないような表情をしている。そして、女性から話しかけてきた。
「あなたはどういう種族の方なのでしょうか? そのぉ……見た感じ、まるで人族の様に見えるのですが……」
女性にそう聞かれたが意味が分からない。
「すみません。質問の意味が分かりません。その表現だと、大半の種族は見た目で判断できることになってしまいますよね? どういうことでしょうか?」
質問返しをしたが、女性は首を傾げている。あれ、僕はなんか変なことを言ったのか?
『この世界の獣族の大半は見た目に何かしらの特徴がある。お前が初めて会った猫っぽい奴や、こいつみたいに羽があるタイプもそうだ。お前には何の特徴もないからこの女は不思議に思っているのだろう』
ああ、そういうことか。
なるほど、だが、ここで悩みが生じる。人族と言うべきか、魔族と言うべきか。
……。
人族ってことにしよう。
「ああ、すみませんでした。僕が勘違いしていました。僕は人族です。それで故郷の場所を探しているのです」
女性はこちらを見ている。何を考えているのか分からない。
もうここから離れるべきか……。
「人族の国を探しているという事ですが、一応、私たちの国へ来れば簡単な地図がないわけではありません。ただ、あまりにも大まかすぎるのと、随分と昔に作られた世界地図なので今もその通りかは分かりませんが」
話を聞いていると、地図自体が当てにならない可能性も結構高いが、それでも無いよりはマシだろう。出来れば手に入れたい。
「すみません。実は僕はお金も持っていないのですが、その地図を入手することは可能でしょうか?」
「あ、大丈夫ですよ。命を助けて戴いたお礼に、私がその地図を差し上げます」
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