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スピンオフ ダンデリオンの花嫁
第十四話 刻々と満ちる月
しおりを挟むアキラ達は牢獄の壁の隙間からさす光を見ていた。
アキラ:あの後、ツバキから全く連絡がないが外はどうなってるんだ!
ルチカ:・・・その日が来たらこの鍵が開く筈らしいけど・・・。
ニコラ:ルチカじっと見てても鍵は開かないよ?
ルチカ:・・・・あっ開いた。
ルチカの声と同時に牢屋の錠前がポロリと落ちた。
アキラ:本当か?!
アキラはベッドから飛び起き準備運動と言わんばかりに腕をブンブン回しながら牢屋から一歩出た。
アキラ:やっと出番が来たか。だが嫌に静まり返ってるな・・・まあ良いか!ルチカ、ニコラ行くぞ!
ルチカとニコラは静かに頷きアキラの後に続き牢獄の外に出ようとした時だった。
バレンタイン:この老ぼれも一緒に連れてってくれんかな?
ニコラ:バレンタイン様!!
振り返るとバレンタインの姿がそこにあった。
ルチカ:・・・いつの間に。
バレンタイン:ダマール兵とグレイは寝かしつけておいた。ツバキとコーネリアが騎士団を連れて今頃は中庭まで来てるはずだ。そこでお前達の武器を受け取るが良い。
アキラ:じじぃなかなかやるじゃないか。私の背中に乗りな!
バレンタインはひょっこりアキラの背中に乗るとそれを合図とばかりに三人は中庭へと猛ダッシュをするのであった。
ツバキとコーネリアは騎士団員達を連れて中庭まで占拠していた。
コーネリア:バレンタイン様の術は凄いですな。ダマール兵がまったく動かない。
ツバキ:凄いですけどダマール兵が全員立って寝てるのはさすがにちょっと気味が悪いですさすがに・・・。
すると宮殿の方からアキラ達が走って来るのが見えてきた。
到着するとバレンタインがアキラの背中からぴょこんと降りた。
バレンタイン:ツバキ、コーネリアご苦労。
ツバキ:バレンタイン様もご無事で。これ預かってた武器だよ。
ツバキはそう言うとアキラ達に武器を渡した。
ニコラ:さんきゅツバキ!それでルーチェの門の方はエマ様達が向かったの?
コーネリア:ギア子様の容体がかなり悪いようですな・・・サクラ様とセラ様も一緒に行かれました。
ルチカ:門の護衛に行ってみる・・。
ツバキ:分かった。ダマール兵達が起きたら私達でどうにかする。バレンタイン様、この術はいつまでもつのですか?
バレンタイン:後数時間じゃな。グレイにも効いてるとは思うがそんなに持たないじゃろ。
ニコラ:ならば、ルチカと私はルーチェの門に急がないとね。
ツバキ:私の隊はグレイが起きて来た時に対応しよう。
アキラ:分かった。私もバレンタイン様と行こう。
バレンタイン:わしも門の方に行くとするか。て、事でアキラ頼むぞ。
アキラは「またか」という顔をしてバレンタインに背中を差し出した。
ニコラとルチカはルーチェの門へ、ツバキは宮殿の入り口はと向かった。
そしてアキラはニコラ達の後を追おうとした時に背中にが乗っていたバレンタインが地面に落ちた。
アキラ:バレンタイン様どうなされました!
バレンタイン:私の死期が近づいておる。
バレンタインは咳き込みながら起き上がったが、口元を抑えていた手には血がついていた。
アキラ:エルドラ村に戻りましょう。
バレンタイン:だめじゃ。孫に会いたい。それに私の力がまだ必要じゃ。アキラよ。この老いぼれの願いを聞いてくれ。
アキラ:分かりました。ルーチェの間にお連れします。
バレンタインを背負ったアキラがルーチェの間を目指してる頃、ニコラとルチカはルーチェの間に先に着いた。
そこへエマとセラとサクラがやって来た。
セラ:ニコラとルチカ間に合ったのね。アキラとバレンタイン様は?
ニコラ:後から来ると思います。ツバキは宮殿の入り口を見張ってます。
ルチカ:ルーチェの間の入り口は私たちが警備します。どうぞ中へ。
サクラ:お願いします。
エマ:では、中へ入りましょう。
中に入るとダイナムに付き添われた頼電が扉の前にいた。
ダイナム:エマ様、セラ様、サクラ様もいらっしゃいましたよ頼電様。
頼電:うん・・・頑張る。
みんなの視線を背中に感じながら門が開くように念じる頼電だったが何度も試してみても上手行かずに門はうんともすんとも言わずにいた。
頼電:あれ・・・上手く行かない・・どうしよ・・。練習では上手く行きそうな感じだったのに・・・。
サクラ:大丈夫まだ時間はあるわ。深呼吸して。
緊張が解けるようにサクラが頼電の肩を揉みほぐした。
ダイナム:そうです、まだ時間はありますからご安心を。あまり人が多くても緊張されますでしょうから私はアキラ様とバレンタイン様の到着を外で待ちますので頼電様の事よろしくお願いします。
エマ:分かりました。セラ様とサクラ様でギア子様達がこちらに来るのを待つ事にします。
ダイナムは一礼してルーチェの間から出て行った。
深呼吸を何度かして頼電が門に向き直った。
頼電:(どうにか開いて!お願いだ!お母さんとお父さんに会いたいんだ!頼む!)
頼電の思いが通じたのかルーチェ門が少しずつギギギと鈍い音を立てながら開き始めるのであった。
おわり
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