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第一章
第94話 お泊まり④ —攻めるシャーロット—
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初めて双方合意で同衾をした翌朝、シャーロットが目覚めてもノアは眠ったままだった。
「……ふふ」
すやすやと穏やかな寝息を立てるノアを見ていると、自然と笑みがこぼれる。
無意識のうちに、男の子にしては白い頬に手を伸ばしていた。
「相変わらずぷにぷにですね……」
しばらく頬をいじり続けていると、んむぅ、とノアが声を上げた。
声というよりは、喉の音に近いだろうか。
重そうなまぶたがゆっくりと持ち上がり、カラメル色が姿をのぞかせる。
焦点が合っていない。まだ覚醒しきっていないのだろう。
「おはようございます、ノア君」
「ん……」
「もう朝ですよ。今日はエリアも来るのですから、起きてくださ——わっ⁉︎」
頬をペチペチと叩くシャーロットの手を掴んだノアは、そのまま彼女を自分の元へと引き込んだ。
布団の上で背後から抱きしめられ、シャーロットは頬を赤らめた。
ノアが彼女の首筋に顔を埋める。
(完全に寝ぼけてますね……)
ノアに抱きしめられるのは好きだったし、もう少しだけこのままでいてもいいか——。
そう思って体の力を抜いたシャーロットだが、
——ちゅっ。
「ひゃあ⁉︎」
唐突に首の後ろを吸われて、跳ね起きた。
悲鳴と腕を振り解かれた事で、ノアの意識も覚醒したらしい。
「あっ、シャル……おはよう」
「お、おはようございます」
油断しきっていたところへのキスにすっかり頬を上気させてしまったシャーロットは、背を向けたまま返事をした。
「……あれ、シャル。なんか首赤いよ。虫刺され?」
「なっ……!」
それが虫刺されでない事は、シャーロットからすれば明白だった。
ノアは寝ぼけていて覚えていないようだが、彼ははっきりシャーロットの首に吸い付いた。
嫌な予感はあったが、やはり痕がついてしまっているらしい。
「シャル?」
「……虫じゃありません」
「掻きこわしとか?」
「違います……自分の口に聞いてみてください」
「えっ? ——あ」
背中を向けていても、ノアが狼狽したのがはっきりとわかった。
「……思い出しましたか?」
「ご、ごめん! 僕、寝ぼけてて……」
「虫刺され、で誤魔化せそうですか?」
「……いや、ちゃんと見ればはっきりそれとわかると思います……」
「なんで今日に限って、見えやすいところにつけるのですかっ……」
別にキスマをつけられる事自体は、恥ずかしくはあっても嫌ではない。
むしろ、嬉しいまである。
エリアが来る今日に、普通にしていれば見えてしまう場所につけられた事が問題なのだ。
見つかったら絶対に揶揄われるし、そうでなくとも妹にキスマを見られるなど恥ずかしすぎる。
「本当にごめん」
シャーロットが振り返れば、ノアは深く頭を下げていた。
実は予想外の事態に動揺していただけで、シャーロットはそんなに怒ってもいなかったし、不機嫌にもなっていなかった。
(しかし、これはいい機会かもしれません)
ノアが悪いのは事実なので、シャーロットはせっかくの機会を有効活用する事にした。
「では、今からノア君は一切反抗や反撃はしないでください。そうしたら許してあげます」
「えっ……シャルが僕に何かするって事?」
「そうです」
「……わかった。いいよ」
若干頬を引きつらせつつも、ノアは頷いた。
やった、とシャーロットは内心でガッツポーズをした。
いつもはシャーロットから攻めても、結局はノアに優位を取られてしまっている。
それはそれで幸せなのだが、シャーロットもたまには主導権を握りたかった。
「ノア君、こちらに来てください」
「う、うん」
不安げな表情を浮かべつつも素直に寄ってきたノアの後頭部に手を添え、抱きしめる。
「っ——⁉︎」
ノアが声にならない声をあげた。
あまり自慢できる胸ではないが、それでも柔らかさは伝わっているのだろう。
