かずのこ牧場→三人娘

パピコ吉田

文字の大きさ
上 下
25 / 65

第二十四話 前社長の依頼

しおりを挟む

 ランチを食べ終わるとびす子と美留來は席を外そうとしたが、花音から『一緒に話を聞いて欲しい』と頼まれ、三人で立浪が来るのを待つ事にした。
 
 約束の時間を少し過ぎた頃にスーツ姿の男性を連れ立って立浪が店内に入って来た。
 
立浪:お久しぶりです。三人お揃いですね。
 
 立浪が来たのを知った根子が厨房からやって来た。
 
根子:いらっしゃい。とりあえず私も一緒にお話を聞かせて貰うわね。烈、追加でコーヒー三つよろしく。
 
 根子が厨房に向かって声をかけると烈が返事をしていた。
 
 テーブルの前にやって来た立浪を見て花音は慌てて立ち上がった。
 
花音:今日はよろしくお願いします。美留來とびす子も一緒に良いですか?
 
 びす子と美留來も花音に合わせて慌てて立ち上がり軽く会釈をした。
 
立浪:問題ないですよ。その前にこちらの方の紹介をさせて下さい。
 
 立浪の隣の男性が軽く会釈すると名刺を各自に渡して来た。
 
円城寺:初めまして。三栄さんえい株式会社を買収しました、円城寺グループのCEOの円城寺航えんじょうじ わたると言います。
 
花音:え、買収?
 
 花音は勤めていた会社が買収された事を聞き、かなり驚いてる様子だったが、根子の方は事前に買収の事を立浪から聞いていたのか何事もなかったかのように名刺交換をしていた。
 
根子:わざわざ名刺までありがとうございます。今回、立浪に弁護士依頼した本丸根子です。
 
円城寺:お話は立浪さんから聞いております。
 
立浪:皆さん、立ち話も何ですから座りませんか。
 
根子:じゃ隣のテーブルとくつけようか。烈、手伝って。
 
烈:了解。
 
 コーヒーを運んで来た烈が隣のテーブルを移動して六人が座れるようにセッティングしてくれた。
 
烈:あ、そうだ。ビーフシチューは売り切れたよ。ランチどうする?
 
根子:本当に?じゃcloseしといてくれる?
 
烈:分かった。三人には紅茶入れて来たからね。
 
びす子:ありがと烈!
 
 烈が厨房へと消えていくと立浪がバッグから書類を出し始めた。
 
立浪:では、まず佐々木和孝についてお話しさせて貰います。
 
花音:はい。
 
 堅苦しい雰囲気の中で花音を筆頭にびす子と美留來も緊張していた。
 
立浪:では、こちらが勅使河原様からお預かりした佐々木和孝の調査書、そしてこちらがうちの事務所が円城寺様から依頼された社内調査の結果です。
 
 立浪が花音と円城寺と根子に調査書と依頼書のコピーをそれぞれに渡した。
 
根子:こんなに。よく調べたわね。
 
立浪:勅使河原様の調査も細かくして貰ったのもあって助かったよ。それに三栄株式会社を買収するにあたって円城寺様から社内調査も依頼があって余計に調査書が厚くなってしまった、申し訳ない。
 
円城寺:いえ、これだけ細かく調べて貰ったお陰で色々と分かった事もありますから。
 
立浪:そう言って頂けると助かります。では、これから説明させて貰います。
 
花音:はい、お願いします。
 
 勅使河原家が調べた身辺調査は三人は目を通していたので大体は把握していたが、円城寺が依頼していた社内調査の結果を聞き、社内で更に佐々木和孝の悪行が往々として行われている事が判明した。
 
根子:酷いわね。取締役の父親も同罪ね。
 
立浪:うむ。父親が被害者女性に高額の慰謝料を渡して被害届を取り下げさせていたんだ。
 
円城寺:この調査だと学生時代から女性に対してストーカーや暴行など繰り返していたようですね。
 
立浪:ええ。あまりにも余罪が多すぎて父親はこれ以上は庇い切れないと友人にこぼしていたそうです。
 
 話を聞いていた花音の手が震えてるのを見て美留來は「大丈夫?」と声かけたが、花音は大丈夫と言わんばかりに小さく頷いていた。
 
立浪:花音さんの時は父親から次は警察沙汰にならないようにときつく言われていたようです。なので、和孝は執拗に結婚を迫ったんだと思います。結婚すれば自分の自由に出来ると思ったんでしょう。
 
 その言葉に花音の手が震えるのを見て根子か優しく手を重ねた。
 
根子:ほんっと。花音ちゃんが無事で良かったわ。
 
花音:はい・・。
 
立浪:佐々木親子からは花音さんに対して今後は一切関わらないという書面にはサインして頂きました、こちら確認お願いします。
 
 親子がサインした書面を花音の前に立浪が差し出した。
 
根子:よくサインしたわね。
 
立浪:花音さんだけの問題だったらサインしなかったかもしれないです。
 
花音:そうなんですか?
 
立浪:ええ、ここからは円城寺様に関わる事も含まれます。円城寺様、今こちらでお話しさせて貰っても大丈夫でしょうか?
 
円城寺:私は構いません。
 
 びす子は立浪の言葉に佐々木親子は会社内で何か不正を働いていたのだと確信した。
 
つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

土俵の華〜女子相撲譚〜

葉月空
青春
土俵の華は女子相撲を題材にした青春群像劇です。 相撲が好きな美月が女子大相撲の横綱になるまでの物語 でも美月は体が弱く母親には相撲を辞める様に言われるが美月は母の反対を押し切ってまで相撲を続けてる。何故、彼女は母親の意見を押し切ってまで相撲も続けるのか そして、美月は横綱になれるのか? ご意見や感想もお待ちしております。

夏と夏風夏鈴が教えてくれた、すべてのこと

サトウ・レン
青春
「夏風夏鈴って、名前の中にふたつも〈夏〉が入っていて、これでもかって夏を前面に押し出してくる名前でしょ。ナツカゼカリン。だから嫌いなんだ。この名前も夏も」  困惑する僕に、彼女は言った。聞いてもないのに、言わなくてもいいことまで。不思議な子だな、と思った。そしてそれが不思議と嫌ではなかった。そこも含めて不思議だった。彼女はそれだけ言うと、また逃げるようにしていなくなってしまった。 ※1 本作は、「ラムネ色した空は今日も赤く染まる」という以前書いた短編を元にしています。 ※2 以下の作品について、本作の性質上、物語の核心、結末に触れているものがあります。 〈参考〉 伊藤左千夫『野菊の墓』(新潮文庫) ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』(ハヤカワepi文庫) 堀辰雄『風立ちぬ/菜穂子』(小学館文庫) 三田誠広『いちご同盟』(集英社文庫) 片山恭一『世界の中心で、愛をさけぶ』(小学館文庫) 村上春樹『ノルウェイの森』(講談社文庫) 住野よる『君の膵臓をたべたい』(双葉文庫)

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

処理中です...