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第三十八話 叫ぶびす子
しおりを挟む自分がクーデターの首謀者だと言われたびす子は自分の中で何かが壊れ始め、その場で踞り頭を抱えながら思わず叫んだ。
びす子:あああああぁ!どうしてそうなるんだあああああぁ。
あまりにも大きな声で叫んだ為、びす子がおかしくなってしまったのではないかと美留來がオロオロし始めた。
美留來:び、びす子、だ、大丈夫?
カイ:本部に事実無根だと私は訴えたのですが聞き入れて貰えず・・。
メイ:ビスケット様が犯人だったの?
メイはカイの話を鵜呑みにしたのかケロッとした表情でマツダに問いかけた。
マツダ:コラッ。そんな訳ないだろ。
すぐさまマツダがメイの頭をコツンと叩いた。
その時タイミング悪く何も知らない荒正がのんびり階段から降りて来た。
荒正:おや?皆さんお揃いでどうしたんです?
この状況下で荒正は呑気に口笛を吹きながら階段の最後の二段を飛ばしジャンプして着地した。
そして玄関ホールを見渡すと中央で頭を抱え踞ったびす子、その隣でオロオロしている美留來、困り果てた表情でガックリと肩を落としているユイ、両膝をつき項垂れているカイ、そして濡れ衣だと怒るマツダに隣でキョトンとした顔をしているメイがいた。
面倒な事が起きてると察した荒正はすぐさま階段の方へと体の向きを変え手すりに手をかけた。
荒正:えっと・・俺やっぱ自分の部屋に戻るわ・・。
びす子:待てぇ・・。
びす子は立ち上がり血の底から這い出るような低い声を出しながら荒正を睨んだ。
荒正:ひっ?!
びす子の声に恐怖を感じた荒正は壁に張り付いた。
美留來:びす子・・?
びす子:このままみすみす捕まってたまるかあぁぁぁ!!!
自分でも驚くくらい腹の底から力が湧き出て来て、びす子は思わず握り拳をぐいっと目の前に突き出した。
マツダ:同じく!
マツダも覚悟を決めたのか鼻息を荒らくしていた。
二人の言葉にユイとカイはキリッとした表情になり、どこまでもついていきますとばかりに大きく頷いた。
びす子:よし、全員ティールームに集合だ!この国の地図と資料を全て持ってこい!
美留來:びす子、何を始める気?
荒正:何か策があるんだろう?とりあえず移動しますか。
ユイ:では、部屋の準備をして来ます。
マツダ:ならば俺が地図と資料を持って行く。
カイ:私は連れて来た兵に館の周りの敷地内に誰も入れるなと伝えて来ます。
メイ:私は?
美留來:メイちゃん、一緒に行こっか?
メイは確認を取るように兄の顔を伺うと、マツダはにっこり笑って頷いた。
メイ:分かった。
ユイが真っ先に階段を駆け上がって行くとびす子は大股でずんずんと登り始め、美留來がメイと手を繋ぎながら後に続いた。
その後ろで荒正はびす子に聞こえるくらい大きくため息をついたかと思うと怠そうに階段を登って来る足音が聞こえた。
ティールームに入るとユイと給仕と使用人達が慌てた様子で大きなテーブルを中央に移動し、椅子を人数分並べていた。
ユイ:後は飲み物はボトルでご用意して。
給仕:かしこまりました。
そしてどこから運んで来たのかホワイトボードをテーブル近くに配置していた。
ユイ:びす子様、これでよろしいでしょうか?
中に入って来たびす子に気がついたユイが問題ないか聞いて来た。
びす子:うん、大丈夫。
びす子の性格を把握しているようでユイは上座や下座に関係なく座れるように配慮した円形のテーブルを用意してくれた。
給仕と使用人は水の入ったボトルを並べると、一つ一つの椅子の背もたれにブランケットをかけ、準備が終わると会釈してティールームからいなくなった。
そこへ箱をいくつか持ったマツダとカイが入って来た。
マツダ:これが国全体の地図とこの周辺の地図です。
マツダはテーブルの近くに箱を置き、脇に抱えていた筒状の入れ物から地図を取り出しテーブルの上に広げた。
カイ:資料はこちらの箱に。
びす子が箱の中を見ると古ぼけた紙の資料がびっしりと入っていたが、たくさんあり過ぎて読む気も起きないほどだった。
びす子:デジタル化されてないの?
カイ:すみません。副隊長が逮捕されたのもあって、軍で用意してる端末にアクセス出来なくなってしまってしまっているようで・・。
マツダ:ちくしょう・・何度もパスワードを打っても弾かれる。
マツダが椅子に座り手元にある端末に何度もパスワードを打っているようだがアクセス出来ないようだった。
つづく
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