先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村

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第五章

第120話 美少女後輩マネージャーは親友に忠告される

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 香奈かなが改札を抜けると、すでにあかりの姿があった。

「久しぶりー」
「よっすー」

 並んで歩き出す。店は事前に決めて予約していた。カラオケだ。

「その服、もしかしてさっきまでのデートで買ったやつ?」
「あっ、わかっちゃった?」

 香奈はニヤリと笑って服の裾をつまんだ。

「いいでしょ~」
「可愛い。よく似合ってるよ」
「えへへ、ありがとう!」

 香奈がはにかむと、あかりがふっと頬を緩めた。

「どうだったの? お忍びデートは」
「緊張感はあったけど、それはそれでいいスパイスになってめっちゃ楽しかったよ」

 香奈は嬉々としてデートの詳細を話して聞かせた。

「オシャレしたら超格好良かったし……もう最高でした」
「楽しんだようで何よりだけどさ、香奈」
「何?」
「話聞いてて思ったんだけど、あんたら本気で交際隠す気あるの?」
「……えっ?」

 香奈はまじまじとあかりの顔を見た。表情は険しかった。

「そんだけイチャイチャしてたら、見る人が見ればすぐにわかったんじゃない? リスクのほうが大きいって考えてるから付き合ってることは秘密にしてるんでしょ? なら、もう少し慎重に行動したほうがいいと思うけど」
「……たしかに」

 香奈はしみじみとうなずいた。
 あかりに指摘されて頭が冷えた。

(浮かれてリスク管理がだいぶ甘くなっちゃってたな……)

 香奈は反省した。
 そうだ。その場を楽しむだけではなく、後先を考えて行動しなければ。

「……ごめん。楽しい気分に水差しちゃって」

 あかりが視線を落とした。

「ううん、全然。むしろありがとう、指摘してくれて」
「でも、香奈もいろいろと大変だっただろうし、そういうはっちゃけられる時間は必要だったと思うよ」
「まあね」

 香奈がまことに絡まれている話は学校中に広まっていた。
 あかりは騒動の最中も、香奈のことを心配して励ましの言葉を送ってくれていた。

 香奈が同意したところで、ちょうどカラオケ店に到着した。部屋に入って向かい合わせに腰を下ろす。

「解決したの?」
「うん。大体は」
「ならよかったけどさ……香奈さんや」

 あかりがローテーブルに両手で頬杖をついて身を乗り出し、不満そうな表情を浮かべた。

「もう少し相談してくれてもよかったんじゃない?」
「ごめん。迷惑かかると思ってた」
「そんなことないよ」

 あかりが語気を強めた。

「香奈からの相談を迷惑なんて思うことない」
「うん。今回の一件を通して、一人で抱え込むほうがダメだって理解したよ。ごめんね、心配かけちゃって」
「まあ、わかったならいいけど……」

 あかりが不満の色を残しつつも、一応は納得した様子を見せた。

如月きさらぎ先輩にはちゃんと相談してたの?」
「一応してたけど……まだ強がっちゃってたかな」
「あんまり良くなかったんじゃない? 好きには人には多分、そういう弱さとかも含めて本音で話してほしいだろうし」
「うん。マジでそうだね」

