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第五十四話 最強の二人
しおりを挟む翌朝、梅男は朝食を食べ終わると美留來達がいる小屋に行く為に支度をしていた。
早く娘に会いたいと気が早るのを抑えながら支度が終わると玄関ホールへと降りた。
既に玄関ホールにはファルコンがおり、給仕の服ではなく登山用の服装で待っていた。
そこへナツが辛そうな表情で階段から降りて来た。
ナツ:梅男さん申し訳ないのだけど筋肉痛が酷くて私は行けそうにないわ・・いたた。
梅男:ナツさん、休んでて下さい。私とファルコンさんで行って来ます。
ナツ:すみません。気をつけて下さいね。何かあればセブンに助けに行かせますから。
ナツはそう言うと重い足取りで階段を上がって行った。
梅男:では、ファルコンさん道案内お願いします。
ファルコン:はい。梅男様は体力的には問題なさそうですね。
ファルコンは梅男の体格を見てニッコリと笑った。
梅男:はい。毎日重い物を持ってますから。
梅男は自慢げに腕の筋肉を見せつけた。
ファルコン:頼もしいですね。では、参りますか。
梅男:はい。
梅男はファルコンと共に小屋がある山路の方へと歩き出した。
二人は小屋へと登り続けお昼頃になると一旦休憩する事になった。
ファルコンがその場でシートを敷くとその上に小さなテーブルと椅子を置いてくれた。
ファルコン:どうぞお座り下さい。
梅男:ありがとうございます。
梅男が椅子に座るとファルコンが手際よくテーブルに食事を並べ出した。
事前にどんな食べ物を食べているのかチェックしていたようで、おにぎりや卵焼きに漬物など梅男が好きな物が並んでいた。
梅男:美味しそう。自分だけ食べるのは申し訳ないんでファルコンさんも一緒に食べませんか?
ファルコン:では、お言葉に甘えて。
ファルコンはシートの上に座ったのを見て梅男は食べ始めた。
梅男:では、いただきます。
梅男がお箸を持って手を合わせると、それに合わせてファルコンも手を合わせた。
梅男:ん!?このおにぎり美味しいです。
ファルコン:お口に合って良かったです。
梅男:この食材はこの国にあるんですか?
この国に漬物など類似品はあるとしても、全く同じ味の物はあるのかと梅男は疑問に思った。
ファルコン:食材は全てお取り寄せです。
梅男:やはり。でも、どうやって?
ファルコン:マツダ様とユイとカイがそちらにご挨拶に伺った際、ビスケット様達が何を食しているのかリサーチして貰い、足りない食材を購入して頂きました。
梅男:なるほど。準備万端すぎる。そういえば、ユイさんとカイさんを呼び捨てにしてましたけどお知り合いですか?
ファルコン:はい。私も以前は軍に所属しておりましてユイとカイは同期なんです。
梅男:そういう事でしたか。
ファルコン:はい。
梅男:軍は何故お辞めに?あ、答えたくなければ答えなくても良いです。
ファルコン:問題ないです。軍に入隊してすぐに私とカイとユイはカイの父であるサイ・レント様の部隊に所属していました。
梅男:カイさんのお父さんですか。
ファルコン:ええ。とても正義感の強く誠実な方でとても厳しいお方でした。ですが、優しい面もあり隊員にも慕われていて次期軍隊長と言われていたお方です。
梅男:ほう、カイさんにとっては自慢のお父さんだったんですね。
ファルコ:はい。数年後にカイとユイはマツダ様の父上の部隊に移動になり、私はそのままサイ様の部隊に残る形になりました。
ファルコンは遠くを見つめながら当時の事を思い出しているように見えた。
ファルコン:そして二年後に隣国のヌーベル国が他の国から攻め込まれる事態が起きたのです。
梅男:!!ヌーベル国とは?
ファルコン:この国は元は一つの連邦に属していた過去があり、色々あった後にパヨペウン国は独立したのです。その際に周辺の国と協定を結んだのです。
梅男:協定ですか。
ファルコン:はい。有事の際はお互い兵を出し防衛する協定です。サイ様は勇敢なお方です。真っ先に志願をして私も一緒に参加しました。
気軽に聞いた筈なのに話が深刻な方向になって来て梅男は「なるほど」としか相槌が打てなくなっていた。
ファルコン:その時に今の軍隊長のコキ・ブルーノ隊長も一緒の部隊に所属していました。
カイの父の部隊に現隊長が所属していたと聞き、ファルコンは軍の中でもトップクラスの部隊に所属していたのだと梅男は感嘆した。
ファルコン:そして私達の部隊は最前線に配属されました。サイ様とブルーノ様のツートップは最強でした。味方の前線をグイグイ押し上げ他の隊員は二人について行くのがやっとでした。私も含めて。
梅男:大活躍ですね。それで?
ファルコン:ある朝、敵が手薄な場所があると連絡が入り、私達の部隊はその場所に向けて移動を開始しました。そしてその日に・・。
梅男:む、無理に話さなくても大丈夫ですよ・・?
ファルコンが急に口を噤んだので梅男は心配になった。
ファルコン:・・・大丈夫です。
ファルコンは梅男に愛想笑いをすると続きを話し出した。
つづく
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