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第29話 誕生日⑤ —一緒に—
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ケーキは平等に二切れずつ平らげた。少しダラダラしてからお風呂に入った。
お腹いっぱいで疲労も感じていた。すぐに眠ってしまいたい気持ちもあったが、楓と一緒に入るなら億劫ではなかった。
裸体を触れたり拝んだりできるから、というだけではない。
楓が隣にいるだけで、本来なら面倒なはずの作業や行動も楽しくなるのだ。
食器洗いを共同作業にしているのも同様の理由だ。
洗う係と拭く係で別れていたほうが効率的だというのもあるが、それ以上に会話をしながら一緒に作業をしていると、全人類が一度は先延ばしにしたことがあるであろうあの食器洗いですら一つの楽しみになってしまう。
愛の力ってマジで絶大だよな。
俺のほうがケアにかかる時間が少ないため、必然的に先に浴槽に浸かることになる。楓のほうがのぼせやすいため、ちょうどよかった。
楓は体を洗い終えると、俺の足の間に座って背中をもたれ掛けさせてきた。
お腹に手を回し、ぷにぷにと指先で柔らかい感触を楽しむ。楓はくすぐったそうに笑った。
間違いなく腰に硬い感触を感じているだろうが、言及はしてこない。
沈黙が訪れる。居心地の悪さは感じない。
スキンシップを取るときは別として、浴槽に浸かっている間は基本的にはこうして触れ合いつつぼーっとしていることが多かった。
「……まさか、こんなふうになるとは思っていませんでした」
楓がポツポツと話し出した。
「事実が明るみに出ていじめてた人たちや先生が裁かれればいいと思ったし、少しでも話題になって両親が心配してくれないかなって、最初はそんな考えだったんです」
……そりゃそうだよな。
親から楓のような扱いを受けていたらと思うとゾッとした。俺は知らずのぎゅっと拳を握り込んでいた。
気配の変化を感じ取ったのか、楓が振り返った。困ったように眉を下げて笑った。
握りしめたままだった俺の手を、いたわるようにそっと包み込んだ。
「そんな沈んだ表情をしないでください。いじめっ子たちは悠真君が消してくれましたし、両親のこともある程度諦めることができましたから」
「……そうか」
楓の表情は晴れ晴れとまではいかずとも、口調に見合う穏やかなものだった。
そうです、と彼女は微笑んだ。
「寂しさが全くないと言えば嘘になりますが、今の私にはそれを補ってあまりあるほどの愛情と幸せを与えてくれる人がそばにいるのですから」
楓ははにかむように笑った。胸に頭をもたれて体重を預けてきた。
(好きだなぁ)
俺は安心させるように力強く抱きしめた。
「任せてくれ。これからも何があっても、俺が絶対に楓のことを幸せにするから」
「ダメです」
「えっ?」
俺は目を瞬かせた。
今、ダメですって言われた?
「悠真君が幸せじゃないと私も幸せになれませんから。一緒に幸せになりましょう?」
「っ……あぁ、そうだな」
俺はより一層、力強く華奢な体を抱きしめた。
楓がくるりと振り向いた。
——その顔には、今までとは雰囲気の違う妖艶な笑みが浮かんでいた。
「それでは一緒に幸せになれるコト、しましょうか」
楓の手が蛇のように素早く伸びて、俺のモノを掴んだ。
全身がゾクゾクした。
「い、今から?」
「はい。何かご不満ですか?」
「いや、不満はねえけど——」
「そうですよね。もうこんなにカチカチなんですから」
楓の手が上下にゆっくりと動く。
誘うように、焦らすように。
「ふ、不満はねえけどさ、楓は疲れてねえのか?」
「疲れてますけど、プレゼントは翌日にもらっても価値が下がってしまいますから。それに、ケーキの分の運動もしなくちゃいけませんしね」
だんだんと楓の手の動きが早くなる。
彼女がいいならこちらも楽しませてもらおう。
風呂場ではあえて前戯までしか行わなかった。バスローブを巻いただけの格好でベッドに向かった。
俺は最高潮まで昂っていた。ベッドに上るなり、一糸纏わぬ姿になって楓に覆い被さった。
「ふふ、もう準備万端なご様子ですね」
楓が俺のイチモツに触れ、嬉しそうに笑った。
「楓もだろ?」
「ん……!」
不意打ちで秘部に手を伸ばすと、水音と嬌声が俺の言葉を肯定するように響いた。
楓がサッと顔を赤くさせた。
「ゆ、悠真君。もうっ……」
「あぁ」
素早く防具をつけ、挿入する。
「楓、痛くないか?」
「大丈夫です……ねぇ、悠真君」
楓が鼻にかかったような甘い声を出した。
「おう?」
「今はまだですけど、いつか直接プレゼントしてくださいね」
「っ……あぁ、もちろん!」
俺は込み上げてきた想いを余すところなく楓にぶつけた。
彼女も必死にそれに応えてくれた。
そしていつも通り、後半戦は楓に主導権を握られた。
◇ ◇ ◇
行為を終えて軽くシャワーだけ浴びた後、俺が楓を腕枕する体勢で横になっていた。
