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第二十四話 ギーザ
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憑依人間との戦闘から一週間後、私はベンジャミンと共に司令室に呼ばれた。
扉を入って正面の奥の椅子にアンドリューが座り、その横にはウィリアムが控えていた。
そして手前のソファーには、先輩隊員のディラン・ラッセルと、シャーロット・ターナーがいる。
「座ってくれ」
アンドリューにディラン達の隣を示され、私達はそこに腰を下ろした。
「早速だが、君達四人にはギーザに行ってもらう」
「えっ?」
ギーザとは、アイリア国西部の街だ。レイモンドの故郷のホルタンよりは近いが、ここからは少し距離がある。
「順番に説明する。まずは資料を見てほしい」
ウィリアムから紙束が配られる。
「今から話す事は、信用できる筋からの裏付けも取れているから安心しろ」
そう前置きして、アンドリューは話し始めた。
「リリー達が三日前に確保した少年、名前をリンカーン・ウッドというが、彼はギーザで生まれ育った。家は霊能者一家で、両親は軍に勤めており、少し前までは至って普通の家だった。ところが、最近になって両親が逮捕された。若い霊能者の拉致容疑だ」
殺害じゃなくて拉致か。
「この事をきっかけにリンカーンは周囲から白い目で見られるようになった。まあそれは今は関係ないので置いておくが、その犯行にはどうやら《解放軍》が関わっているようだ。これは、複数の隊員があの特徴的な服装を見ているから間違いない。そして、問題はここからだ。どうやら、ギーザの軍は《解放軍》の関与を最初から否定し、リンカーンの両親のみの犯行だと話を進めているようなんだ」
「内通者がいるかもしれない……という事ですか?」
「ああ。だから、君達には表向きは隊員の減った軍のヘルプとして、その実態を調査してもらいたいんだ。上手くいけば、《解放軍》の構成員かそこに通じている者と接触出来るかもしれない」
あの襲撃以来、《解放軍》は少なくとも私達の前には姿を見せていない。
多少強引だが、アンドリューとしては少しでもその動向を探りたいのだろう。
「でも、何故このメンバー編成なのですか?」
ディランが聞いた。
「あくまでヘルプという名目である以上、俺やウィリアムなどが同行する訳にはいかないが、ある程度の実力は必要だ。それでいて、調査のためには頭や勘の良さ、対人関係が得意である必要がある。相性も考えた結果、この四人がベストだと判断した」
「分かりました」
ディランは素直に引き下がった。
が、今度はベンジャミンが手を挙げる。
「ですが、僕とリリーは一度《解放軍》と戦っています。警戒されるのではないでしょうか?」
「ああ、言い忘れていたが、その点に関しては二人に偽名を名乗ってもらい、更にかつらを被ってもらうから大丈夫だ」
「かつら? ……わ、分かりました」
それならわざわざ私達にしなくても良いだろうに。そこまで信頼してくれているのか、何か事情があるのか。
いずれにせよ、この世界にかつらがあるのは驚きだな。
「他に質問は?」
「一つ良いですか?」
私は手を挙げた。
「何だ?」
「司令が最初に仰っていた信頼出来る筋とは、ギーザ軍内部ですか?」
「それを知ってどうする?」
「私達も連携出来たらな、と」
「あいつはあいつが必要だと判断した時だけ接触してくる。気にせずとも必要なら向こうから来るさ」
「随分信頼なさっているのですね」
「ああ。今の俺があるのはあいつのお陰だからな」
「そうなんですか……分かりました。有難うございます」
アンドリューはその「信頼出来る筋」に全幅の信頼を寄せているようだ。
アニメやラノベではそういう人は敵陣営である事が多いが……、
まあ、情報もないうちはアンドリューを信じるとしよう。
「他には?」
誰も手を挙げなかった。
