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第四十一話 森の中へ
しおりを挟むメイに洋服をいくつか渡すと隣の部屋に移り着替えはじめた。。
その間に美留來とびす子は持って行く荷物をまとめ出していた。
びす子:美留來すまない。こんな事に巻き込んで。
美留來:こっちこそ役に立たなくてごめんね。
美留來の言葉に目が潤んだが、しっかりしないとと自分を奮い立たせ袖で拭った。
ユイ:準備は出来ましたか?
ユイがドアの前でノックしながら問いかけて来た。
びす子:うん。
ユイ:失礼します。お荷物を階下にお持ちします。
美留來:お願いします。
その時、びす子の服を着たメイが隣の部屋から出て来た。
メイ:こんな感じでどうですか?
びす子:サイズがぴったりだね。後はこのパーカーのチャックを閉めて、フードを被ればOK。
メイ:はい。
ユイ:では参りましょう。
階下に降りるとマツダとカイと給仕と複数の使用人達が待っていた。
マツダ:では、私とユイとメイと警護の人間で先に出発します。メイもっとフードを目深に被れるかい?
メイ:うん。
マツダ:では、びす子様、ご健闘をお祈りします。
びす子:うん!
メイは「バイバイ」と言いながら手を振るとマツダとユイと手を繋ぎ玄関から出て行った。
びす子は玄関先の近くにある窓から三人の後ろ姿を目に焼き付けるように見つめた。
カイ:私達は裏口からの出発になります。こちらです。
裏口に来ると美留來と荒正が使用人達と手を振りながら山へと出発した。
カイ:では、私達も行きますか。
びす子:うん。
父が愛した別荘を後にしたびす子は道中カイから城までの道のりについて説明を受けていた。
カイ:びす子様、ここから森を抜けて国立公園に向かおうと思います。
びす子:分かった。国立公園に行くのは何故?
カイ:そこには放牧されている馬が多くいまして、馬を使えば国立公園から城まで早く移動出来ると思います。
びす子:国立公園までどれくらい?
カイ:急いでも一日半ほどかかります。
びす子:分かった。マツダ達が飛行場に着くまでは?
カイ:どうでしょう。飛行場までは結構な距離がありますし、目立たぬように脇道など使うと思いますので二日ほどはかかるのでないでしょうか。
びす子:そうか・・。それまでには何とか城に到着しないと。
カイ:はい・・。
それから日が暮れるまで休憩を挟みながら黙々とカイと森の中を歩いた。
カイ:この辺で今夜は休みましょう。今、焚き木に出来そうな木を見つけて来ます。
びす子:分かった。
「ふぅ・・」とため息をつくと、横たわっている大きな丸太に腰掛けた。
びす子:(メイは無事かなあ・・それと美留來と荒正も)
びす子は木々の合間から見える夜空の星を見つめながら肩を落とした。
カイ:戻りました。今を火をつけて食事のご用意します。
びす子:ありがとう。カイは随分手慣れてるのね。
カイ:父が教えてくれたんです。小さい頃からサバイバル術を叩き込まれまして。
カイは喋りながら火をつけると鍋と小さめのフライパンを出し、小脇に抱えたバッグから小分けに切られた野菜やベーコンを取り出した。
びす子:へえ。お父さんも軍にいるの?
カイ:・・・いました。
過去形の言葉にびす子は察した。
びす子:ごめん・・。
カイ:いえ、もうかなり前ですから。同盟国の戦争で父の部隊が招集されその時に戦死しました。
びす子:お父さんは勇敢に戦ったんだね。
カイ:はい。自慢の父です。
カイは昔の事を思い出してるのか話し声が少し涙ぐんでるように聞こえた。
その後、軽く夕食を食べ終わるとびす子はカイが準備してくれた寝袋に入った。
カイ:明日、城に着くまで大変だと思います。今夜はきちんと睡眠を取って下さい。
びす子:ありがとう。おやすみ。
カイ:おやすみなさいませ。
カイはびす子の寝袋のチャックを閉めると、少し離れて自分の寝袋に入った。
翌朝、びす子が目を覚ますとカイの姿が見当たらなかった。
つづく
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