自殺しようとしているクラスメートを止めたら、「じゃあ私を抱けるんですか?」と迫られた

桜 偉村

文字の大きさ
上 下
22 / 29

第22話 練習試合

しおりを挟む
 最寄り駅に着くタイミングで、むにゃむにゃ言っているかえでをなんとか立ち上がらせた。
 家までの道のりも半分夢の中だった。

「ほら、楓。風呂入んないとだぞ」
「んー……やだ」
「やだじゃない。かわいく言っても無駄だ」
「じゃあ、ゆうまくんといっしょならはいる……」
「お、おう」

 楓は疲労のためか幼児退行してしまっていた。舌足らずだし、敬語も外れている。
 はっきり言ってめちゃくちゃ可愛かったし、本当に幼子をお世話しているような気分になった。
 一緒に入ろうとせがまれて、断れるはずもなかった。

 入浴中も最初はうつらうつらとしていたが、なんとか自分で体を洗わせているうちに意識がはっきりしてきたようだ。
 パチパチと瞬きをしたあと、彼女はポッと火が出そうなほど赤くなった。

 のぼせた……わけはない。
 なんとなく先程までの自分がよみがえってきたんだろう。

「はぅ……!」

 そっと顔を覆ってうめく楓が可愛くて、俺はたまらず笑い声をあげてしまった。
 キッと睨まれた。

「さ、さっきまでのことは忘れてください……!」
「いや、無理だろ。めっちゃ可愛かったし」
「っ~! も、もうこうなったらっ」

 楓が何の前触れもなく、俺のイチモツを握りしめてきた。

「うっ……い、いきなりどうした⁉︎」
「悠真君にも可愛く喘いで恥ずかしい思いをしてもらいます!」
「なっ、ちょ……⁉︎」

 それから、楓は彼女が手と口を駆使して怒涛の攻撃を仕掛けてきた。
 それに加えて、今回は言葉責めまでしてきた。

 悠真君、目を閉じて息が荒くなってますよ。そんなに気持ちいいんですか——。

 手で弄ばれながら上目遣いでそんなことを言われ、全身がゾクゾクした。
 無言を貫こうとしたが、耐え切るのは無理だった。

 ま、それ以上に気持ちよかったからほとんどただのご褒美みたいなもんだったんだけど、楓が満足そうにしていたのでそれは言わなかった。



 結局、好き放題攻め立てられたあとは楓が所望したため、そのまま風呂場で体を重ねた。

「疲れました……」
「そりゃそうだろうな」
「なんですか、その適当な返事は」

 楓は不満そうな表情を浮かべた。

「いや、練習試合でクタクタになってたのにあれだけ激しくしたらそりゃ疲れるよなって」
「きょ、今日は悠真ゆうま君のほうが激しかったですもん」

 赤面した楓が、瞳を潤ませながら拳を握りしめて抗議してくる。可愛いかよ。

「まあ確かにな」

 遠くまで観戦に行って立ちっぱなしだったとはいえ、楓に比べれば体力は残っていた。
 久しぶり、というよりほとんど初めて終始主導権を握っていられたので、ついハッスルしてしまった。

「おかげさまで腰が痛いです」
「悪い悪い」
「本当に悪いと思ってます?」
「思ってるぞ」

 いわゆるえび反りが想像以上に官能的で、ついついその姿勢をさせすぎた自覚はあった。

「じゃあ……マッサージしてください」
「マッサージ? いいけど」
「やった」

 楓は嬉しそうな、それでいて安心したような笑みを浮かべた。
 ベッドにうつ伏せになった彼女の上に膝立ちのような状態でまたがり、腰を指圧する。

 最近わかってきたことだが、彼女は基本的に自分から甘えることが上手ではない。
 俺の行動や言動に対してのリアクションだったり、今回のように俺のやらかしにつけ込むことでしか何かを要求してこないのだ——特に、普通のスキンシップに関しては。

 いじめのトラウマもそうだし、これに関しては何より親からほとんどネグレクトのような扱いを受けているのが原因なんだろうな。
 アクションにせよリアクションにせよ、まだどこか断られたらどうしようという怯えが垣間見える。

 俺が愛情表現を積極的に行なったり、ときにはやりすぎかなと思いつつも揶揄っているのは、彼女が甘えたり何かを要求したりしやすい環境を作り出しているという側面もあるのだ。
 決して恥ずかしがる彼女を見たいという本能に従っているだけではないことはここに表明しておこう——比率はまた別の話として。

 それにしても、と俺は気持ちよさそうに目を閉じてリラックスしている楓の体を見下ろした。
 端的に言って、エロいな。

 夏の風呂上がりということもあり、薄い白シャツだった。ブラジャーが少し透けているし、短パンからは細くてすべすべした生足が惜しげもなくさらされている。
 腰回りも細いものの女性らしい柔らかさと弾力があって、喋ったり呼吸をするたびに上下左右に動く筋肉の感覚が妙になまめかしかった。

「楓、力加減はどうだ?」
「気持ちいいです……ん……」

 楓が鼻から抜けるような色っぽい声を出した。
 その時点で先程戦いを終えて休息を取っているはずの愚息が「俺いつでもイケるっすよ!」と声高に存在を主張し始めていたが、無視した。
 うつらうつらしている恋人に行為を強いるほど鬼畜じゃないからな。

 視覚と触覚に加えて、もわもわとほのかに立ち上ってくるシャンプーだかリンスだかの甘さを含んだ香りも理性をゴリゴリに削ってきたが、楓が完全に寝入るまでなんとか耐え切った。
 はっきりと寝息が聞こえてきて、思わず息を吐いてしまった。そこまで長くはないが、過酷な戦いだった。

 とはいえこれは俺自身の戦いだ。楓が寝たからといって即終戦というわけではない。
 むしろここからが本番だ。

 一瞬、先の丸まった槍から遠距離魔法を放ってしまおうかとも考えた。楓の家で、しかも彼女がいる状態で一人でするのは背徳感も相まって素晴らしい時間になるだろう。
 しかし、なんとなく失礼な気もした。もしかしたら楓が嫌がる可能性だってあるかもしれない。

「……よしっ、YouTubeでも見てそれでも収まらなかったらにしよう」

 慣れた手つきでテレビを操作し、YouTubeを起動する。
 楓も好きな芸人さんの動画を見て笑い転げているうちに、構ってもらえなかった愚息はすっかり意気消チンしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

処理中です...