顔は隠れてしまっているが、カラメル色の髪の毛から覗く彼の耳は、赤く染まっている。
いつもしてもらっているように頭を撫でれば、ノアがうう、とうめいた。
「ノア君、顔を見せてください」
「や、やだ」
「一切反抗や反撃はなしだ、という約束ですよ?」
「うっ……!」
渋々胸から顔を上げたノアの顔は、これでもかというほど真っ赤に染まっていた。
自分が原因でそうなっているのだと思うと恥ずかしかったが、それ以上に胸が幸せでいっぱいになった。
ここまででも、ノアはだいぶ恥ずかしい思いをしているだろう。
しかし、シャーロットはまだまだ許してあげるつもりはなかった。
「いつものお返しです」
シャーロットはまず、ノアの鎖骨のあたりにキスをした。
いきなり唇にするのは恥ずかしかったというのもあるが、じっくり攻めてみたいという気持ちもあった。
(私も意外とSっ気があるのかもしれませんね)
思わぬ自分の一面に苦笑しつつ、シャーロットは徐々にキスする場所を上にずらしていった。
首を制覇すると、顔にはいかず、耳に口付けをする。
「ん……」
思わずといった様子で、ノアが声を漏らした。
(可愛い……楽しいです)
ノアが反撃をしてこないとわかっているためか、シャーロットはいつもよりも大胆になっていた。
もっとも、羞恥を感じていないわけではなく、彼女の頬は真っ赤に染まっていたのだが、それを指摘できる人物はいなかった。
なぜなら、シャーロット以外には、自身も彼女と同じように、いや、彼女以上に羞恥に打ち震えているノアしかいなかったのだから。
耳を喰んだ後、シャーロットはいよいよ頬にキスをした。
右に一回、左に一回それぞれ唇を触れさせる。
残っているのはいよいよ唇だけだ。
この時になると、焦らした反動が自分にも跳ね返ってきていて、シャーロットはここでやめてしまおうかとも考えた。
自らノアの唇にするなど、これまで数えるほどしかしていない。
(い、今ノア君の唇にき、キスをするのはちょっと精神的に……)
逃げ腰になっていたシャーロットだが、赤くなってぷるぷる震えているノアを見て、思い直した。
(……いえ、ノア君を制圧できるのは今しかありません!)
一度深呼吸をしてから、シャーロットは一気にノアの唇にかじりついた。
「ふ……」
(あぁ、幸せです……!)
ノアを好きになるまで、シャーロットはキスにそこまでの重要性を見出していなかった。
小説を読んでいても、セックスはともかくとして、キスでそんなに気持ちよくなるなんてあるのだろうか、と。
——あるのだ。
状況的には、ただ唇と唇が触れ合っているだけ。舌を入れてすらいない。
それなのに、幸せがあふれ出しそうになる。
(脳が蕩ける、とでも言えばいいのでしょうか……)
目を閉じたノアも、恥ずかしそうではあるものの、同時に幸せそうな表情を浮かべていた。
勇気をもらったシャーロットは、前にノアにされたように、リップ音を立てながら短いキスを繰り返してみた。
「ん……ふ……んっ……」
意図せずとも、鼻から抜けるような声が漏れてしまう。
本当は昨日ノアにやられた事を全てやり返すつもりだったのだが、もう限界だった。
ノアの唇を舐める事を想像してキャパオーバーになったシャーロットは、彼を解放して枕に顔を埋めた。
(わ、私はなんて事を……!)
今更冷静になり、自分がいかに大胆な行動をとってしまったかを悟ったシャーロットは、羞恥に悶え苦しんだ。
「うう……」
意味もなく体をくねらせ、呻き声をあげてしまう。
今そこに穴があれば、たとえそれがどんな穴であろうとシャーロットは飛び込むだろう。
「……終了?」
「は、はい……」
「っはあー……」
ノアが長い息を吐いた。
それから、慌てたように付け足す。
「あぁ、勘違いしないでね。別に嫌だったわけじゃないから。ただ、その……精神的にめちゃくちゃ疲弊しただけで」
「わ、わかっていますよ……」
ノアの表情は、決して嫌がっていたものではなかった。
むしろ、気持ちよさそうにもしてくれていた。
(はう……!)
