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第五十九話 高熱の荒正
しおりを挟む梅男:実は・・今回パヨペウン国に来た理由はナツさん以外にもお見合いの件もあったからなんです。
ファル:ふむふむ。なるほど。
ファルコンは納得した様子で何度も頷いた。
ファル:成功すると良いですね。
梅男:いやぁ、それがお互いお見合いに興味は無さそうだからどうかな。まぁ、無理やりくつくてもね?
ファルコン:確かに・・。でもこれも何かの縁ですから、私に出来る事がありましたら言って下さい。
梅男:はい。ありがとうございます。
ファルコン:では、とりあえず、昼食と夕食をすぐに食べれるようにここで調理してしまおうと思います。
梅男:分かりました。
それから梅男とファルコンは手軽に食べれる軽食を作り、飲み物や必要なものを詰め始めた。
梅男:これで準備は良いかな?
ファルコン:はい。助かりました。荷物は玄関まで運んでおきますので、梅男様も荷物をまとめて来て下さい。
梅男:分かりました。ちょっとついでに娘と荒正くんの様子も見て来ます。
ファルコン:かしこまりました。
梅男はファルコンにぺこりと頭を下げると二階の美留來の部屋へと小走りで向かった。
美留來の部屋の前でドアを軽くトントンと叩いてみたが反応がなかった。
もしかしたら荒正の部屋にいるかもしれないと隣を見るとドアが軽く開いていた。
梅男:荒正くんどうだい?
部屋の中に入ると荒正はだるそうにベッドに腰掛けており、美留來が代わりに荷物をまとめているようだった。
美留來:熱がさっきよりも上がってるみたい・・。
荒正:大丈夫・・これくらいなら。
荒正が立ちあがろうとしたが熱が高いせいか腰を浮かせたものの力が入らずまた座り込んでしまった。
梅男:大丈夫じゃないよ・・さっきよりも顔も赤いし・・。
美留來:うん・・。
そこへ準備が出来た事を知らせにファルコンがやって来た。
ファルコン:準備が出来ました。荒正様の体調はどうでしょうか?
梅男:かなり熱が高いみたいです。
ファルコン:失礼します。
ファルコンが体温計を荒正の額に当てるとピピっと音がした。
梅男:どうですか?
ファルコンが体温計を梅男の方に向けるとそこには三十九度の表示が出ており、荒正が自力で歩く事は困難だと思えた。
ファルコン:かなり高いですね・・。早くお医者様に診て貰った方が良さそうです。
美留來:そうかもしれないけど・・荒正くん歩けそうにないよ?
ファルコン:そうですね、なので私が背負って歩きます。
梅男:ええ・・?!ファルコンさん足の方は大丈夫なんですか?
ファルコン:以前よりは良くなって来てるので大丈夫だと思います。その代わり梅男様と美留來様に荷物を持って貰う為、持って行く物は最小限にして頂けますか?
梅男:分かりました。美留來、手分けして荷物を減らそう。
美留來:わ、分かった。
ファル:では、私は先に荒正様を階下にお連れします。
ファルコンは高熱で気だるそうな荒正の左腕を自分の肩に回し、右腕で荒正の体を支えながら立たせた。
ファル:このまま玄関まで行きますよ。
荒正:すみません・・・。
普段の荒正なら「一人で歩ける、余計な事をするな」と言いそうだが、あまりの高熱にその気力さえもないようだった。
荒正がファルコンに体を預ける形でゆっくりと部屋を出ていくと梅男と美留來は急いで荷物をまとめ直した。
梅男:こんなものかな?美留來はどうだい?
美留來:私の方は大丈夫。
梅男:よし、行こう。
荷物を持って小走りで階段を降りるとファルコンの横にいる荒正は意識が朦朧としているかのように目が虚ろだった。
梅男:お待たせしました。
ファル:では、荒正様を私が担ぎますので梅男様がこちらの荷物を持って貰えますか?
梅男:分かりました。美留來すまないけど私の荷物を持ってくれるかい?
美留來:わかった。
ファル:では、行きましょう。
ファルコンはぐったりした荒正を肩に乗せると歩き出した。
それから荒正の様子を見ながら山を降りたものの、荒正を担いでいるファルコンの体力もかなり消耗しているようで休憩する間隔も増えて来ていた。
本来なら夜までに下山が出来る筈だったが中腹あたりで辺りが暗くなってしまった。
これ以上は下山するのは困難だと思った梅男はファルコンに声かけた。
梅男:ファルコンさん、流石に休んだ方が良いんじゃ。
ファル:そうですね。さすがにこれ以上は私が体力が持ちそうにもないのでこの辺りでテントを張ろうと思いますがよろしいでしょうか?
梅男:もちろん。
美留來:助かった。もうへとへと。
美留來も疲れていたようでその場に座り込んだ。
梅男:美留來、よく頑張ったね。荒正くんと少しそこで休んでなさい。
梅男はファルコンとテントを張ると、ぐったり座り込んでる荒正を起こしてテントの中へと移動させた。
それからファルコンは手際よく火を起こし食事の用意を始めた。
梅男:ファルコンさん、お疲れでしょう、少し休んで下さい。食事なら私が用意しますよ。
ファル:梅男様ありがとうございます。助かります。
ファルコンは足に相当負担がかかっていたようでふくらはぎを自分の手で揉みほぐしていた。
そして梅男とファルコンの向かいに座っている美留來は荒正が心配なのかテントの方を見ていた。
その時、美留來の背後からパキパキと枝が折れる音が聞こえて来た。
つづく
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