かずのこ牧場→三人娘

パピコ吉田

文字の大きさ
上 下
55 / 65

第五十四話 最強の二人

しおりを挟む

 翌朝、梅男は朝食を食べ終わると美留來達がいる小屋に行く為に支度をしていた。
 
 早く娘に会いたいと気が早るのを抑えながら支度が終わると玄関ホールへと降りた。
 
 既に玄関ホールにはファルコンがおり、給仕の服ではなく登山用の服装で待っていた。
  
 そこへナツが辛そうな表情で階段から降りて来た。
 
ナツ:梅男さん申し訳ないのだけど筋肉痛が酷くて私は行けそうにないわ・・いたた。
 
梅男:ナツさん、休んでて下さい。私とファルコンさんで行って来ます。
 
ナツ:すみません。気をつけて下さいね。何かあればセブンに助けに行かせますから。
 
 ナツはそう言うと重い足取りで階段を上がって行った。
 
梅男:では、ファルコンさん道案内お願いします。
 
ファルコン:はい。梅男様は体力的には問題なさそうですね。
 
 ファルコンは梅男の体格を見てニッコリと笑った。
 
梅男:はい。毎日重い物を持ってますから。
 
 梅男は自慢げに腕の筋肉を見せつけた。

ファルコン:頼もしいですね。では、参りますか。
 
梅男:はい。
 
 梅男はファルコンと共に小屋がある山路の方へと歩き出した。
 
 二人は小屋へと登り続けお昼頃になると一旦休憩する事になった。
 
 ファルコンがその場でシートを敷くとその上に小さなテーブルと椅子を置いてくれた。
 
ファルコン:どうぞお座り下さい。
 
梅男:ありがとうございます。
 
 梅男が椅子に座るとファルコンが手際よくテーブルに食事を並べ出した。
 
 事前にどんな食べ物を食べているのかチェックしていたようで、おにぎりや卵焼きに漬物など梅男が好きな物が並んでいた。
 
梅男:美味しそう。自分だけ食べるのは申し訳ないんでファルコンさんも一緒に食べませんか?
 
ファルコン:では、お言葉に甘えて。
 
 ファルコンはシートの上に座ったのを見て梅男は食べ始めた。
 
梅男:では、いただきます。
 
 梅男がお箸を持って手を合わせると、それに合わせてファルコンも手を合わせた。
 
梅男:ん!?このおにぎり美味しいです。
 
ファルコン:お口に合って良かったです。
 
梅男:この食材はこの国にあるんですか?
 
 この国に漬物など類似品はあるとしても、全く同じ味の物はあるのかと梅男は疑問に思った。
 
ファルコン:食材は全てお取り寄せです。
 
梅男:やはり。でも、どうやって?
 
ファルコン:マツダ様とユイとカイがそちらにご挨拶に伺った際、ビスケット様達が何を食しているのかリサーチして貰い、足りない食材を購入して頂きました。
 
梅男:なるほど。準備万端すぎる。そういえば、ユイさんとカイさんを呼び捨てにしてましたけどお知り合いですか?
 
ファルコン:はい。私も以前は軍に所属しておりましてユイとカイは同期なんです。
 
梅男:そういう事でしたか。
 
ファルコン:はい。
 
梅男:軍は何故お辞めに?あ、答えたくなければ答えなくても良いです。
 
ファルコン:問題ないです。軍に入隊してすぐに私とカイとユイはカイの父であるサイ・レント様の部隊に所属していました。

梅男:カイさんのお父さんですか。
 
ファルコン:ええ。とても正義感の強く誠実な方でとても厳しいお方でした。ですが、優しい面もあり隊員にも慕われていて次期軍隊長と言われていたお方です。
 
梅男:ほう、カイさんにとっては自慢のお父さんだったんですね。
 
ファルコ:はい。数年後にカイとユイはマツダ様の父上の部隊に移動になり、私はそのままサイ様の部隊に残る形になりました。
 
 ファルコンは遠くを見つめながら当時の事を思い出しているように見えた。
 
ファルコン:そして二年後に隣国のヌーベル国が他の国から攻め込まれる事態が起きたのです。
 
梅男:!!ヌーベル国とは?
 
ファルコン:この国は元は一つの連邦に属していた過去があり、色々あった後にパヨペウン国は独立したのです。その際に周辺の国と協定を結んだのです。
 
梅男:協定ですか。
 
ファルコン:はい。有事の際はお互い兵を出し防衛する協定です。サイ様は勇敢なお方です。真っ先に志願をして私も一緒に参加しました。
 
 気軽に聞いた筈なのに話が深刻な方向になって来て梅男は「なるほど」としか相槌が打てなくなっていた。
 
ファルコン:その時に今の軍隊長のコキ・ブルーノ隊長も一緒の部隊に所属していました。
 
 カイの父の部隊に現隊長が所属していたと聞き、ファルコンは軍の中でもトップクラスの部隊に所属していたのだと梅男は感嘆した。
 
ファルコン:そして私達の部隊は最前線に配属されました。サイ様とブルーノ様のツートップは最強でした。味方の前線をグイグイ押し上げ他の隊員は二人について行くのがやっとでした。私も含めて。
 
梅男:大活躍ですね。それで?
 
ファルコン:ある朝、敵が手薄な場所があると連絡が入り、私達の部隊はその場所に向けて移動を開始しました。そしてその日に・・。
 
梅男:む、無理に話さなくても大丈夫ですよ・・?
 
 ファルコンが急に口を噤んだので梅男は心配になった。
 
ファルコン:・・・大丈夫です。
 
 ファルコンは梅男に愛想笑いをすると続きを話し出した。
 
つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夏と夏風夏鈴が教えてくれた、すべてのこと

サトウ・レン
青春
「夏風夏鈴って、名前の中にふたつも〈夏〉が入っていて、これでもかって夏を前面に押し出してくる名前でしょ。ナツカゼカリン。だから嫌いなんだ。この名前も夏も」  困惑する僕に、彼女は言った。聞いてもないのに、言わなくてもいいことまで。不思議な子だな、と思った。そしてそれが不思議と嫌ではなかった。そこも含めて不思議だった。彼女はそれだけ言うと、また逃げるようにしていなくなってしまった。 ※1 本作は、「ラムネ色した空は今日も赤く染まる」という以前書いた短編を元にしています。 ※2 以下の作品について、本作の性質上、物語の核心、結末に触れているものがあります。 〈参考〉 伊藤左千夫『野菊の墓』(新潮文庫) ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』(ハヤカワepi文庫) 堀辰雄『風立ちぬ/菜穂子』(小学館文庫) 三田誠広『いちご同盟』(集英社文庫) 片山恭一『世界の中心で、愛をさけぶ』(小学館文庫) 村上春樹『ノルウェイの森』(講談社文庫) 住野よる『君の膵臓をたべたい』(双葉文庫)

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...