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第十五話 花音の決断
しおりを挟む丁度、カフェがランチタイムが終わったところで根子が店のドアにある札をcloseにしてくれていた。
花音:すみません、店まで閉めてもらって。
根子:大丈夫。今日は烈が休みだったし、一人で厨房とフロアを行ったり来たりするこ大変だったから丁度よかったのよ。
びす子:あいつバイト掛け持ち過ぎなんだよな。
美留來:へえ、烈くんバイト掛け持ちしてんだ。
根子:それより。花音ちゃん、何が起きてるの?
花音:実は・・。
帰郷してからずっと言い出せなかったが、和孝が現れた事で正直に話すしかないと上京してから今までの出来事を三人に話す事にした。
四月に上京して入社式の後、研修を三ヶ月を経て新入社員は各自適正と思われる部署へと配属され、花音はこれからが本番だと気合を入れて会社へと向かった。
配属された部署には同期が複数名がおり、見知った顔がいる事で安堵していた。
朝礼が始まると部署の責任者として和孝が最初に挨拶をし始めた。
和孝は美留來が間違えるほど数鋸に背格好や顔立ちが似ていて、花音もその時はハッとするほどだった。
そして和孝は誰にも優しく社内でも人気者で、花音も好印象を受けた。
その時は公私混同は良くない、仕事とプライベートは別だと自分に言い聞かせた。
だが、運命とは皮肉なもので和孝は花音をいたく気に入りプロジェクトのメンバーに入れるほどだった。
花音も配属早々に大きなプロジェクトのメンバーに入れた事で素直に喜んでいた。
二人の距離は徐々に縮まり食事やデートを重ねて行くうちに付き合うようになった。
そこまでは誰が聞いてもハッピーエンドにしか思わなかっただろうし、この時点で花音自身も大変な事になるとは夢には思っていなかった。
和孝はというと付き合うようなってから態度が徐々に変わり始めた。
同期の男子や、会社の男性と少し会話しただけで嫉妬をするようになった。
最初の頃は愛されてるのだと花音も嬉しかった。
だが、徐々にエスカレートして行き、男性と話すのは禁止となりプロジェクトから外されていた。
花音の仕事はというとコピー取りやデータ作成など雑用だけとなった。
花音から男性に声かけたりしてるわけではないのだが、独占欲が強い和孝からしてみれば許せない行為で、男性と一緒になる会合や会議には一才関わる事はなくなっていった。
そしてとある日、デートに和孝は花音に事前に何も言わずに突然両親を連れて来た。
花音は最初は驚いたが和孝の両親はとても優しく、父親は和孝と花音が勤める会社の役員でもあった。
両親の前での和孝は優しく花音も悪い気はしなかった。
だが、その日を境に和孝から結婚の話題を振られるようになり、式場やドレスなどを見に行こうとしつこく言われるようになった。
見るだけ、着るだけ、お試しだからとしつこく言われ、仕方なく花音は見学に同行した。
すると、そこには和孝の両親も同席していて花音の気持ちとは他所に式場の予約をし始めた。
結婚願望が高い女性ならとんとん拍子に事が進んでいて羨ましくは聞こえてしまうかもしれないが、花音からすると自分の意志とは関係ないところで事が進んでしまっているようなものだった。
式場を予約した日に自宅に帰って来た花音は悶々としていた。
本当にこのまま結婚して良いのか、自分の親にも相談せずに結婚って決めて良いものなのか。
ましてや、上京してから一度も会っていない幼馴染の美留來とびす子にも相談してない事に後ろめたさを感じていた。
更には、本当に自分は和孝の事を愛しているのか。
和孝の姿に数鋸を重ね合わせてはないか、数鋸の事がまだ忘れられないせいかのではないか。
自問自答を繰り返してるうちに和孝の好きなところや良いところを書き出してみようと紙とペンを取り出してみた。
いざ、書き出そうとしてみると思い浮かぶのは、『数鋸みたいに優しく接してくれる』『数鋸のような顔立ち』『数鋸のような仕草』どれを取っても数鋸の顔が先に浮かんでいる事に花音は驚いていた。
書き出した紙を見て自分は和孝の事を愛してるわけではないと確信してしまった。
このまま流れに身を任せるわけにはいかないと、アパートの荷物をまとめ、翌朝には会社に行き和孝に辞表を渡し、結婚は出来ない事と、式場はキャンセルした旨を伝えた。
和孝は激昂していたが早朝の社内のラウンジは出勤する者も多くいたせいか、人目を気にしてその場は大人しく引き下がってくれた。
会社から帰宅するとアパートの鍵を管理会社に送り、大体の荷物は実家に送り、スーツケース一つ持って故郷に帰る為の新幹線へと乗りこんだ花音だった。
つづく
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