「では、確認するぞ。お前達の任務は、軍のヘルプをしつつ内通者を炙り出す事。目立たない事を最優先にしろ。それと、これは最優先じゃなくて良いが、リンカーンの両親が冤罪かどうかも確かめてくれ。どちらの結果にしろ、今のリンカーンには結果が分かった方が良いと思うからな」
資料によると、リンカーンは両親を逮捕した軍や、自分を遠ざけたギーザの住民、果ては両親などにも怒りの感情が沸いていたようだ。
両親が冤罪かそうでないかが分かれば、確かに少しは救いになるかもしれない。
「では、今から準備をしてくれ。滞在期間は恐らく二週間程度になるだろう。全員の準備が出来次第、出発だ」
それから一時間後、私達は軍の本部に再集合していた。
私の髪は黄色から黒色になり、ベンジャミンの髪は黒色から茶髪になった。
なかなか似合っている。
「先輩、似合ってますよ。格好良いです」
素直な感想を言えば、ベンジャミンは少し恥じらう姿勢を見せた。
「あ、有難う……その、リリーも可愛いと思うよ」
「有難うございます」
お世辞だとは思うが、褒められるのは素直に嬉しい。
悪くないな。
「でも、これから私はリリーじゃなくてライリーですよ。ディーン先輩?」
「あっ、そうだった」
ライリーは私の、ディーンはベンジャミンの偽名だ。
「そういえば、ライリーは学校は良いのか?」
ディランが聞いてくる。
「はい。軍を優先するのは最初から決めていましたから」
「それは真面目なのか真面目じゃないのか微妙なところだが、まあ良いか」
「良いんです」
「おい」
ディランの奥から声が掛かる。シャーロットだ。
「無駄話は良い。さっさと行くぞ」
気さくで面倒見の良いディランとは対照的に、シャーロットは無口で気難しい人だ。
多分、悪い人じゃないけど。
「そうだな、行くか!」
ディランの言葉で、私達は移動を開始した。
ギーザまでは馬で三日ほどらしい。
馬は一日で五十キロから六十キロ進むらしいから、ミネスからギーザは大体百五十キロから二百キロといったところか。
夜は各所の宿に泊まった。
二人が寝て、二人が番をしたが、特にハプニングはなくギーザに到着する事が出来た。
ギーザの軍の本部は、木造建築のミネスとは違い、煉瓦で出来ていた。
この世界では、建物は木造が普通で、煉瓦の建物は金のあるところにしかない。
シエラから離れてるのにミネスよりも金があるとは、羨ましい限りだ。
「ミネスから来ました。ディラン・ラッセルです」
ディランに続き、私達も自己紹介をした。
相手の小太りの禿げた中年の男は、ギーザ軍総司令官のアッシャー・ロングだ。
「おお、よく来てくれましたな! お疲れでしょう。ささっ、こちらに」
揉み手でもし始めそうな勢いで、自ら私達を本部の中へ案内してくれる。
……凄い怪しい。
アニメの見過ぎだろうか。
いずれにしろ、先入観は持たない方が良いな。
その日は大袈裟すぎるほどの接待を受けた後、そのまま除霊作業に移行した。
結論から言おう。
ギーザは、霊も霊能者も総じてミネスよりレベルが低かった。
霊能者は最高でもB級が何人かいるだけで、霊に関してはC級までしか出てこなかった。
兵に聞いてみれば、前からこんなものだという。
ミネスは最近は特に出現する霊のレベルが上がり、B級程度なら何体も出てくるので、少し羨ましい。
早々に除霊を終えて荷物をまとめていると、少年がこちらに駆けてきた。
「ライリーさん、ディーンさん!」
先程仲良くなったジョゼフ・トンプソン、八歳だ。
「どうしたの、ジョゼフ?」
「あの、うちに来ませんか?」
「えっ?」
唐突だな。
「もっと二人と話したいんです! 霊術の事とか、教えて欲しくて」
「ああ」
ジョゼフは、雑用などをやるだけの子が多い見習いで、珍しく霊術に強い興味を示していた。
いきなり家に呼ぶのはどうかと思うが、八歳ならこんなものだろうか。
私は迷った。
迷って隣を見た。
ベンジャミンと目が合う。
これは、ディラン達にも相談した方が良いな。
「ジョゼフ」
「はい?」
「大人の人達に相談しないといけないから、ちょっと待っててくれる?」
「分かりました!」
素直だ。とても素直だ。
