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第六十五話 二つの扉
しおりを挟む梅男達はホテルを出発して商業地区に行ってみると厳戒態勢は解除されておりレース場の近くまで難なく移動が出来た。
梅男:皆さん普通の生活に戻ってるようで良かったですね。
ナツ:そうね。
ナツはそっけない返事をしたかと思うとマツダの方は険しい顔をしていた。
マツダ:早くしないとビスケット様の身が危ないかもしれません。
梅男:え、それってどういう?
ナツ:急ぎましょ。梅男さん行くわよ!
梅男:は、はい。
二人の危機迫る空気を感じ取ると何も聞けず梅男は黙ってついて行くしかなかった。
そしてレース場の入り口に着くと既にセブンと長老が待っていた。
長老:随分と早かったのぉ。
マツダ:はい。長老様が言った通り軍の者が居らず誰にも邪魔されずに来れました。
ナツ:それにしてもここにも軍人が一人もいないようね。
周辺を見渡しても誰もいる様子はなかった。
セブン:皆さんが来る前に確認しましたが場内は誰もいません。
ファル:無駄に静かで入るのが怖いですね。
長老:だが、行くしかなかろう。
ナツ:そうね。梅男さん、何かあったら一番に逃げるのよ?
梅男:は、はい。でも、どこに逃げれば良いのか。
ユイ:私が梅男様の後ろにいます。いざとなったら誘導しますのでご安心して下さい。
梅男:わ、分かりました。
横にいるファルコンが梅男に対して『大丈夫』と言わんばかりに頷いた。
マツダ:さあ、城内に入る秘密の通路を探そう。
ナツ:パヨとペウンが描かれた壁画の大回廊にきっとあるはず。
梅男達は場内に入ると壁画がある大回廊に真っ先に向かった。
ナツ:梅男さん、初日にここに来たのよね?
梅男:はい。カイさんがここに連れて来てくれてパヨペウンの話を聞かせてくれました。
マツダ:抜け道があるとすると・・。
大回廊には右手にパヨとペウンが相向かいに剣を持ちその間に木製のドアが一つあり、片方にはパヨとぺヨンの愛馬が相向かいになっておりそこにも金属製のドアがあった。
セブン:今まで気に留めてなかった・・。ドアが二つ相向かいにあったんですね。でも、これって偶然なのかな?
長老:わしはドアがあるのは知っておったが開けようと思った事は今日まで一度もなかったわい。
マツダ:どちらか抜け道に続いてるはず。開けてみましょう。
一同が頷くとパヨペウンが描かれてる木製のドアをマツダが開けてみた。
だが、現れたのはレンガで塞がれた壁だった。
ファル:ダメですね、完全に塞がれてます。
ファルコンがレンガを押したり隙間がないか確認したがびくとも動く気配はなかった。
ナツ:こっちの扉じゃないとしたら。
全員が振り返り愛馬の間にある錆切った鉄製の扉を見つめた。
鉄製の扉は閂がされており壁に扉ごと埋もれていた。
セブン:こちらの扉は壁に埋もれていて開きそうにもないですね。
長老:ふむ。両方ダミーって事かの。
マツダ:もしかしたら他に扉があるかもしれない。手分けして見てみよう。
梅男以外はその場から散ると扉がないか大回廊の壁をペタペタ触り出した。
梅男:(カイさんがもしここに誘導してるとしたら・・・)
梅男はカイに連れて来た時の事を思い出していた。
ほんの数日前だがレース場に案内してくれたカイはとても優しく気さくで騙すような人には思えなかった。
大回廊に案内してくれた時もパヨペウン伝説を詳しく話してくれた。
カイはパヨペウンの壁画を見ながら誇らしげに説明していた。
梅男はパヨペウンの壁画を見上げてカイが話していた内容を思い出してみた。
(カイ:パヨペウンは敵に城をぐるっと囲まれた事があったのですが、どこからともなく愛馬と現れたと言い伝えがあるんです。
梅男:そんな伝説があるんですね。でも、城を囲まれていたのにどこから現れたんですか?
カイ:さあ?でも、パヨペウンは色んな場所に仕掛けを作るのが得意だったとも言われてます。)
梅男:(仕掛け・・もしかして)
梅男は鉄の扉に何かあるかもしれないとあちこち触りだすと閂の下にある出っ張りに気がつき試しに押して見た。
すると、ゴゴゴと鈍い音をしながら鉄の扉が壁から浮き出して来た。
その音に反応したマツダ達が何事が起きたのかと梅男の元に集まって来たのであった。
つづく
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