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第6話 森での悲鳴
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女性の悲鳴が聞こえる。
「どうします? 誰かの悲鳴ですよ!?」
『放っておけ。自分の身を守れない奴が悪い。こんな森に入るなら、それなりの覚悟はして来ているだろう。死なせてやれ』
いや、そりゃそうかもしれないけど……。
「流石にそれはどうかと思うんですが」
『行くな。俺の経験上、これはおそらく良くない』
たしかに自己保身の点から考えれば、ベゼルの言う通りだ。
が、誰か困っている人がいるなら助けてやりたい。
それに、正直、誰でもいいから会話をしたい。
この世界に来てから、頭の中の人としか喋れないとか、もう嫌なんですけど……。
そう思って、悲鳴の方向へ向かうことにした。
地面は危険な感じがするので、木の上の枝をピョンピョン飛び跳ねていく。
『おい、よせ。多分、どっちにしてもこれは良くない』
ベゼルの言うことを無視して、移動する。
声のする方を目指すが、結構遠い。
なんでこんなに遠くまで悲鳴が聞こえるのだろうと不思議に思いながら、声の先を目指すと、二十メートルくらい先に魔力の気配を感じ始めた。
急いでそこを目指す。ベゼルが何か言っているが無視する。
そして、上から様子を窺う。すると、女性とイノシシが対峙していた。
ただ、女性の見た目がおかしい。
というか頭に耳が生えている。世に言う猫耳だ。
この世界にはこんな種族がいるのか。
イノシシは女性を襲おうとしている。
僕は咄嗟に近くの木の枝を引きちぎって、投げた。
イノシシがそれに反応する。
と、同時に木の幹を蹴って、イノシシにダッシュ切りをした。
イノシシの首を斬り落とすことで、簡単に倒せた。
「大丈夫ですか?」
そう言って、女性に近づいていく。女性は驚いたような顔をしていた。
「あ、ありがとうございます。まさか助かるとは思いませんでした」
「いえいえ、間に合ってよかったですよ」
他人を助けたという達成感が自分の中で湧いてくる。
気持ちがいいものだ。
しかし、それより聞きたかったことを聞く。
「どうして、こんな森にいたのですか? それにできれば教えて頂きたいんですが、この森の出口はどこにあるのでしょうか?」
「この森にいたのは、森の中にある薬草を手に入れるためです。いつも通っているのですが、まさかワイルドボアに襲われるとは思いませんでした。森の出口なら、もうすぐそこですよ」
そう言って、女性は指を差した。
その方向を見ると、確かに森の終わりなのだろう。遠くが明るい草原の様になっている感じがした。
「ああ、助かりました。森の出口が分からなくて困っていたんですよ」
思わず、安堵の声が出てきた。
「それは良かったです。それよりもこれから私たちの村へ来ませんか? すぐそこです。そこなら多少、面白いものがあるかもしれませんよ?」
そう言って、女性は僕が倒したイノシシを片手で掴んで持ち上げた。
結構力があるな……。
「ええ、興味があります。是非、その村へ案内してもらいたいです。宜しくお願いします」
そう言った瞬間だった。ベゼルが頭の中で大きい声を上げた。
『ダメだ! こいつから逃げろ。こいつに付いていくと殺されるぞ』
思わず、足が止まった。
『この女はおかしい。普通なら最初に〝なぜこんな森にいるの?〟と聞きいてくるはずだ。お前がその女に質問したように。それに、あの蛇やトカゲがいた場所から、この場所まで、距離にして数十メートルしかない。こいつが本当にいつもこの森を利用しているとして、無防備で森に入るのはおかしい。あと、この森は今まで俺達が見てきた中では、岩に木が生えているだけだ。薬草が本当にあるのか怪しい』
ベゼルの話は女性には聞こえていない。
しかし、女性は自分が足を止めたのを不思議に思ったのだろう。
女性がこちらを見る。
「どうしたんですか? 村はすぐそこですよ?」
僕は女性を見つめながら、質問することにした。
「一つ伺いたいんですが、最初にあなたが悲鳴を上げてから、僕が到着するまでに数十秒、時間が掛かっていますよね? その間、どうやってそのイノシシから逃げていたのですか? そのイノシシは動きが結構早かったはずなのですが……」