背中を向けていた楓が、不意にゴロンとこちら側に向き直る。何かを伝えようとしているような、真剣な表情だった。
「悠真君」
「ん?」
「私、今すごく幸せです。最高の誕生日をありがとうございます」
「おう」
腕枕をしている手を持ち上げ、楓の後頭部を撫でる。
「これから毎年、最高の誕生日だったって言わせるから楽しみにしててくれ」
「っ……悠真君!」
楓が抑えられないとでもいうように抱きついてきた。
胸元から見上げてくる。
「わ、私だって、悠真君を幸せにしてみせますからっ」
「今以上に?」
「今以上にです」
楓の口調は力強かった。揶揄いの色はない。ただひたすら固い意志が感じられた。
やべぇ、ニヤけちまうな。
「そりゃ楽しみだけど、供給過多には気をつけてくれよ。俺の心臓がもたねえから」
「どの口が言ってるんですか」
楓がイタズラっぽく笑いながら、俺の唇を指で突いてくる。
「はは。一緒に幸せになろうぜ、楓」
「はいっ! 今度とも、よろしくお願いします」
「こっちこそよろしくな」
行為中の相手の心すらも支配しようとするような濃厚なものとは違う、触れるだけのキスを交わす。
「……なんか恥ずいな」
「そうですね」
照れたように笑う楓を腕の中に閉じ込める。
彼女は鼻をスンスンと鳴らし、へにゃりと相好を崩した。
「悠真君に抱きしめられるの、好きです。すごい安心します」
「俺も楓を抱きしめてるとすげえホッとする」
「よかったです。離さないでくださいね?」
「当たり前だ。楓も離れんじゃねえぞ?」
「当然です。悠真君が離れたくなっても離しませんから」
「望むところだ」
絶対に離さない——。
その意思を込めて楓を抱く腕に力を込める。彼女もそれに応えるように力強く抱きしめ返してきた。
俺たちは顔を見合わせてクスクス笑い合った。
顔を近づける。瞳を閉じて上を向いた楓の唇に、再び触れるだけの口付けを落とした。
————————
何らかの形で続きを投稿する可能性もありますが、ひとまず本作品はこれで完結となります。お付き合いいただきありがとうございました!
もし「面白かった」「満足した」という方がいらっしゃいましたら、是非是非この機会にお気に入り登録をしてくださるととても嬉しいです。感想等もどしどしお待ちしています!笑
他にも連載中の作品がいくつかありますので、そちらもよければぜひご一読してみてください~。
お腹いっぱいで疲労も感じていた。すぐに眠ってしまいたい気持ちもあったが、楓と一緒に入るなら億劫ではなかった。
裸体を触れたり拝んだりできるから、というだけではない。
楓が隣にいるだけで、本来なら面倒なはずの作業や行動も楽しくなるのだ。
食器洗いを共同作業にしているのも同様の理由だ。
洗う係と拭く係で別れていたほうが効率的だというのもあるが、それ以上に会話をしながら一緒に作業をしていると、全人類が一度は先延ばしにしたことがあるであろうあの食器洗いですら一つの楽しみになってしまう。
愛の力ってマジで絶大だよな。
俺のほうがケアにかかる時間が少ないため、必然的に先に浴槽に浸かることになる。楓のほうがのぼせやすいため、ちょうどよかった。
楓は体を洗い終えると、俺の足の間に座って背中をもたれ掛けさせてきた。
お腹に手を回し、ぷにぷにと指先で柔らかい感触を楽しむ。楓はくすぐったそうに笑った。
間違いなく腰に硬い感触を感じているだろうが、言及はしてこない。
沈黙が訪れる。居心地の悪さは感じない。
スキンシップを取るときは別として、浴槽に浸かっている間は基本的にはこうして触れ合いつつぼーっとしていることが多かった。
「……まさか、こんなふうになるとは思っていませんでした」
楓がポツポツと話し出した。
「事実が明るみに出ていじめてた人たちや先生が裁かれればいいと思ったし、少しでも話題になって両親が心配してくれないかなって、最初はそんな考えだったんです」
……そりゃそうだよな。
親から楓のような扱いを受けていたらと思うとゾッとした。俺は知らずのぎゅっと拳を握り込んでいた。
気配の変化を感じ取ったのか、楓が振り返った。困ったように眉を下げて笑った。
握りしめたままだった俺の手を、いたわるようにそっと包み込んだ。
「そんな沈んだ表情をしないでください。いじめっ子たちは悠真君が消してくれましたし、両親のこともある程度諦めることができましたから」
「……そうか」
楓の表情は晴れ晴れとまではいかずとも、口調に見合う穏やかなものだった。
そうです、と彼女は微笑んだ。
「寂しさが全くないと言えば嘘になりますが、今の私にはそれを補ってあまりあるほどの愛情と幸せを与えてくれる人がそばにいるのですから」
楓ははにかむように笑った。胸に頭をもたれて体重を預けてきた。
(好きだなぁ)
俺は安心させるように力強く抱きしめた。
「任せてくれ。これからも何があっても、俺が絶対に楓のことを幸せにするから」
「ダメです」
「えっ?」
俺は目を瞬かせた。
今、ダメですって言われた?
