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番外編 晴のパン屋さん
その三
しおりを挟むその後、あれっくすがメルとテル達と入れ替わりに留学して来たユウトとノクトを連れて来た。
メルとテルとは違い二人は兄弟でとても仲良く、晴とゆきの言う通りに仕事をこなしていた。
ゆき:良かったですね。今度の学生さんは仲良し兄弟ですし、ノクトさんちょっとチャラいけどイケメンですね!
晴:ははっ。確かに楽ですね。
メルとテルがバイトしてる頃は冷や冷やとドキドキの連続だったのもあり、晴にとっては少し物足りない感じだった。
そしてユウトとノクトの留学期間が終わると、代わりにニコラとルチカがアルバイトにやって来た。
ニコラとルチカは幼馴染で気が合うようで、言葉少ないルチカをカバーするよう元気なニコラが察して動いてるようだった。
お店は順調で初めに来ていた美奈子と五郎は常連さんとなり毎週のように足を運んでくれていた。
最初の頃はテレビや雑誌に載って大混雑だったが、今ではお店も三年目となってかなり落ち着いて来ていた。
とある日、ゆきが慌てふためいてレジカウンターから作業場にいる晴のところへと小走りで駆け寄り興奮気味に耳打ちし始めた。
ゆき:す、すごいイケメンがお店に来てます!もしかしてモデルさんかも?
晴:ゆきさんまた大袈裟に。
ゆき:本当なんですって!ノクトさんとはまた違った雰囲気で好青年って感じです!
晴:分かった分かった。ゆきさん落ち着いて。
晴はそれを聞いて半信半疑でお店のレジカウンターに向かった。
そこには高身長の壮観な顔立ちをした青年がパンのトレーとトングを持ち店内をうろついていた。
ゆきは青年に悟られないように小声で囁いた。
ゆき:ほら、あの青年です。
晴:本当だ。でもモデルさんでも誰でもお客さんには優劣ないからいつも通りでお願いゆきさん。
ゆき:わ、分かりました。
二人が緊張な面持ちでレジカウンターにいると幾つかパンを乗せたトレーを持った青年がやってきた。
ゆき:い、いらっしゃいませ。
ゆきは緊張しているようだが晴は気にせず黙々とパンを袋に詰めた。
その時だった、小声で「久しぶり」と青年がぶっきらぼうな声で話しかけて来た。
晴:はい?
晴とゆきは青年の一言に『誰だっけ?』と首を捻った。
青年:おいブス!まさか俺の事を忘れたんじゃねえだろうな!
その言葉を聞いた晴とゆきはある人物を思い出した。
だが、どこをどう見ても背格好が以前のその人物とは一致しないのだ。
晴:ま、まさかテル?いっきに背が伸びすぎじゃない?!
テル:へへ、見違えただろ?でもな、あれから帰国してから大変だったんだぞ。謎な高熱に見舞われてそんでもって毎晩身体中の節々がバキバキ音を立てるし。痛すぎて喚いたわ。数ヶ月それが続いて熱が引いたら身長が伸びてた。
ゆき:それは大変でしたね。久しぶりです、ゆきです、私の事を覚えてますか?
テル:もちろん!ゆきさん優しいなあ、それに比べて晴は相変わらず気が利かねえなぁ。
嫌味を言われた晴は一瞬ムッとしたがテルが何故日本にいるのか気になった。
晴:それはそれは大変でございましたね~。で、なんで日本にいるの?
テル:こっちの大学に進学したんだよ。
晴:へえ、良かったじゃない。
テル:そっけないなあ。
ゆき:って事はまたアルバイトに来たりします?
テル:お、まだ募集してんならやってやんよ。
ゆき:是非是非。
何故かパートのゆきがテルをバイトとして雇う勢いだった。
晴:バイトはもう雇ったわよ。ゆきさん勝手に雇っちゃダメ。
ゆき:すみません。でも、テルくんいると賑やかで楽しかったからつい・・。
テル:じゃしょうがねえな。お客もだいぶ減ったみたいだし毎日パン買いに来てやんよ。
晴:べ、べつに無理に毎日来なくても良いわよ?
テル:照れんなよって!じゃまた来るわ。
テルはパンを入れた袋を手にすると手を振りながらお店から出て行った。
ゆき:テルくん外見はかなり変わったけど中身は変わってませんでしたね。
晴:ホント。さてと夕方のお客さんに向けて仕込みしましょ。
ゆき:はい。
晴は作業場に戻る時に何か忘れてる事に気がつき、レジカウンターに戻ってみた。
晴:あいつ・・。
ゆき:晴さんどうしました?
晴:テルのやつ代金払ってない!こらぁ金はらえええー!!
テルを追いかける為に晴は物凄い勢いでお店を出て行ってしまった。
ゆき:ふふ、これから楽しくなりそ。
ニコラ:ゆきさん、晴さんどうかしました?
ルチカ:なんか金払えって叫んでたような・・。
ゆき:良いの良いの気にしない気にしない。作業に戻って。
ゆきはニコラとルチカを作業場で指示した後に晴が戻るまでお店の札をcloseにしたのであった。
おわり
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読めば読むほど味がある。
こんな拙い小説を読んで下さってありがとうございます。