……キスしている最中のノアの顔を思い浮かべてしまい、シャーロットは更なるダメージを負った。
「あ、あのさ、シャル」
「……何でしょう?」
シャーロットは枕に顔を埋めたまま答えた。
「今回は完全に僕が悪いから我慢するけど——」
「わっ……!」
ノアが近づいてきた、と思った時には上半身が浮き上がり、ノアに背後から抱きしめられていた。
腰に硬いものが押し付けられている。
「——次はないからね」
「っ……!」
耳元に囁かれ、シャーロットの背中をゾクゾクとしたものが走った。
「す、すみませんっ……!」
腰に当てられたものの正体も、次はないという言葉の意味も正確に理解したシャーロットは、ノアから解放されると再び枕に顔を押し付けた。
熱が冷めてきた頃、シャーロットは少しだけ顔の角度を変え、ノアの顔を見た。
「あ、あの、ノア君」
「ん、何?」
「今回のような事はもうしませんけど、その、た、たまには私にも主導権を握らせてほしいというか……いえ、本当たまにでいいのですけどっ」
「わかった」
ノアは穏やかな笑みを浮かべて頷いた。
彼の頬は、まだ少し桜の色合いを残していた。
「じゃあ、たまに抵抗しない事にするよ。その代わり、一回一回はお手柔らかにお願いね。我慢できる自信がないとかじゃなくて絶対に我慢できないからこれは確信なのだよそれじゃあ僕は風呂に入ってきますさいなら!」
台詞の後半部分を一息で言い切り、ノアは疾風のように部屋から出ていった。
呆気に取られていたシャーロットは、彼なりの照れ隠しなのだとわかってクスクス笑った。
ノアも、見た目よりも余裕はないようだ。
そういう事したいわけじゃないのに、彼が意識してくれてるのが嬉しかった。
「また矛盾していますね。これも普通なのでしょうか……恋愛って難しいですね」
恋愛初心者のくせに悟ったような事を言う自分自身に苦笑して、シャーロットは朝食でも用意しようかとベッドを降りた。
「……ふふ」
すやすやと穏やかな寝息を立てるノアを見ていると、自然と笑みがこぼれる。
無意識のうちに、男の子にしては白い頬に手を伸ばしていた。
「相変わらずぷにぷにですね……」
しばらく頬をいじり続けていると、んむぅ、とノアが声を上げた。
声というよりは、喉の音に近いだろうか。
重そうなまぶたがゆっくりと持ち上がり、カラメル色が姿をのぞかせる。
焦点が合っていない。まだ覚醒しきっていないのだろう。
「おはようございます、ノア君」
「ん……」
「もう朝ですよ。今日はエリアも来るのですから、起きてくださ——わっ⁉︎」
頬をペチペチと叩くシャーロットの手を掴んだノアは、そのまま彼女を自分の元へと引き込んだ。
布団の上で背後から抱きしめられ、シャーロットは頬を赤らめた。
ノアが彼女の首筋に顔を埋める。
(完全に寝ぼけてますね……)
ノアに抱きしめられるのは好きだったし、もう少しだけこのままでいてもいいか——。
そう思って体の力を抜いたシャーロットだが、
——ちゅっ。
「ひゃあ⁉︎」
唐突に首の後ろを吸われて、跳ね起きた。
悲鳴と腕を振り解かれた事で、ノアの意識も覚醒したらしい。
「あっ、シャル……おはよう」
「お、おはようございます」
油断しきっていたところへのキスにすっかり頬を上気させてしまったシャーロットは、背を向けたまま返事をした。
「……あれ、シャル。なんか首赤いよ。虫刺され?」
「なっ……!」
それが虫刺されでない事は、シャーロットからすれば明白だった。
ノアは寝ぼけていて覚えていないようだが、彼ははっきりシャーロットの首に吸い付いた。
嫌な予感はあったが、やはり痕がついてしまっているらしい。
「シャル?」
「……虫じゃありません」
「掻きこわしとか?」
「違います……自分の口に聞いてみてください」
「えっ? ——あ」
背中を向けていても、ノアが狼狽したのがはっきりとわかった。
「……思い出しましたか?」
