先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村

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第四章

第98話 「初めて」のお家訪問

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 香奈かなから「準備万端です!」というメッセージを受け取った瞬間、たくみは家を出て白雪しらゆき家に向かった。
 向かったと言っても、ただエレベーターで一階上がるだけだが。

 すでに何回か訪れてはいるが、のは初めてだ。
 巧は初回よりも緊張しているのを自覚しながらインターホンを押した。

『今開けまーす!』

 機械越しに元気な声が聞こえた。パタパタと足音が近づいてくる。

「巧先輩、いらっしゃいです!」
「っ……!」

 満面の笑みとともに出迎えた香奈を見て、巧は息を詰めた。
 ショートパンツにオフショルダーのヘソ出しという、これまでで一番露出の多い格好だったからだ。

 スラっと伸びつつも程よく肉のついている太ももやふくらはぎ。丸みを帯びた大きなお尻ときゅっと引きしまったウエストのコントラスト。
 わずかに腹筋が浮き出ているお腹と縦に長いおへそ。丸みを帯びて触らなくてもスベスベした感触を想像できるむき出しの肩。

 それらだけでも男の本能を刺激するには十分すぎる者だったが、晒されている部分だけが官能的なわけではない。
 少しぴちぴちの素材のトップスであるため、その豊満な胸部も声高に存在感を主張していた。

「巧先輩、どうしました?」
「い、いや、なんでもないよ。お邪魔します」
「はーい! どうぞどうぞ」

 香奈が無邪気な笑みで家の中を示す。
 動揺したことには気づいていないようだ。巧は安堵した。

 廊下を通り抜けてリビングに足を踏み入れたところで、肩を叩かれた。
 意識はしていても、巧の視線はどうしても胸やおへそに吸い寄せられてしまう。慌てて顔に視線を戻しながら、

「どうしたの?」
「今日の私の格好、どうですか?」
「っ……」

 香奈は腰に手を添えながらニヤニヤ笑っていた。
 巧は、自分の動揺が悟られていたことを理解した。

「……可愛いよ、もちろん」

 視線を逸らしてそっけなく答えれば、背後でクスっと笑う気配がした。

(……恥ずかしすぎる)

 巧の頬に熱が集まった。
 それ以上、香奈に揶揄う気はなかったようで、

「えへへ~、ありがとうございます! それじゃあ、ゲームしましょっか」
「ダメだよ。まずは勉強する約束だったでしょ」
「むむ……相変わらずストイックですね」
「だってこれからはさらに忙しくなるからある程度は予習しておくべきだし、やることやってからのほうが、ゲームも楽しいじゃん」
「おっしゃる通りンゴなんですけど、それができる人間って少ないんですよ」
「ふーん……」

 巧はニヤリと笑った。

「じゃ、今し方ゲームしようとしていた香奈もその他大勢の一人ってわけだ」
「あっ、その言い方ムカつきます! 私だってゲームくらい我慢できますもーん。それに、巧先輩と一緒にやるなら勉強も楽しくなっちゃいますからっ」
「っ……そっか」
「はい!」

 笑顔でうなずき、香奈が自室から参考書を持ってくる。
 教えるときを除いて、勉強するときはいつも向かいの席に座っているが、

「教えてほしいわけじゃないんですけど隣に座っていいですか? こうやって隣同士でやるの、青春って感じで憧れてたんですっ」
「うん、もちろん」
「やったぁ!」

 香奈が両手をバンザイした。
 自然と強調される胸、そして露出の増えるお腹に、巧の視線がまたまた無意識に吸い寄せられた。

(っ……ダメだ。あんまりジロジロ見たらただの変態だ)

 彼は慌てて目を逸らしたが、

(巧先輩、すごい意識してくれてるっ……!)

 香奈は見られていることに気づいていた。
 当然だ。今のバンザイは見せつけるためにやったのだから。

(恥ずかしいけどこの格好した甲斐があったなっ……偉いぞ私!)

