最終的に悪役の令嬢が破滅する話

枕返し

文字の大きさ
上 下
4 / 6

聖女の影響

しおりを挟む
その影響は徐々に色濃くなっていく。
アウルはもうアリエスに悪戯をしてはいない。
アウルはアリエスに恋をしたのだ。それも悪戯もできないほど強烈に。
それはアウルの友達、リッツも同様。
私は一年前、独りぼっちで可哀想なアリエスを少し気にかけてあげてほしいとお兄様に言った。
今ではその優しさめいたものを後悔している。
ついにお兄様までも陥落し、最近ではご友人のライド様までもアリエスにご執心のようだ。
そして、アリエスの魔手はロスター様にまでおよんでいる。
私は眩暈がした。


アウルはあの娘の気を引くためスポーツ等で良い所を見せようと必死になっている。
リッツはあの娘を恋人のようにエスコートして周囲を牽制することに躍起だ。
お兄様はお父様の跡を継ぐ勉強のための留学を取り止め、あの娘の近くにいようとする。
ライド様はあの娘を社交界に連れて行って自分の物であるかのようにアピールしている。
ロスター様は勉強を教えるということを口実にあの娘と二人きりになろうとする。今までそんなことは誰にもしたことはなかったのに。あれだけ強く賢い女性になれと言っていたのに、結局は女性らしく、少しドジなところのあるアリエスに特別な愛情を注ぐのだと思うと気分が悪くなる。ロスター様はもう私の憧れたロスター様ではなくなっていた。

なんて醜いのだろう。
私が幼い頃から憧れていた男性はこんなにも浅ましかったのだと思い知らされた。


そして、周囲の男性が狂うと私の友達にも影響が出てくる。
ライザはアウルがアリエスにばかり構うようになってしまって露骨に落ち込んでいる。その表情はまるでこの世の終わりを迎えているかのようで見ていられない。
アンナはリッツを諦めることができたようだが、そもそもこの西アルグ地方の男性の全てがアリエスに骨抜きにされているものだから、男性というものに幻滅したようで妙な趣向に走りそうで不安だ。
だが最も不憫なのはリィズだろう。
リィズはロスター様の理想の女性になろうと一生懸命学び、女だからと軽んじられることはもうなくなった。だが男性に引けを取らぬ強い女性になったリィズは今や社交界で疎ましく思われるだけの存在になった。
ロスター様に裏切られたことに心を病んでしまったリィズは家に引きこもってしまった。この前会った時はあの聡明なリィズの面影は全くなく、それは酷い有様だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

【完結】慈愛の聖女様は、告げました。

BBやっこ
ファンタジー
1.契約を自分勝手に曲げた王子の誓いは、どうなるのでしょう? 2.非道を働いた者たちへ告げる聖女の言葉は? 3.私は誓い、祈りましょう。 ずっと修行を教えを受けたままに、慈愛を持って。 しかし。、誰のためのものなのでしょう?戸惑いも悲しみも成長の糧に。 後に、慈愛の聖女と言われる少女の羽化の時。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

処理中です...