 香奈も巧が一人で我慢してたら寂しく感じるし、どうして相談してくれなかったのだと不満やいきどおりを覚えるだろう。
 ちょうど、先程までのあかりのように。

「まあ、とりあえず一段落したみたいでよかったよ」

 あかりがホッとした表情を浮かべた。

「そんじゃ、解決祝いで歌いますか」
「うんっ」

 本気で心配してくれていたことが嬉しくて、香奈はデンモクを取ろうとしているあかりの背中に抱きついた。

「ありがとう、あかり!」
「おっとっと……あれ、またおっぱい大きくなった?」
「ひゃあ⁉︎」

 振り向きざまに胸を揉まれ、香奈は悲鳴をあげた。

「可愛い声出すじゃん。如月先輩にでも揉まれた?」
「っ……」

 香奈は頬に熱が集まるのを自覚した。
 ニヤニヤ笑っていたあかりが真顔になる。

「……えっ、ホントに?」
「……うん」

 あかりがうわぁ、と手のひらで口元を覆った。

「なんかショックだな……あれだけヘタレで口だけスケベだった香奈が——」
「う、うるさいっ、あかりのばかぁ!」

 香奈はソファーに飛び込んでうつ伏せになった。
 あかりがその背中に乗り、抱きしめるようにして香奈の顔を覗き込む。

「どこまで進んだの? 胸揉まれたってことは、もうヤった?」
「い、言わないよっ、そんなこと!」
「えー、いいじゃん。私が背中押してあげなかったらまだキスすらもできてなかったかもしれないんだよ?」
「うっ……それはそうだけど」
「ねっ? いいじゃん。私、口は固いよ?」

 あかりはおどけているが、彼女の口が固いのは事実だ。
 香奈は顔を伏せたまま答えた。

「ほ、本番はまだだけど……いわゆるBはした」
「おー、やるねぇ」

 あかりがパチパチと拍手をした。
 聞きたいことを聞けて満足したのか、彼女は香奈から離れた。香奈も起き上がった。

「どうだった?」
「な、何が?」
「如月先輩だよ。意外とああいう人がすごいモノ持ってるみたいなノリあるけど」
「し、知らないよ! 他の人のなんて見たことないしっ」

 これまで彼氏ができたこともなく、AVでも女性同士モノしか見ない香奈に、他の男のソレを見る機会などそうそうなかった。

「それはそうか。でも、そこまでいっておいてよく二人とも我慢できたね」
「まあほら、そこら辺は段階もあるしさ」

 あかりがじっと香奈の顔を見つめた。

「……もしかして本番渋った?」
「えっ」

 図星だった。香奈は動揺してしまった。
 やっぱり、とあかりが笑った。

「……何でわかったの?」
「ちょっと申し訳なさそうだったから。やっぱり怖かった?」
「うん……」

 香奈は気まずさから視線を逸らした。

「それ、ちゃんと話した?」
「うん、話したよ。巧先輩もわかってくれた」
「よろしい。ちゃんと反省を活かしてるね」
「偉いでしょ?」
「偉い偉い」

 あかりがヨシヨシと香奈の頭を撫でる。
 手を乗せたまま顔を覗き込んで、

「彼氏だけじゃなくて親友にもそうしてね」
「わかってるよ。ありがとう、あかり」
「どういたしまして」

 あかりが優しげに笑った後、一転してニヤリと悪い笑みになった。香奈は嫌な予感を覚えた。
 携帯を操作し、画面を見せてくる。カフェのメニューだった。

「ねえ、ここ行ってみたくない?」
「……謝意としてなんでも奢らせていただきたいと存じますが、希望はあるかこのやろう」
「最後まで貫き通しなよ」

 あかりがカラカラと笑った。

「大丈夫。前ほど高いのは頼まないから」
「ちっくしょう~……!」

 香奈は悪態こそ吐いたが、機嫌を損ねているわけではなかった。
 香奈が変に恩義を感じてしまわないようにするためのあかりなりの気遣いであると、わかっていたからだ。

 これでチャラだよ、とは言葉にしなくても通じていた。だからこそ毎回拒否しないのだ。
 本当に嫌なことは嫌と言っても大丈夫。それだけの関係性は築けていると香奈は自信を持っていた。

 もちろん、自分が何かしてあげたなら遠慮せずに奢られるつもりだ。

(でも、あかりって基本的にしっかり者だからなー。全然頼ったり弱音吐いてくるイメージが浮かばないや)

「あかりさんや、何か困ったことはないかい?」
「奢り返されようとすんな」

 あかりが香奈の首に手を回し、頬をぷにぷにとつまんだ。
 二人は顔を見合わせ、同時に笑い声を上げた。
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