最終的に悪役の令嬢が破滅する話

枕返し

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幸せな日々

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私の名前はアイリス。
緑豊かな地、西アルグ地方の貴族の娘として生まれた。
私の家族は、仕事熱心で人望の厚いお父様。
使用人とも分け隔てなく接する朗らかなお母様。
父の跡を継ぐために熱心に勉強するお兄様。
そして優しい使用人たち。
私はそんな人々に蝶よ花よと可愛がられ、何一つ不自由することなく育った。
それは幸福な毎日だった。


私はお友達にも恵まれていた。
大人しくて花を育てるのが大好きなライザ。
お転婆で正義感の強いアンナ。
頭が良くて動物にも好かれるリィズ。
私達4人はいつも一緒。
家族のこと、夢のこと、色んな話をした。
その中でも一番盛り上がったのは意中の男性の話だった。

「アイリスのお兄さんのジュリアン様、本当にカッコいいよね。羨ましいなあ。」
「ええ。お兄様は私の自慢です。でも素敵ということで言ったらリィズさんのお兄様も素敵ですよね。男らしく引っ張ってくれそうな力強さがあって。」
「ジュリアン様とライド様、とっても仲がよろしいですよね。見目麗しい二人が並んでいるとまるで絵画のようです。この前拝見した時つい見とれてしまいましたもの。」
「・・・兄は皆さんが仰るような男性ではありませんわ。あれは男らしいのではなく自分勝手なだけです。」
「そこがまた魅力的なのですよ。あんなお方に強く手を引かれたらどうにかなってしまいそうですもの。」
「お世辞でもあれを褒めるのはお止めなさい。あんなのは遠目でたまに見るからマシに見えるのです。いつも一緒だと辟易してしまいますわ。ライザさんは、アウルがああならないように今の内からしっかり手綱を握っておいた方がいいですよ。」
「そうだぞ、ライザは大人しいからな。どっかで強く言わないとずっと今のままも関係性になっちゃうぞ。」
「な、なんでそこでアウル君が出てくるのぉ・・・。」
ライザは顔を赤くして俯いてしまった。

アウルは私達と年の近い男の子。根は良い人であることは認めるが、好きな女の子にどう接していいかわからず悪戯をしてしまうような男の子。まだまだ子供。
私はそんな男性に熱を上げるのは程々にした方がいいと思うのだけど、当のライザは「私が悪いから・・・」「アウル君は優しいから・・・」と言って聞かない。
そんな二人を見ていると微笑ましい気分になるのは確かだ。
アンナがついライザをからかいたくなる気持ちもわかる。
当のアンナもアウルの友達のリッツが好きなのだ。
リッツはいつも背伸びして紳士ぶっているが、お兄様方と比べるとどこか足りないところがある男の子。私はまだまだ子供だなと思うのだが、アンナはそこが良いって言っている。私にはちょっとわからない。


私は断然、大人の余裕のある年上の男性が好き。
私がお慕いしているのはロスターニュ様。
「女性が学問をしても無駄だ」という男性も多い中、ロスター様は「これからは女性も学び、強く、賢くなり男性と肩を並べる時代だ」と私たちに勉学を教えて下さっている。
私はそんなロスター様のお言葉に心を打たれた。
いつかロスター様の隣でお支えできる女性になりたいと思って日々勉強している。
でも私と同じようにロスター様に憧れる女性は多い。リィズもその一人。
リィズはロスター様に認めて頂こうと私以上に勉学に励んでいる。
自分に厳しく努力するその姿は気高くさえある。
友達だからと言って引くつもりはないが、もしロスター様がリィズを選んでも悔しくはないかも知れない。
むしろリィズを選ばなかったらロスター様は女性を見る目がないと思ってしまいそう。
そう思ってしまうくらいロスター様とリィズはお似合いで、そのことは少し悔しい。


私は恵まれているのだろう。
ここ、西アルグには悪人はおろか意地悪な人だって一人もいない。
だから今まで嫌な思いをしたこともない。幸せな日々。
明るい未来。大人になるのが楽しみだった。

そんなある日、ロスター様が一人の女性を私達に紹介した。
その女性の名前は、アリエス。
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