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第三話 大根の悲劇
しおりを挟む美留來:えっと花音なら厩舎の横の小屋でまだ寝てるはずだけど。
美留來は玄関から出て翼に小屋の方を指を刺すと丁度タイミング良いのか悪いのか花音に朝食が出来たと声をかけに行った数鋸が小屋から出て来たところだった。
翼:あいつ・・・。
翼は勘違いしたのか小屋へと一目散に走り出した。
数鋸:ん?翼。お、おい、俺は何もしてないって。
自分に向かって来る翼の勢いに恐怖を覚え、数鋸は逃げるように走り出した。
そこへ何事かとお味噌汁を作ってる途中の父の梅男が外に出て来た。
運動神経バツグンの翼に対して理系で体力のない数鋸はすぐに追いつかれ翼の飛び蹴りが背中にヒットした。
一部始終を見ていた梅男は息子が飛び蹴りを食らってるのを見て驚いて持っていたお玉を地面に落としてしまった。
美留來:お、お父さん大丈夫?って翼ちゃん誤解だよ!!!
翼:お前うちの花音にまた手を出しやがったな!
数鋸:いってえなあ・・・朝ごはんがそろそろ出来そうだから花音を呼びに来ただけなのに。
すると姉の翼の声を聞きつけた花音が小屋から出て来た。
花音:お姉ちゃん!何かしたの?それに何でここにいるって知ってるの?!
翼:朝ジョギングしてたら夜勤明けの烈に会ったんだよ。花音が帰って来てて美留來と一緒に蔵カフェから帰ったって。
美留來:(烈め、余計なことを・・・)
花音:べ、別に美留來の家に泊まりに来ても良いじゃない!!!というか数鋸さん大丈夫?
花音はそれを聞いて逆に開き直った。
数鋸:だ、大丈夫。てか、ここで立ち話もなんだから朝ごはん食べながら話そうぜ。腹減ったよ。
梅男:うんうん、朝ごはん一緒に食べよう。
父の梅男はお玉を拾いながら何が起きたのか状況を把握出来てはいなかったがお腹が膨れれば万事解決するだろうと思っていた。
梅男が全員のお味噌汁を配膳し上座に座るとそれが合図となり、全員手を合わせて「いただきます」と言って箸を持ち朝食に手をつけ始めた。
梅男:召し上がれ。えっと今日はね、とっても美味しく大根煮えたからどんどん食べてね。
テーブルの中央に大皿でツヤツヤとした綺麗に煮えた大根がいくつも並んでいた。
それを翼が真っ先に箸でぐっさりと差し「で、会社の方はどうなんだ?」と花音に問いかけた。
花音が別の大根を箸でぶすっと刺して「一昨日辞めた」と、しれっと答えた。
翼:は?一昨日?!何で辞めてんだよ!
花音:べ、別に何だって良いでしょ!
翼はその返事に頭の来たようで頬張った大根がまだ飲み込めていないのに別の大根に箸を突き刺した。
それを横目に数鋸と美留來は静観しようと目で合図を送り合いお味噌汁をすすっていた。
翼:良いわけない!それにこれからどーすんだよ!今日お父さんとお母さんに帰ってちゃんと自分から説明しなさいよ!
花音も違う大根をぶすっと刺して「ほっといてよ、家にはまだ帰らない!」と言い放った。
それを見ていた梅男は大根が箸に刺さる度に自分が刺されてるかのような気分になり胸を押さえた。
翼:はあ?ずっとここにいる訳にいかないでしょ!
そこへ助け船を出そうと梅男が間に入った。
梅男:うちは別に何日でもいても構わないよ、ねえ美留來、ねえ数鋸?
数鋸と美留來は関わりたくないのか無言で首を捻っていた。
翼:そんな訳に行きません!梅男おじさんは黙って下さい!
梅男:あ、はい。
そこからは「帰ってこい!」「帰らない」の押し問答が続くのであった。
つづく
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