どこか捻くれた水色の天才少年とは大違いだ。
彼は真っ直ぐだが、素直ではない。
同じ事をベンジャミンも考えていたようだ。
「いつもリ……ライリーやレイといるから感覚が麻痺しちゃってたけど、子供ってあんなものだよね」
「あれ、私もですか?」
「逆に何でそこに君が入ってないと思ったの」
「えー、でも、レイの方が可愛げないと思いません?」
「安心して。二人の可愛げは全部ソフィアが補っているから」
「うわっ、ロリコンだ」
「えっ? ち、違うよ!」
「あれ、動揺しているんですか?」
「だから違うって!」
「ほら、早く行きましょう、先輩。ジョゼフが待ってますよ」
なんだか楽しくなり、私はスキップしながらディラン達の元へ向かった。
ディランやシャーロットとも相談した結果、私とベンジャミンはジョゼフの家に行く事になった。
このタイミングで、しかも相手が子供であれば罠の可能性は少ないだろうという事。そしてジョゼフと仲良くなっておけば子供達との間にパイプが出来て、情報収集しやすくなる事を考慮しての事だった。
こんな話をして親に拒否されたら穴に入らなければならなかったが、ジョゼフの両親は私達を暖かく迎えてくれた。
どころか、私達が本部で寝泊まりする事を知ると、
「それならうちに泊まりなさいよ」
と、言ってくれた。
最初は遠慮したが、何度も勧めてくれるので、最終的には世話になる事にした。
これも事前に相談していた通りの動きだ。
夜はジョゼフが寝るまで、ずっとジョゼフとベンジャミンと三人で話していた。
主に霊術の話をしていたが、話の流れから少し《解放軍》について聞き出す事が出来た。
なんでも、ジョゼフは見ていないが、友達のイーサンと、その兄のアレクサンダーが《解放軍》らしき人物を見かけていたらしい。
ジョゼフが寝た後に接触方法の算段を少し立てて、私とベンジャミンは眠りについた。
明かりを消してすぐに寝息が聞こえてくる。
相変わらずの寝つきの良さだ。彼なら例え二人きりで寝ても襲われる事はないだろう。
……あれ。
ちょっと変な気分になりそうだったので、私は慌てて頭を振り、必死に《解放軍》などに思考を逸らした。
扉を入って正面の奥の椅子にアンドリューが座り、その横にはウィリアムが控えていた。
そして手前のソファーには、先輩隊員のディラン・ラッセルと、シャーロット・ターナーがいる。
「座ってくれ」
アンドリューにディラン達の隣を示され、私達はそこに腰を下ろした。
「早速だが、君達四人にはギーザに行ってもらう」
「えっ?」
ギーザとは、アイリア国西部の街だ。レイモンドの故郷のホルタンよりは近いが、ここからは少し距離がある。
「順番に説明する。まずは資料を見てほしい」
ウィリアムから紙束が配られる。
「今から話す事は、信用できる筋からの裏付けも取れているから安心しろ」
そう前置きして、アンドリューは話し始めた。
「リリー達が三日前に確保した少年、名前をリンカーン・ウッドというが、彼はギーザで生まれ育った。家は霊能者一家で、両親は軍に勤めており、少し前までは至って普通の家だった。ところが、最近になって両親が逮捕された。若い霊能者の拉致容疑だ」
殺害じゃなくて拉致か。
「この事をきっかけにリンカーンは周囲から白い目で見られるようになった。まあそれは今は関係ないので置いておくが、その犯行にはどうやら《解放軍》が関わっているようだ。これは、複数の隊員があの特徴的な服装を見ているから間違いない。そして、問題はここからだ。どうやら、ギーザの軍は《解放軍》の関与を最初から否定し、リンカーンの両親のみの犯行だと話を進めているようなんだ」
「内通者がいるかもしれない……という事ですか?」
「ああ。だから、君達には表向きは隊員の減った軍のヘルプとして、その実態を調査してもらいたいんだ。上手くいけば、《解放軍》の構成員かそこに通じている者と接触出来るかもしれない」
あの襲撃以来、《解放軍》は少なくとも私達の前には姿を見せていない。
多少強引だが、アンドリューとしては少しでもその動向を探りたいのだろう。