「悠真君が幸せじゃないと私も幸せになれませんから。一緒に幸せになりましょう?」
「っ……あぁ、そうだな」
俺はより一層、力強く華奢な体を抱きしめた。
楓がくるりと振り向いた。
——その顔には、今までとは雰囲気の違う妖艶な笑みが浮かんでいた。
「それでは一緒に幸せになれるコト、しましょうか」
楓の手が蛇のように素早く伸びて、俺のモノを掴んだ。
全身がゾクゾクした。
「い、今から?」
「はい。何かご不満ですか?」
「いや、不満はねえけど——」
「そうですよね。もうこんなにカチカチなんですから」
楓の手が上下にゆっくりと動く。
誘うように、焦らすように。
「ふ、不満はねえけどさ、楓は疲れてねえのか?」
「疲れてますけど、プレゼントは翌日にもらっても価値が下がってしまいますから。それに、ケーキの分の運動もしなくちゃいけませんしね」
だんだんと楓の手の動きが早くなる。
彼女がいいならこちらも楽しませてもらおう。
風呂場ではあえて前戯までしか行わなかった。バスローブを巻いただけの格好でベッドに向かった。
俺は最高潮まで昂っていた。ベッドに上るなり、一糸纏わぬ姿になって楓に覆い被さった。
「ふふ、もう準備万端なご様子ですね」
楓が俺のイチモツに触れ、嬉しそうに笑った。
「楓もだろ?」
「ん……!」
不意打ちで秘部に手を伸ばすと、水音と嬌声が俺の言葉を肯定するように響いた。
楓がサッと顔を赤くさせた。
「ゆ、悠真君。もうっ……」
「あぁ」
素早く防具をつけ、挿入する。
「楓、痛くないか?」
「大丈夫です……ねぇ、悠真君」
楓が鼻にかかったような甘い声を出した。
「おう?」
「今はまだですけど、いつか直接プレゼントしてくださいね」
「っ……あぁ、もちろん!」
俺は込み上げてきた想いを余すところなく楓にぶつけた。
彼女も必死にそれに応えてくれた。
そしていつも通り、後半戦は楓に主導権を握られた。
◇ ◇ ◇
行為を終えて軽くシャワーだけ浴びた後、俺が楓を腕枕する体勢で横になっていた。
背中を向けていた楓が、不意にゴロンとこちら側に向き直る。何かを伝えようとしているような、真剣な表情だった。
「悠真君」
「ん?」
「私、今すごく幸せです。最高の誕生日をありがとうございます」
「おう」
腕枕をしている手を持ち上げ、楓の後頭部を撫でる。
「これから毎年、最高の誕生日だったって言わせるから楽しみにしててくれ」
「っ……悠真君!」
楓が抑えられないとでもいうように抱きついてきた。
胸元から見上げてくる。
「わ、私だって、悠真君を幸せにしてみせますからっ」
「今以上に?」
「今以上にです」
楓の口調は力強かった。揶揄いの色はない。ただひたすら固い意志が感じられた。
やべぇ、ニヤけちまうな。
「そりゃ楽しみだけど、供給過多には気をつけてくれよ。俺の心臓がもたねえから」
「どの口が言ってるんですか」
楓がイタズラっぽく笑いながら、俺の唇を指で突いてくる。
「はは。一緒に幸せになろうぜ、楓」
「はいっ! 今度とも、よろしくお願いします」
「こっちこそよろしくな」
行為中の相手の心すらも支配しようとするような濃厚なものとは違う、触れるだけのキスを交わす。
「……なんか恥ずいな」
「そうですね」
照れたように笑う楓を腕の中に閉じ込める。
彼女は鼻をスンスンと鳴らし、へにゃりと相好を崩した。
「悠真君に抱きしめられるの、好きです。すごい安心します」
「俺も楓を抱きしめてるとすげえホッとする」
「よかったです。離さないでくださいね?」
「当たり前だ。楓も離れんじゃねえぞ?」
「当然です。悠真君が離れたくなっても離しませんから」
「望むところだ」
絶対に離さない——。
その意思を込めて楓を抱く腕に力を込める。彼女もそれに応えるように力強く抱きしめ返してきた。
俺たちは顔を見合わせてクスクス笑い合った。
顔を近づける。瞳を閉じて上を向いた楓の唇に、再び触れるだけの口付けを落とした。
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