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第一話 柚子婆ちゃん
しおりを挟む緒環家は政治家の家系であり一兄の祖父は防衛大臣を歴任し、父は引退した祖父の跡を継ぎ政治家として活動していた。
母はというと生まれたばかりの妹の晴を面倒を見ていて一兄の世話まで手が届かない状態だった。
それを見かねた近所に住む祖母の柚子が一兄の世話をする事になった。
だが、少しすると祖父の体調が悪くなり入院して一年後に他界してしまった。
祖母の柚子が一人で一兄の面倒を見るのは大変だろうと、父と母は一緒に住む事を提案したが柚子は断った。
柚子にとっては祖父の思い入れがあるこの家に住み続けたいからだった。
それではと住み込みの家政婦を雇う事を条件に柚子はそれを受け入れた。
翌日に早速、家政婦の募集をしたところ看護婦の経験がある桃華が応募して来た。
面接に来た桃華は一兄と同じ歳の息子の孝がいて柚子は一兄の遊び相手として良いと思いすぐ採用を決めた。
だが、桃華は独身で若くどう見ても子供を産んだ様子がなく、採用したものの気になって孝の事を柚子は聞いてみた。
すると桃華は嫌なそぶりもせずに孝の話をしてくれた。
孝は桃華が看護婦をしている頃に救急で運ばれて来た赤児で、とある駅の構内で見つかり親も誰なのか分からない状況だったそうだ。
その頃の桃華は子供はとても好きだったものの結婚に興味がなく、ドナーを見つけて体外受精をしようか悩んでいたところだった。
後日、身寄りのない赤児だと聞いた桃華は「これは運命だ」と思い里親申請をした。
なぜ里親申請したかというと、もしも孝の親が名乗り出た時の為に養子縁組をしなかったそうだ。
申請が通ると看護婦をやめ、どうしようかと思っていたところ、柚子の家政婦の募集みて応募したとの事だった。
そして月日が流れ一兄と孝は小学三年生になっていた。
一兄:お婆ちゃんただいま。
柚子:おかえり。今日も一兄は元気だね。
一兄が帰ると玄関に柚子がいつも出迎えてくれた。
一兄と柚子がリビングに行くと孝がいて宿題をやっていた。
一兄:もう帰って来てたのかよ。まあ、今度のテストでは負けないぜ。
孝:俺もさっき帰って来たところ・・・それと勝ち負け関係ないだろ。
孝はというとクールで口数が少なく逆に一兄は目立ちたがり屋で学級委員を率先してやりたがるタイプだった。
そんな二人は勉強もスポーツも上位で良いライバル関係だった。
柚子:二人ともおやつだよ。まだ小学生なんだし少しは遊んだらどうなんだい?
おやつをには目もくれず二人は宿題がどちらが早く終わるか競争し始めていた。
そんな光景を微笑ましく見ていた柚子は孫の一兄と孝の成長を見守れる事がとても喜ばしかった。
そしてある日、柚子が日課の散歩をしている途中でいつも行く神社に立ち寄ると、一人の少年が境内手前の階段でしょんぼり座っているのを見かけた。
柚子は気になり声をかけた。
柚子:ボクちゃんどうしたんだい?
声かけてみたが俯いていて何も返事がなかった。
「よっこらしょ」と少年の横に座り、暫く少年から話し出すのを待ってみた。
すると少年が俯いたまた悲しそうにポツリと言った。
少年:お母さんがここで待ってろって。
柚子:お母さんは買い物にでも行ってるのかい? はてさて、どれくらい待ってるんだい?
少年:朝から・・・。
今の時刻は夕方でそろそろ日が落ちそうだった。
柚子:そうかい・・。でもそろそろお腹空いただろう?
少年はお腹を触るとコクリと頷いた。
柚子は一人に出来ないと思い家に連れて帰る事にした。
帰る際に少年の親が見つけに来たら柚子の家に居ると神社の人に一声かけておいた。
少年を連れて帰宅すると神社では気がつかなかったが、玄関先で見ると服は古く端々がほつれているようで、お風呂もまともに入ってるように見えなかった。
桃華:おかえりなさい。あら可愛いお友達がいますね。
柚子:ただいま。桃華さんこの子に何か食べさせてあげておくれ。朝から何も食べてないようなんだ。それとお風呂も。
桃華:かしこまりました。ボクお名前は?
少年:瑳呂紋・・・。
桃華:瑳呂紋くんね。こっちおいで。
桃華が食堂に連れて行くのを見計らって柚子は念の為に警察に連絡するのであった。
つづく
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