「でも、何故このメンバー編成なのですか?」
ディランが聞いた。
「あくまでヘルプという名目である以上、俺やウィリアムなどが同行する訳にはいかないが、ある程度の実力は必要だ。それでいて、調査のためには頭や勘の良さ、対人関係が得意である必要がある。相性も考えた結果、この四人がベストだと判断した」
「分かりました」
ディランは素直に引き下がった。
が、今度はベンジャミンが手を挙げる。
「ですが、僕とリリーは一度《解放軍》と戦っています。警戒されるのではないでしょうか?」
「ああ、言い忘れていたが、その点に関しては二人に偽名を名乗ってもらい、更にかつらを被ってもらうから大丈夫だ」
「かつら? ……わ、分かりました」
それならわざわざ私達にしなくても良いだろうに。そこまで信頼してくれているのか、何か事情があるのか。
いずれにせよ、この世界にかつらがあるのは驚きだな。
「他に質問は?」
「一つ良いですか?」
私は手を挙げた。
「何だ?」
「司令が最初に仰っていた信頼出来る筋とは、ギーザ軍内部ですか?」
「それを知ってどうする?」
「私達も連携出来たらな、と」
「あいつはあいつが必要だと判断した時だけ接触してくる。気にせずとも必要なら向こうから来るさ」
「随分信頼なさっているのですね」
「ああ。今の俺があるのはあいつのお陰だからな」
「そうなんですか……分かりました。有難うございます」
アンドリューはその「信頼出来る筋」に全幅の信頼を寄せているようだ。
アニメやラノベではそういう人は敵陣営である事が多いが……、
まあ、情報もないうちはアンドリューを信じるとしよう。
「他には?」
誰も手を挙げなかった。
「では、確認するぞ。お前達の任務は、軍のヘルプをしつつ内通者を炙り出す事。目立たない事を最優先にしろ。それと、これは最優先じゃなくて良いが、リンカーンの両親が冤罪かどうかも確かめてくれ。どちらの結果にしろ、今のリンカーンには結果が分かった方が良いと思うからな」
資料によると、リンカーンは両親を逮捕した軍や、自分を遠ざけたギーザの住民、果ては両親などにも怒りの感情が沸いていたようだ。
両親が冤罪かそうでないかが分かれば、確かに少しは救いになるかもしれない。
「では、今から準備をしてくれ。滞在期間は恐らく二週間程度になるだろう。全員の準備が出来次第、出発だ」
それから一時間後、私達は軍の本部に再集合していた。
私の髪は黄色から黒色になり、ベンジャミンの髪は黒色から茶髪になった。
なかなか似合っている。
「先輩、似合ってますよ。格好良いです」
素直な感想を言えば、ベンジャミンは少し恥じらう姿勢を見せた。
「あ、有難う……その、リリーも可愛いと思うよ」
「有難うございます」
お世辞だとは思うが、褒められるのは素直に嬉しい。
悪くないな。
「でも、これから私はリリーじゃなくてライリーですよ。ディーン先輩?」
「あっ、そうだった」
ライリーは私の、ディーンはベンジャミンの偽名だ。
「そういえば、ライリーは学校は良いのか?」
ディランが聞いてくる。
「はい。軍を優先するのは最初から決めていましたから」
「それは真面目なのか真面目じゃないのか微妙なところだが、まあ良いか」
「良いんです」
「おい」
ディランの奥から声が掛かる。シャーロットだ。
「無駄話は良い。さっさと行くぞ」
気さくで面倒見の良いディランとは対照的に、シャーロットは無口で気難しい人だ。
多分、悪い人じゃないけど。
「そうだな、行くか!」
ディランの言葉で、私達は移動を開始した。
ギーザまでは馬で三日ほどらしい。
馬は一日で五十キロから六十キロ進むらしいから、ミネスからギーザは大体百五十キロから二百キロといったところか。
夜は各所の宿に泊まった。
二人が寝て、二人が番をしたが、特にハプニングはなくギーザに到着する事が出来た。
ギーザの軍の本部は、木造建築のミネスとは違い、煉瓦で出来ていた。
この世界では、建物は木造が普通で、煉瓦の建物は金のあるところにしかない。
シエラから離れてるのにミネスよりも金があるとは、羨ましい限りだ。