「ご、ごめん! 僕、寝ぼけてて……」
「虫刺され、で誤魔化せそうですか?」
「……いや、ちゃんと見ればはっきりそれとわかると思います……」
「なんで今日に限って、見えやすいところにつけるのですかっ……」
別にキスマをつけられる事自体は、恥ずかしくはあっても嫌ではない。
むしろ、嬉しいまである。
エリアが来る今日に、普通にしていれば見えてしまう場所につけられた事が問題なのだ。
見つかったら絶対に揶揄われるし、そうでなくとも妹にキスマを見られるなど恥ずかしすぎる。
「本当にごめん」
シャーロットが振り返れば、ノアは深く頭を下げていた。
実は予想外の事態に動揺していただけで、シャーロットはそんなに怒ってもいなかったし、不機嫌にもなっていなかった。
(しかし、これはいい機会かもしれません)
ノアが悪いのは事実なので、シャーロットはせっかくの機会を有効活用する事にした。
「では、今からノア君は一切反抗や反撃はしないでください。そうしたら許してあげます」
「えっ……シャルが僕に何かするって事?」
「そうです」
「……わかった。いいよ」
若干頬を引きつらせつつも、ノアは頷いた。
やった、とシャーロットは内心でガッツポーズをした。
いつもはシャーロットから攻めても、結局はノアに優位を取られてしまっている。
それはそれで幸せなのだが、シャーロットもたまには主導権を握りたかった。
「ノア君、こちらに来てください」
「う、うん」
不安げな表情を浮かべつつも素直に寄ってきたノアの後頭部に手を添え、抱きしめる。
「っ——⁉︎」
ノアが声にならない声をあげた。
あまり自慢できる胸ではないが、それでも柔らかさは伝わっているのだろう。
顔は隠れてしまっているが、カラメル色の髪の毛から覗く彼の耳は、赤く染まっている。
いつもしてもらっているように頭を撫でれば、ノアがうう、とうめいた。
「ノア君、顔を見せてください」
「や、やだ」
「一切反抗や反撃はなしだ、という約束ですよ?」
「うっ……!」
渋々胸から顔を上げたノアの顔は、これでもかというほど真っ赤に染まっていた。
自分が原因でそうなっているのだと思うと恥ずかしかったが、それ以上に胸が幸せでいっぱいになった。
ここまででも、ノアはだいぶ恥ずかしい思いをしているだろう。
しかし、シャーロットはまだまだ許してあげるつもりはなかった。
「いつものお返しです」
シャーロットはまず、ノアの鎖骨のあたりにキスをした。
いきなり唇にするのは恥ずかしかったというのもあるが、じっくり攻めてみたいという気持ちもあった。
(私も意外とSっ気があるのかもしれませんね)
思わぬ自分の一面に苦笑しつつ、シャーロットは徐々にキスする場所を上にずらしていった。
首を制覇すると、顔にはいかず、耳に口付けをする。
「ん……」
思わずといった様子で、ノアが声を漏らした。
(可愛い……楽しいです)
ノアが反撃をしてこないとわかっているためか、シャーロットはいつもよりも大胆になっていた。
もっとも、羞恥を感じていないわけではなく、彼女の頬は真っ赤に染まっていたのだが、それを指摘できる人物はいなかった。
なぜなら、シャーロット以外には、自身も彼女と同じように、いや、彼女以上に羞恥に打ち震えているノアしかいなかったのだから。
耳を喰んだ後、シャーロットはいよいよ頬にキスをした。
右に一回、左に一回それぞれ唇を触れさせる。
残っているのはいよいよ唇だけだ。
この時になると、焦らした反動が自分にも跳ね返ってきていて、シャーロットはここでやめてしまおうかとも考えた。
自らノアの唇にするなど、これまで数えるほどしかしていない。
(い、今ノア君の唇にき、キスをするのはちょっと精神的に……)
逃げ腰になっていたシャーロットだが、赤くなってぷるぷる震えているノアを見て、思い直した。
(……いえ、ノア君を制圧できるのは今しかありません!)
