満月に吼える狼

パピコ吉田

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第六章 いでよ!太古の剣!

第十七話 証と翼

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 宮殿に戻る途中の中庭でラナに遭遇したダンデリオンとバレンシアは故郷へ帰してくれないかと早速聞いてみた。

ラナ:戻る事は可能だよ。でも何の為に?

バレンシア:ここに来る前に家族に別れを言ってない。きっと今頃は私たちを探してると思うのだよ。

ラナ:家族に会うのは難しいと思うな・・・。

ダンデリオン:どういう事だ。

ラナ:この星と君たちの故郷では時間の流れがそもそも違うんだ。それに宮殿や町や色んな物を作ったせいで軽く数十年は経ってるんじゃないかなぁ・・。

バレンシア:この星に来てから数時間しか経ってないじゃないか。

ラナ:体感ではそうだね。きっと信じて貰えないと思うから今から君たちの故郷へ戻ってみる?

 それを聞いたダンデリオンとバレンシアは勿論と二つ返事をした。

ラナ:それじゃバレンシア、君には故郷への行き来をする為の道具のルーチェの証を授けよう。そしてダンデリオン、君にはどこへでも行ける翼を授ける。

 ラナはそう言うとバレンシアにルーチェの証が付いたネックレスを渡し、ダンデリオンの背中からは白い翼が現れた。

翼が生えたダンデリオンは試しにゆっくりと羽を動かし少しずつ空中に浮き始めた。

バレンシア:この証の使い方は?

 ラナがジャンプして着地すると中庭の向こう側に目の前にドーム状の小屋が現れた。

ラナ:向こうに個屋を立てたから入ったら分かるよ。

 ダンデリオンとバレンシアは恐る恐る入るとそこは反対側に大きな扉があるだけの空間だった。

ラナ:バレンシア、故郷の事を思い描きながらあの扉にある花の形にその証を当てて開けてごらん。

 バレンシアは言われた通り故郷の事を思いながら証を扉の真ん中にある型に押し当てた。

 すると扉を開き出すとそこには星々が散りばめられた宇宙空間だった。

ダンデリオン:バレンシア、本当に故郷の事を思ったのか?!

バレンシア:最後にいた場所を頭の中で思いながら証を押し当て筈だが・・。

ラナ:見た目は宇宙の中へと飛び込むように見えるけど、通り抜けたら君たちの故郷へと行けるはずだよ。

ダンデリオン:・・・本当なんだろうな?もしもの時の事を考えてバレンシアお前は残れ。俺が行ってくる。

バレンシア:分かった・・もし家族に会ったら元気だと伝えてくれ。

ダンデリオン:分かった。
 
 ダンデリオンは翼を広げると意を決して扉の中へと飛び込んだ。

 扉を抜けるとラナが言う通り最後にいた湖のほとりだった。

 ダンデリオンは翼をしまい、家族に会える嬉しさに、はやる気持を抑えつつ我が家へと走り出した。

ダンデリオン:(父さん母さん元気でいるかな・・・)

 ダンデリオンが自宅までの道へと足を運んでいると、自分達がいた頃とは街の様子が見違えるほど変わっていた。

 内戦は終わったようで壊れた家屋を立て直し建築ラッシュが始まり市場も活気に満ちていた。

ダンデリオン:(ラナが言っていた事は本当だったのか・・・ここを曲がれば俺の家のはずだ・・)

 ダンデリオンが自分の家の前に来るとそこは空き地になっていた。

 周りを見ると隣に住む幼馴染のシンクの家はまだあった。

 自分の家族がどうなったのか知りたくてダンデリオンはすぐさま訪ねてみた。

 扉を叩くと出て来たのは若い娘だった。

ダンデリオン:あの、隣に住んでいた者ですがシンクさんはいますか?

若い娘:今は寝てますけど・・・失礼ですけど貴方のお名前は?

ダンデリオン:隣に住んでいたダンデリオンです。至急会いたいと伝えて貰えますか?

若い娘:・・・分かりました、少々お待ちください。

 ダンデリオンは自分の家族の事を知ってるであろうシンクが出て来るのを待ち遠しそうに玄関を右往左往していた。

つづく
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