「ミネスから来ました。ディラン・ラッセルです」
ディランに続き、私達も自己紹介をした。
相手の小太りの禿げた中年の男は、ギーザ軍総司令官のアッシャー・ロングだ。
「おお、よく来てくれましたな! お疲れでしょう。ささっ、こちらに」
揉み手でもし始めそうな勢いで、自ら私達を本部の中へ案内してくれる。
……凄い怪しい。
アニメの見過ぎだろうか。
いずれにしろ、先入観は持たない方が良いな。
その日は大袈裟すぎるほどの接待を受けた後、そのまま除霊作業に移行した。
結論から言おう。
ギーザは、霊も霊能者も総じてミネスよりレベルが低かった。
霊能者は最高でもB級が何人かいるだけで、霊に関してはC級までしか出てこなかった。
兵に聞いてみれば、前からこんなものだという。
ミネスは最近は特に出現する霊のレベルが上がり、B級程度なら何体も出てくるので、少し羨ましい。
早々に除霊を終えて荷物をまとめていると、少年がこちらに駆けてきた。
「ライリーさん、ディーンさん!」
先程仲良くなったジョゼフ・トンプソン、八歳だ。
「どうしたの、ジョゼフ?」
「あの、うちに来ませんか?」
「えっ?」
唐突だな。
「もっと二人と話したいんです! 霊術の事とか、教えて欲しくて」
「ああ」
ジョゼフは、雑用などをやるだけの子が多い見習いで、珍しく霊術に強い興味を示していた。
いきなり家に呼ぶのはどうかと思うが、八歳ならこんなものだろうか。
私は迷った。
迷って隣を見た。
ベンジャミンと目が合う。
これは、ディラン達にも相談した方が良いな。
「ジョゼフ」
「はい?」
「大人の人達に相談しないといけないから、ちょっと待っててくれる?」
「分かりました!」
素直だ。とても素直だ。
どこか捻くれた水色の天才少年とは大違いだ。
彼は真っ直ぐだが、素直ではない。
同じ事をベンジャミンも考えていたようだ。
「いつもリ……ライリーやレイといるから感覚が麻痺しちゃってたけど、子供ってあんなものだよね」
「あれ、私もですか?」
「逆に何でそこに君が入ってないと思ったの」
「えー、でも、レイの方が可愛げないと思いません?」
「安心して。二人の可愛げは全部ソフィアが補っているから」
「うわっ、ロリコンだ」
「えっ? ち、違うよ!」
「あれ、動揺しているんですか?」
「だから違うって!」
「ほら、早く行きましょう、先輩。ジョゼフが待ってますよ」
なんだか楽しくなり、私はスキップしながらディラン達の元へ向かった。
ディランやシャーロットとも相談した結果、私とベンジャミンはジョゼフの家に行く事になった。
このタイミングで、しかも相手が子供であれば罠の可能性は少ないだろうという事。そしてジョゼフと仲良くなっておけば子供達との間にパイプが出来て、情報収集しやすくなる事を考慮しての事だった。
こんな話をして親に拒否されたら穴に入らなければならなかったが、ジョゼフの両親は私達を暖かく迎えてくれた。
どころか、私達が本部で寝泊まりする事を知ると、
「それならうちに泊まりなさいよ」
と、言ってくれた。
最初は遠慮したが、何度も勧めてくれるので、最終的には世話になる事にした。
これも事前に相談していた通りの動きだ。
夜はジョゼフが寝るまで、ずっとジョゼフとベンジャミンと三人で話していた。
主に霊術の話をしていたが、話の流れから少し《解放軍》について聞き出す事が出来た。
なんでも、ジョゼフは見ていないが、友達のイーサンと、その兄のアレクサンダーが《解放軍》らしき人物を見かけていたらしい。
ジョゼフが寝た後に接触方法の算段を少し立てて、私とベンジャミンは眠りについた。
明かりを消してすぐに寝息が聞こえてくる。
相変わらずの寝つきの良さだ。彼なら例え二人きりで寝ても襲われる事はないだろう。
……あれ。
ちょっと変な気分になりそうだったので、私は慌てて頭を振り、必死に《解放軍》などに思考を逸らした。
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