一度深呼吸をしてから、シャーロットは一気にノアの唇にかじりついた。
「ふ……」
(あぁ、幸せです……!)
ノアを好きになるまで、シャーロットはキスにそこまでの重要性を見出していなかった。
小説を読んでいても、セックスはともかくとして、キスでそんなに気持ちよくなるなんてあるのだろうか、と。
——あるのだ。
状況的には、ただ唇と唇が触れ合っているだけ。舌を入れてすらいない。
それなのに、幸せがあふれ出しそうになる。
(脳が蕩ける、とでも言えばいいのでしょうか……)
目を閉じたノアも、恥ずかしそうではあるものの、同時に幸せそうな表情を浮かべていた。
勇気をもらったシャーロットは、前にノアにされたように、リップ音を立てながら短いキスを繰り返してみた。
「ん……ふ……んっ……」
意図せずとも、鼻から抜けるような声が漏れてしまう。
本当は昨日ノアにやられた事を全てやり返すつもりだったのだが、もう限界だった。
ノアの唇を舐める事を想像してキャパオーバーになったシャーロットは、彼を解放して枕に顔を埋めた。
(わ、私はなんて事を……!)
今更冷静になり、自分がいかに大胆な行動をとってしまったかを悟ったシャーロットは、羞恥に悶え苦しんだ。
「うう……」
意味もなく体をくねらせ、呻き声をあげてしまう。
今そこに穴があれば、たとえそれがどんな穴であろうとシャーロットは飛び込むだろう。
「……終了?」
「は、はい……」
「っはあー……」
ノアが長い息を吐いた。
それから、慌てたように付け足す。
「あぁ、勘違いしないでね。別に嫌だったわけじゃないから。ただ、その……精神的にめちゃくちゃ疲弊しただけで」
「わ、わかっていますよ……」
ノアの表情は、決して嫌がっていたものではなかった。
むしろ、気持ちよさそうにもしてくれていた。
(はう……!)
……キスしている最中のノアの顔を思い浮かべてしまい、シャーロットは更なるダメージを負った。
「あ、あのさ、シャル」
「……何でしょう?」
シャーロットは枕に顔を埋めたまま答えた。
「今回は完全に僕が悪いから我慢するけど——」
「わっ……!」
ノアが近づいてきた、と思った時には上半身が浮き上がり、ノアに背後から抱きしめられていた。
腰に硬いものが押し付けられている。
「——次はないからね」
「っ……!」
耳元に囁かれ、シャーロットの背中をゾクゾクとしたものが走った。
「す、すみませんっ……!」
腰に当てられたものの正体も、次はないという言葉の意味も正確に理解したシャーロットは、ノアから解放されると再び枕に顔を押し付けた。
熱が冷めてきた頃、シャーロットは少しだけ顔の角度を変え、ノアの顔を見た。
「あ、あの、ノア君」
「ん、何?」
「今回のような事はもうしませんけど、その、た、たまには私にも主導権を握らせてほしいというか……いえ、本当たまにでいいのですけどっ」
「わかった」
ノアは穏やかな笑みを浮かべて頷いた。
彼の頬は、まだ少し桜の色合いを残していた。
「じゃあ、たまに抵抗しない事にするよ。その代わり、一回一回はお手柔らかにお願いね。我慢できる自信がないとかじゃなくて絶対に我慢できないからこれは確信なのだよそれじゃあ僕は風呂に入ってきますさいなら!」
台詞の後半部分を一息で言い切り、ノアは疾風のように部屋から出ていった。
呆気に取られていたシャーロットは、彼なりの照れ隠しなのだとわかってクスクス笑った。
ノアも、見た目よりも余裕はないようだ。
そういう事したいわけじゃないのに、彼が意識してくれてるのが嬉しかった。
「また矛盾していますね。これも普通なのでしょうか……恋愛って難しいですね」
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