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第二十四話 前社長の依頼
しおりを挟むランチを食べ終わるとびす子と美留來は席を外そうとしたが、花音から『一緒に話を聞いて欲しい』と頼まれ、三人で立浪が来るのを待つ事にした。
約束の時間を少し過ぎた頃にスーツ姿の男性を連れ立って立浪が店内に入って来た。
立浪:お久しぶりです。三人お揃いですね。
立浪が来たのを知った根子が厨房からやって来た。
根子:いらっしゃい。とりあえず私も一緒にお話を聞かせて貰うわね。烈、追加でコーヒー三つよろしく。
根子が厨房に向かって声をかけると烈が返事をしていた。
テーブルの前にやって来た立浪を見て花音は慌てて立ち上がった。
花音:今日はよろしくお願いします。美留來とびす子も一緒に良いですか?
びす子と美留來も花音に合わせて慌てて立ち上がり軽く会釈をした。
立浪:問題ないですよ。その前にこちらの方の紹介をさせて下さい。
立浪の隣の男性が軽く会釈すると名刺を各自に渡して来た。
円城寺:初めまして。三栄株式会社を買収しました、円城寺グループのCEOの円城寺航と言います。
花音:え、買収?
花音は勤めていた会社が買収された事を聞き、かなり驚いてる様子だったが、根子の方は事前に買収の事を立浪から聞いていたのか何事もなかったかのように名刺交換をしていた。
根子:わざわざ名刺までありがとうございます。今回、立浪に弁護士依頼した本丸根子です。
円城寺:お話は立浪さんから聞いております。
立浪:皆さん、立ち話も何ですから座りませんか。
根子:じゃ隣のテーブルとくつけようか。烈、手伝って。
烈:了解。
コーヒーを運んで来た烈が隣のテーブルを移動して六人が座れるようにセッティングしてくれた。
烈:あ、そうだ。ビーフシチューは売り切れたよ。ランチどうする?
根子:本当に?じゃcloseしといてくれる?
烈:分かった。三人には紅茶入れて来たからね。
びす子:ありがと烈!
烈が厨房へと消えていくと立浪がバッグから書類を出し始めた。
立浪:では、まず佐々木和孝についてお話しさせて貰います。
花音:はい。
堅苦しい雰囲気の中で花音を筆頭にびす子と美留來も緊張していた。
立浪:では、こちらが勅使河原様からお預かりした佐々木和孝の調査書、そしてこちらがうちの事務所が円城寺様から依頼された社内調査の結果です。
立浪が花音と円城寺と根子に調査書と依頼書のコピーをそれぞれに渡した。
根子:こんなに。よく調べたわね。
立浪:勅使河原様の調査も細かくして貰ったのもあって助かったよ。それに三栄株式会社を買収するにあたって円城寺様から社内調査も依頼があって余計に調査書が厚くなってしまった、申し訳ない。
円城寺:いえ、これだけ細かく調べて貰ったお陰で色々と分かった事もありますから。
立浪:そう言って頂けると助かります。では、これから説明させて貰います。
花音:はい、お願いします。
勅使河原家が調べた身辺調査は三人は目を通していたので大体は把握していたが、円城寺が依頼していた社内調査の結果を聞き、社内で更に佐々木和孝の悪行が往々として行われている事が判明した。
根子:酷いわね。取締役の父親も同罪ね。
立浪:うむ。父親が被害者女性に高額の慰謝料を渡して被害届を取り下げさせていたんだ。
円城寺:この調査だと学生時代から女性に対してストーカーや暴行など繰り返していたようですね。
立浪:ええ。あまりにも余罪が多すぎて父親はこれ以上は庇い切れないと友人にこぼしていたそうです。
話を聞いていた花音の手が震えてるのを見て美留來は「大丈夫?」と声かけたが、花音は大丈夫と言わんばかりに小さく頷いていた。
立浪:花音さんの時は父親から次は警察沙汰にならないようにときつく言われていたようです。なので、和孝は執拗に結婚を迫ったんだと思います。結婚すれば自分の自由に出来ると思ったんでしょう。
その言葉に花音の手が震えるのを見て根子か優しく手を重ねた。
根子:ほんっと。花音ちゃんが無事で良かったわ。
花音:はい・・。
立浪:佐々木親子からは花音さんに対して今後は一切関わらないという書面にはサインして頂きました、こちら確認お願いします。
親子がサインした書面を花音の前に立浪が差し出した。
根子:よくサインしたわね。
立浪:花音さんだけの問題だったらサインしなかったかもしれないです。
花音:そうなんですか?
立浪:ええ、ここからは円城寺様に関わる事も含まれます。円城寺様、今こちらでお話しさせて貰っても大丈夫でしょうか?
円城寺:私は構いません。
びす子は立浪の言葉に佐々木親子は会社内で何か不正を働いていたのだと確信した。
つづく
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