女性はキョトンとした顔をしている。
「それに、そのイノシシは結構重量がありますよね? あなたの腕は細いですが、そんなに簡単に持ち上げられるものなのでしょうか?」
女性はイノシシに視線を数秒移し、それからこちらを見据えた。
そして、次の瞬間、女はこちらへイノシシをぶん投げてきた。
慌てて避けて、態勢を整えて女の方を見る。
すると、女性はクスっと笑って逃げて行ってしまった。
手の先の爪が長く伸びている。隠していたのか。
かなり早い速さで森の出口へ行ってしまった。
もう追いつけない。
「……ベゼルさん、助かりました」
『あれは、肉食性の獣族だな。なんで、あの場で悲鳴を上げた理由は分からないが、あの女について行ったら、多分殺されていた』
「この世界はあんな人しかいないんでしょうか?」
『そうだな。大半はこんな感じだ。というか普通の生態系というのはそういうものだ。魔族だって、お互い殺し合う。自分さえ生き残れればいい』
……なんかつれぇ。リアルゲーム世界だけど、もう少し、ハートフルなイベント来てくれよ……。
「これから、どうします?」
『あの女が向かった方角へ行け。どっちにしてもこの森から抜ける必要はある。普通に考えれば、この先にあの女の種族の村があるとしても、森の入口の目の前には集落を作らないだろう。危険すぎるからだ。この先はおそらく開けた場所のはずだ。森の入口を出て、どこか別の場所を目指せばいい』
ベゼルの言われた通りにしようと思うが、その前にイノシシを食べていくことにする。
イノシシに近づくことで、ある事に気づいた。
このイノシシは自分がダメージを与える前に、〝既に〟攻撃を受けていたようだ。
足の一本が損傷している。おそらくあの女だ。
理由は分からないが、弱ったイノシシを地面に置いて、そこで悲鳴を上げたようだ。
そして、自分はそこに誘い出されたようだ。
何の目的があったのだろう?
不思議に思いながら、イノシシを細切れにして一瞬で食べた。
栄養補給はしておかないと。
それから、女が走っていった方角へ向かう。
自分も森の外へ出なければいけない。
「どうします? 誰かの悲鳴ですよ!?」
『放っておけ。自分の身を守れない奴が悪い。こんな森に入るなら、それなりの覚悟はして来ているだろう。死なせてやれ』
いや、そりゃそうかもしれないけど……。
「流石にそれはどうかと思うんですが」
『行くな。俺の経験上、これはおそらく良くない』
たしかに自己保身の点から考えれば、ベゼルの言う通りだ。
が、誰か困っている人がいるなら助けてやりたい。
それに、正直、誰でもいいから会話をしたい。
この世界に来てから、頭の中の人としか喋れないとか、もう嫌なんですけど……。
そう思って、悲鳴の方向へ向かうことにした。
地面は危険な感じがするので、木の上の枝をピョンピョン飛び跳ねていく。
『おい、よせ。多分、どっちにしてもこれは良くない』
ベゼルの言うことを無視して、移動する。
声のする方を目指すが、結構遠い。
なんでこんなに遠くまで悲鳴が聞こえるのだろうと不思議に思いながら、声の先を目指すと、二十メートルくらい先に魔力の気配を感じ始めた。
急いでそこを目指す。ベゼルが何か言っているが無視する。
そして、上から様子を窺う。すると、女性とイノシシが対峙していた。
ただ、女性の見た目がおかしい。
というか頭に耳が生えている。世に言う猫耳だ。
この世界にはこんな種族がいるのか。
イノシシは女性を襲おうとしている。
僕は咄嗟に近くの木の枝を引きちぎって、投げた。
イノシシがそれに反応する。
と、同時に木の幹を蹴って、イノシシにダッシュ切りをした。
イノシシの首を斬り落とすことで、簡単に倒せた。
「大丈夫ですか?」
そう言って、女性に近づいていく。女性は驚いたような顔をしていた。
「あ、ありがとうございます。まさか助かるとは思いませんでした」
「いえいえ、間に合ってよかったですよ」
他人を助けたという達成感が自分の中で湧いてくる。
気持ちがいいものだ。
しかし、それより聞きたかったことを聞く。
「どうして、こんな森にいたのですか? それにできれば教えて頂きたいんですが、この森の出口はどこにあるのでしょうか?」