 学校や街中でジロジロ見られればどうしても不快感を覚えてしまうが、巧の視線はそういう人たちのように舐めるように見てくるのではなく、あくまで自然に吸い寄せられてしまっている類のものだった。
 すぐに視線を逸らすのがその証拠だろう。

 巧にならジロジロ見られても一向に構わないし、むしろ見られたいまであるが、

(自然に見ちゃってるってことは、それだけ私の体を魅力的に思ってくれてるってことだよね……!)

 胸と下腹部が幸せで震える。
 自分が変な方向に暴走しないために、そして揶揄いすぎて嫌われてしまわないように、香奈は勉強に集中しようとした。

 ——できるはずがなかった。
 視線が自然と吸い寄せられてしまうのは、香奈も同じだった。

(真剣な表情、格好いいっ……)

 横顔に見惚れていると、視線に気付いたののだろう。巧がふと香奈を見た。

「えっと……どうしたの?」
「い、いえ、格好いいなぁって見惚れちゃってました! えへへ」
「っ……!」

 巧が息を呑んだ。口元を抑えてそっぽを向いた。その紫色の髪から除く耳は真っ赤だった。

(あぁ、好きだなぁ)

 溢れ出る感情を、香奈は無理に抑えようとはしなかった。

「可愛いです。大好きですよ、巧先輩」
「っ……ハァ」

 巧が大袈裟にため息を吐いた。
 香奈は途端に不安になった。

「あっ、す、すみませんっ。勉強中なのに——んんっ⁉︎」

 香奈は目を見開いた。目の前に紫色の瞳があった。
 巧がいきなり唇を押し当ててきたのだ。途端に不安が消え、幸せが胸を満たした。

 しかし、彼はすぐに離れてしまった。

「あっ……」

 思わず追いかけようとした香奈の唇に、巧が人差し指を押し当てた。

「ダメだよ、勉強中はちゃんと勉強に集中しないと。二人揃って赤点補習になっちゃうからさ」
「はい……すみません」

 巧は真剣な表情だった。決して口だけではないことはわかった。
 しかし同時に、彼もまた自分と同じように欲情していることに香奈は気づいていた。頬を紅潮させながら上目遣いで、

「でも先輩。勉強が終わったら続き、してもいいんですよね?」
「っ……それはもちろん」

 ——香奈の見抜いた通り、巧もそういう気分になっていた。
 露出の多めな彼女が隣に座っており、のみならず愛をささやかれて思わずキスをしてしまったのだ。当然だろう。
 本音を言えば今すぐにでもイチャつきたい。

(でも、けじめは大事だ)

 学生の本分はあくまで勉強だし、一人暮らしをさせてもらっている以上、父の大樹たいきに学業の面まで心配はかけたくない。
 どれほど香奈が好きでも、いや、香奈が好きだからこそ、そのラインは守ろうと決意した。
 巧がそのことを伝えると、香奈も「そうですね」と大きくうなずいた。

 ——彼女も一応、節度のある交際を心がけてはいるのだ。
 これからも交際を続けていくために、守るべき一線があることも理解していた。

 後腐れのない気持ちでイチャつくために——。
 再び机に向かい始めた二人の想いは共通していた。



 驚異的な集中力を発揮した二人は、目標をはるかに上回る速さでタスクを終わらせた。

「香奈、今日はすごい集中してたね。この後何かあるの?」
「それはこっちのセリフですよ」

 二人は顔を見合わせて笑い合った。
 そのまま距離を詰める。巧は香奈の後頭部と背中に手を添え、香奈は巧の首に腕を回した。

「香奈——」
「巧先輩——」

 お互いの名前を呼び合い、アイコンタクトを取る。
 そうなってしまえばやることは一つだ。

「ん、ふっ……んんっ……」

 ——彼らは心ゆくまでお互いの唇をむさぼった。
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