「この森にいたのは、森の中にある薬草を手に入れるためです。いつも通っているのですが、まさかワイルドボアに襲われるとは思いませんでした。森の出口なら、もうすぐそこですよ」
そう言って、女性は指を差した。
その方向を見ると、確かに森の終わりなのだろう。遠くが明るい草原の様になっている感じがした。
「ああ、助かりました。森の出口が分からなくて困っていたんですよ」
思わず、安堵の声が出てきた。
「それは良かったです。それよりもこれから私たちの村へ来ませんか? すぐそこです。そこなら多少、面白いものがあるかもしれませんよ?」
そう言って、女性は僕が倒したイノシシを片手で掴んで持ち上げた。
結構力があるな……。
「ええ、興味があります。是非、その村へ案内してもらいたいです。宜しくお願いします」
そう言った瞬間だった。ベゼルが頭の中で大きい声を上げた。
『ダメだ! こいつから逃げろ。こいつに付いていくと殺されるぞ』
思わず、足が止まった。
『この女はおかしい。普通なら最初に〝なぜこんな森にいるの?〟と聞きいてくるはずだ。お前がその女に質問したように。それに、あの蛇やトカゲがいた場所から、この場所まで、距離にして数十メートルしかない。こいつが本当にいつもこの森を利用しているとして、無防備で森に入るのはおかしい。あと、この森は今まで俺達が見てきた中では、岩に木が生えているだけだ。薬草が本当にあるのか怪しい』
ベゼルの話は女性には聞こえていない。
しかし、女性は自分が足を止めたのを不思議に思ったのだろう。
女性がこちらを見る。
「どうしたんですか? 村はすぐそこですよ?」
僕は女性を見つめながら、質問することにした。
「一つ伺いたいんですが、最初にあなたが悲鳴を上げてから、僕が到着するまでに数十秒、時間が掛かっていますよね? その間、どうやってそのイノシシから逃げていたのですか? そのイノシシは動きが結構早かったはずなのですが……」
女性はキョトンとした顔をしている。
「それに、そのイノシシは結構重量がありますよね? あなたの腕は細いですが、そんなに簡単に持ち上げられるものなのでしょうか?」
女性はイノシシに視線を数秒移し、それからこちらを見据えた。
そして、次の瞬間、女はこちらへイノシシをぶん投げてきた。
慌てて避けて、態勢を整えて女の方を見る。
すると、女性はクスっと笑って逃げて行ってしまった。
手の先の爪が長く伸びている。隠していたのか。
かなり早い速さで森の出口へ行ってしまった。
もう追いつけない。
「……ベゼルさん、助かりました」
『あれは、肉食性の獣族だな。なんで、あの場で悲鳴を上げた理由は分からないが、あの女について行ったら、多分殺されていた』
「この世界はあんな人しかいないんでしょうか?」
『そうだな。大半はこんな感じだ。というか普通の生態系というのはそういうものだ。魔族だって、お互い殺し合う。自分さえ生き残れればいい』
……なんかつれぇ。リアルゲーム世界だけど、もう少し、ハートフルなイベント来てくれよ……。
「これから、どうします?」
『あの女が向かった方角へ行け。どっちにしてもこの森から抜ける必要はある。普通に考えれば、この先にあの女の種族の村があるとしても、森の入口の目の前には集落を作らないだろう。危険すぎるからだ。この先はおそらく開けた場所のはずだ。森の入口を出て、どこか別の場所を目指せばいい』
ベゼルの言われた通りにしようと思うが、その前にイノシシを食べていくことにする。
イノシシに近づくことで、ある事に気づいた。
このイノシシは自分がダメージを与える前に、〝既に〟攻撃を受けていたようだ。
足の一本が損傷している。おそらくあの女だ。
理由は分からないが、弱ったイノシシを地面に置いて、そこで悲鳴を上げたようだ。
そして、自分はそこに誘い出されたようだ。
何の目的があったのだろう?
不思議に思いながら、イノシシを細切れにして一瞬で食べた。
栄養補給はしておかないと。
それから、女が走っていった方角へ向かう。
自分も森の外へ出なければいけない。
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